昨日、突然目にした不思議な情報。「動画、スチール撮影にLED照明を使う」というアイデアに実は特許が取得されていて、その特許を持っている1社以外は、撮影用LED照明の輸入や販売が禁止されてしまうかもしれない、というまったく理解できない話である。誰もが知る話なのかもしれないが日本語で検索してもこの件に関してぜんぜん出てこないので、もしかしたら有益な情報かもと思いブログに記しておくことにした。
□映像業界のコングロマリット
僕は映像業界でもうかれこれ15年ほど仕事をしているが、恥ずかしながら昨日までまったく知らなかった、常識とも言うべき事実がある。1秒でも映像の仕事をしていると必ず耳にするであろう三脚メーカー、マンフロット、ザハトラー、Gitzo、そしてVintenはすべて同じ資本の会社の傘下にあるということ。
ほんとびっくりした。
高級ブランドはLVMH、PPR、RICHEMONTの三大勢力の買収合戦が有名で、それもつい昨日、エルメスの買収がギリギリで阻止されたというニュースが流れたばかり。あのブランドは嫌いだからこっち買うっていっても実は同じ会社の商品だった、ってことは容易に起こる世界。
それと同じことが映像業界でも、それも20年も前から起こってたなんて。。
大もとは英国の超老舗メーカー、Vinten。1989年イタリアのマンフロットを買収したのをかわきりに、1992年にフランスのGitzo、1995年ドイツのザハトラー、2005年イスラエルのKATA、AVENGER、GENUS、Lastolite、Petrol、Anton/Bauer、OConnor、、、およそ映像業界にいれば聞いたことがある名前が大量に傘下に収められている。
この映像業界最強のコングロマリットは、Vitecグループという。
ちなみに僕はザハ、マンフロット、Vintenの三脚を見事に1本づつ持ってる。貢ぎまくってますハイ。Kataは持ってるけどPetrolは持ってない。
□VitecグループのLitepanels社
さて、なぜこんな話をしたかというと、今回のLED騒動、特許を取得したのがLitepanelsという会社で、この会社はVitecに2008年に買収されているのだ。

ことの経緯はいまいちよく分からないのだが、2001年にLitepanels社が「撮影にLEDライトを使う」というアイデアで特許を取得したのが始まり。2001年に僕は何してただろうと思い返すと、確かにLEDのエの字も聞いたことはなかったので11年前は先進的なアイデアではあったのだろう。
ただ、僕は子どもの頃ガンプラでモノアイを発光ダイオードで作ったりしたことはあり、LEDが撮影の照明に使われると聞いたとしても驚かなかっただろうと思う。
なぜ特許が認められたのかはまったく分からない。いかに先進的であろうともちょっと特許にするには範囲が広すぎる気がする。
このあたりの経緯はこのビデオで説明されている。
Help stop the elimination of affordable LED lighting for film, video and photo
この問題を提起されているのはNextWaveDVさん。詳しくは昨年の8月12日のポストに書いてある。このポストのコメント欄には照明機材メーカーと思しき人々のコメントが集まっており、死活問題であることが分かる。また、最新情報は先日5月19日にアップされたこちら。。
□2000年12月31日までにLED照明機材は存在したか?
とにかく特許が認められたのは事実で、これを根拠に昨年、アメリカにおけるLEDライトの輸入や販売を差し止める訴訟をLitepanels社が起こしたのだそうだ。まだ裁判は終わっておらず、もしLitepanels社の主張が認められた場合、今後アメリカで「撮影用のLEDライト」はLitepanels社の製品1択、ということらしい。もしくは特許料を払った上の値段の高いLEDライトを買わされる羽目になるのかな?
そのため撮影用LED照明でビジネスをしているメーカーや小売業、もしくは参入を検討している人々が立ち上がってなんとしてでもこのLED照明の独占化を阻止しようとしているのだ。

その戦略は、この特許を取り消すこと。どういうことかというと「撮影にLEDライトを使う」というアイデアが彼らが考えたものではない、ということが証明できれば特許は取り消しになるらしい。そのためには2001年より以前にLEDライトが撮影用に使われたことがある、という事実さえ実証できれば、取り消される可能性はあると。
ありそうで、やっぱないんだろうな、きっと。。。ガンプラのモノアイじゃないけど、当時は光量が足りないだろうから、ミニチュア系の撮影なら使われたことがあるかもしれない。
ちなみに彼らはLED照明が2001年より以前に撮影で使われたことがある、という情報の提供者に懸賞金を用意している。そのサイトはこちら。その名も・・・
http://defeatlitepanels.com/

