及川輝治の政治日記 

及川輝治の政治への挑戦!

フランスで右翼が躍進ー欧州の前途を危ぶむ

2015-02-15 | 日記
去る8日フランス国会議員補欠選挙の決戦投票の結果が発表された。
    当選 バルビエ(社会党) 51.4%
    次点 モンテル(国民戦線)48.6%
 この補選は 与党社会党議員が欧州委員転出に伴うものであった。第1回投票の結果は
    1位  モンテル      32.6%
    2位  バルビエ      28.9% 最大野党国民運動連合は3位で敗北した。
たった一つの国民議会の選挙がなぜ問題なのか。
 
 現在国民議会の主要政党の議席は次の通り。(2012年6月選挙)
   与党社会党(PS) 280  国民運動連合(UMP保守)194 国民戦線(FN) 2  緑の党17
 このわずか2議席の国民戦線が、国民の支持率比較第一党(欧州議会選挙ー2014年5月)から、単独で国民の過半数に近い支持を獲得したことを証明した。次の選挙で国民戦線ルペンが大統領に、国民議会の過半数獲得が現実の日程に上ったのである。しかもフランスの社会・経済、そしてイスラム国をめぐる問題が国民戦線にとって有利に展開していることだ。
 国民戦線は極右ともネオナチとも言われてきた。しかし今日までの政治過程を見る限り、単純に規定することは誤りを生む。確実にその政策が国民の支持を獲得してきたからである。しかし従前の左翼・保守により進められてきた政治とは決定的に異なる。右翼である。歴史は繰り返すがナチスの再来ではない。新右翼である。彼らは既成政党ー左翼(共産党・社会党)とは勿論、保守本流とも明確に一線を画してきた。妥協による政権参加を拒否してきた。
 欧州連合もドイツを除き経済の停滞、それに伴う雇用に不安定、失業の増大、格差拡大が進み、治安が悪化している。フランスでもその批判が欧州連合=E Uに、国民の7~8%、500万人と言われる移民(その多くはイスラム教徒)に向けられている。それはナショナリズムへの回帰へと進んでいる。しかもその運動主体が労働者階級である。労働組合も往年の面影はない。1930年代の危機を思わせる状況は確実に進行している。
 オランド大統領はイスラム国との戦いを宣言し、空母シャルルドゴールを中東に派遣し、国内では15000人の軍警を配置してテロ対策に奔走している。これで支持率10%台から40%台に回復したとも言われるが、治安の悪化は一層深刻化し、結果として国民戦線への支持が増大している。右翼に共通する思想は移民排斥であり、今や労働者もそれを支持している。

 ギリシャの経済危機、ウクライナの内戦と経済危機、イタリア、スペインもE Uの緊縮財政に苦しんでいる。そしてイスラム国問題。人類の英知が今試されている。

アインアルアラブ(クルド名コバニ)戦闘から中東紛争を見る

2015-02-03 | 日記
イスラム国を過激派集団として彼らとの戦いを戦争とは呼ばない。従って宣戦布告もない。戦争に伴う国際協定も存在しない。すべて力による勝敗、敵を壊滅させた時が問題の解決となる。その顕著な事例がブッシュによる「大量破壊兵器」を理由とするイラク攻撃である。サダム・フセインは虐殺されたが、イラクは敗戦協定に調印したわけではない。勝利した国=アメリカによって作られた政権が権力を握る。国民がその政権を支持するとは限らないし、紛争は複雑に長期化する。イスラム国はまさにその「申し子」ではないか。アフガニスタンもシリアもリビアも同様な経過を辿っている。この紛争を主導しているのがアメリカであり、かっての植民地支配者英仏たちである。中東の不幸は豊富な石油資源の存在であった。

 一月下旬アインアルアラブ(クルド名コバニ)をクルド兵が占領、イスラム国は撤退する。このシリア北部の都市は2012年にシリア政府軍が撤退し、クルド人の自治組織が事実上支配・統治していた。この街をイスラム国が一時占拠していたのである。それは戦略的な要衝ートルコとの国境の街であり、海外からのイスラム国志願兵のシリア入国路でもあった。アメリカはこの拠点攻撃のため最大の空爆を実施する。連日6回程度の、1月25日には17回の空爆を行う。イラクのクルド兵も、トルコの許可を得て救援に駆けつける。その結果としてのクルド兵の勝利であった。
 アインアルアラブ(クルド名コバニ)はクルド人が多く住む地域であり、市内には約45,000人、周辺を含めると40万人の人口を擁していた。昨年9月以降の戦闘により双方の兵士と市民の死亡1600人(AP通信)街は廃墟と化し、住民が復帰できる状況ではない。戦争とは呼ばないが地獄絵が展開されたのである。
 このコバニの戦闘は新たな課題も突きつけた。クルド民族をどう位置付けるかという問題である。クルド人口2100万人 トルコ東部 850万人(トルコ人口の14%) イラン北西部 600万人(イラン人口の9%) イラク北部 300万人(イラク人口の15%)その他シリア外。彼らは内部で多くの派閥を抱えていたが、対イスラム国戦では同一歩調をとってきた。トルコ労働者党(PKK)はアメリカからテロ集団に指定されているが、今回は敵の敵として利用する。しかしトルコは認めない。

 イスラム国に対するアメリカ・有志国連合の空爆は既に2000回に及ぶと言われる。無人偵察機はたった一台の自動車をも見逃さない。有志国連合は一名の死者もださない。殺されるのはイスラム国兵であり、そこに住むアラブの市民である。いつ攻撃するのか、いつ退却するのか、いつ殺されるのか、イスラム国兵には寸時の暇もない。酒も厳しく禁じられている。そんな所へなぜ世界から2万人もの若者が参加するのか、深刻に考えて見たい。