が、なんというかしょぼくて怪しいホームページ。。。相手は由緒正しい巨大企業。なんか絶望的になる。。もうちょっとマシなホームページつくろうよ。。。
□日本への影響は?
さて、日本において影響はあるのだろうか?
アメリカの特許紛争が日本でどれくらい影響があるかは分からないが、日本は幸い中国にも近いことだし、近年急激に発展している中国大陸の映像用ギアメーカーはアメリカの特許なんて屁とも思わないだろうから、特に安価なLED照明に困ることはないと思う。東芝ライテックさんあたりがもう少し安価なプロ用LED照明機材を出してくれたらなあなんて希望はあるが。

東芝ライテックさんのLEDミニキット
ただ、Vitecグループに睨まれたら映像業界で生きていくことは難しそうなので、輸入代理店経由で、、などという話は厳しいかもしれない。買うならメーカー直になるのではないか。
またアメリカでLitepanels以外のメーカーが消滅してしまうとなるとこれはかなり寂しい話になる。
僕個人的にはもうLED照明は5灯持ってるし、別に蛍光灯でもかまわないからなーんの問題もない。
さて、いったいどうなることやら。。実は大した問題でもないような気もするのだが、ほんとにこの特許をもとにLEDライトメーカーが死滅したら映像業界にも損失だ。でもそんなこと起こるのかなあという気もしてるし。。また、これは一方的な情報なので、Litepanels社が正しいのかもしれないし、なんとも言えない。Planet5Dのミッチ卿もこの話題を取り上げているが、他社のLEDライトがホントになくなったらいやだけどあくまで公平にという立場は崩しておらず、見守るしかない。進展や新情報があればまたこのブログでご紹介します。
僕にとっては今回Vitecグループの存在を知ったことがいちばんの勉強でした。いや、物を知らないって罪ですはい。
※追記(2012.6.1)
ガンプラのモノアイに仕込んだ発光ダイオードといってもご存じない方はどういうものか分からないと思うので、写真を。こういうものです。
グフ。カッコいい!!
これは撮影用のLED照明とは言えないよね?(笑 写真はプラ★ビューさんからお借りしました!ありがとうございました!
LitePanels社の特許には、農業界における仏・モンサント社の「1世代しか作物ができないようバイオ加工された種」のようなキモチ悪さを感じます。
そんなもん、そもそも特許申請すんなよ!…ていうか、申請されたからって特許認めんなよ!って突っ込みどころがよくわからないお話。やれやれ…。
やっほです。この話聞いたときににわかには信じられず、ほんとかなーと半信半疑でした。他ではあまり話題にもなってないし。。。でもきっとほんとなんですよね、、
いや、僕、一気にVitecという企業グループの印象が悪くなってしまい(知らなかったくせに)、どれだけ自分がVitecに貢いでいるかを考えるとすっげーいやな気分になりました。。
企業活動としては当然なんでしょうけどねえ。。
ほんとなんでこんな特許が認められてしまったんでしょうね?
しかしなんとなくVitecがいろんな企業を傘下に収めているのは聞いていましたが、ぐぐってみるとめぼしい三脚メーカー全部にLitePanelsにアントンバウアーまで……なぜこれをソニー池上を擁する日本で出来なかった?
リストに上げられてる会社名見て呆れてしまいました。注意しておかないとそのうちそこにZacuto、Redrock、Lotus、とかが平気で並んでおる気がして。楽勝買えるだろうし。
ここはアジアのメーカーに技術力を上げてもらうことを期待だなあ。。
この話、東芝ライテックさんとか知ってるんですかね。
最初に撮影用のLED照明機器を販売開始
したように記憶しています。
元祖と言えば元祖ですね、確かに。
まぁ、安いタイプの物はマンフロット
ブランドでも出て来てますから、
住み分けさせるのでは、と思います。
僕は違うメーカーでLEDライトを知ったクチですが、Litepanelsが一番大手だったのは調べてすぐわかりました。僕がLEDに興味を持ったのは2008年末だったから既にVitec傘下だったんですよね、そのころは。
2001年にLEDは確かに早い。
でもどうなるんですかねえ。安い中国製とか溢れてるからそれに業を煮やしてるんでしょうか。。