憲法第99条の意味
今夏の参院選を前に、憲法改正議論、特に、第96条に注目が集まっています。しかし、憲法改正の要件、ハードルを下げるべきか否かの議論ですから、その前に、そもそも「憲法とは何か」について考えなければなりません。特に、第99条の意味について改めて考えるべきだと思っています。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
この条文を見る限り、憲法を尊重しなければならないのは国民ではなく、天皇、摂政そしてあらゆる立場の公務員であるということになります。当然ながら、一般の国民は憲法を守らなくてもいいという意味ではなく、「日本国民」は憲法の前文で様々な決意、確認そして誓約を宣言していますから、具体的には、憲法の考えの下に作られている各種の法律に従うことが求められていると言えます。
なぜ第99条のような条文があるのでしょうか。それは、日本国憲法は、政治権力あるいは国家権力を制限するための仕組みであるからです。ですから、内閣総理大臣に象徴される国会議員と公務員という地方公共団体も含めた国家権力に関する規定や、国民に対して国家権力側が保障すべき権利・自由については憲法の中で細かく書かれています。その一方で、国民が守るべき義務として憲法の中に規定されているのは、教育を受けさせる義務(第26条)、勤労義務(第27条)、納税義務(第30条)の3つだけなのです。
言い換えれば、法律を制定し執行することによって権力を行使する公務員に対して憲法尊重義務を課している条文が第99条であり、日本国民が作った憲法であることを謳った前文の主旨からしても、「日本国民が国家権力に憲法を守らせている」という構図であるのが日本国憲法なのです。
ですから、憲法尊重義務がある国家権力側が、十分な国民的な議論が無いまま憲法改正に突き進むのは由々しき事態です。とりわけ、改正すべき内容が国民の間で議論や共有がされないままに、とにかく第96条を改正してハードルを下げようというのは、権力の暴走と言う他ありません。今一度、第99条の意味をじっくり考えるべきです。
地図にだまされない!日本上空を通過する弾道ミサイルとは?
憲法改正論者の中には、最近の北朝鮮による長距離ミサイル実験のような情勢変化に対応できるように、第9条を改正して日本も集団的自衛権を行使できるようにする、例えば、アメリカに向けて発射された弾道ミサイルが日本上空を通過した場合は集団的自衛権として打ち落とせるようにすべきという方もいらっしゃるようです。しかし、他国に向けられた弾道ミサイルが日本上空を通過するケースとはどのような場合か、ここで冷静に考える必要があると思います。
よく使われる地図(メルカトル図法)では、日本が中央付近にあり右に太平洋を挟んでアメリカ大陸、左にユーラシア大陸という構図になっています。そうした地図で考えれば、北朝鮮からアメリカに向けて発射されたミサイルは日本上空を必ず通過すると思いがちです。しかし、それは間違いです

※北朝鮮からアメリカ本土に向けて飛ぶミサイルは日本上空を通過しない(Google earth画像を加工)
その理由は学校の地理の授業を思い出せば分かりますが、お手元の地球儀か、「グーグルアース」で北極辺りを中心に眺めれば一目瞭然です。上記の「グーグルアース」画像では、北朝鮮のミサイル基地「ムスダンリ」から発射された弾道ミサイルがアメリカ西海岸の最大都市ロサンゼルスに向かって飛翔した場合の経路(白い線)を示してみましたが、日本上空は通過しません。この経路は北朝鮮がアメリカ本土を狙った場合のほぼ南端(太平洋側)のものですから、ワシントンやニューヨークを狙った場合は更に北側(つまり日本上空を通過しない)となります。中国の場合もほぼ同様です。
例外は、重要な軍事基地があるハワイやグアムに向けてミサイルが発射された場合です。しかし、アメリカ軍基地を攻撃するのであれば、当然ながら、より北朝鮮の近くにある在日アメリカ軍基地も同時に攻撃目標とするでしょう。その場合、自衛隊は全力を尽くして日本国土を守るわけですから、ハワイやグアムに向けられたミサイルはアメリカ軍に任せることになるでしょう。
このように、日本上空を通過する弾道ミサイル迎撃の可否の議論は、少なくとも、集団的自衛権を行使する典型例としては、あまりにも現実性が乏しいものだと言えます。そうした議論よりも、これからの「人口減少社会」に対応するために、国と地方のあり方やその規定である憲法をどう変えるべきかについて国全体で冷静に考え議論することの方が、遥かに現実的・長期的課題であるはずです。
お読み下さり、ありがとうございます。
今夏の参院選を前に、憲法改正議論、特に、第96条に注目が集まっています。しかし、憲法改正の要件、ハードルを下げるべきか否かの議論ですから、その前に、そもそも「憲法とは何か」について考えなければなりません。特に、第99条の意味について改めて考えるべきだと思っています。
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
この条文を見る限り、憲法を尊重しなければならないのは国民ではなく、天皇、摂政そしてあらゆる立場の公務員であるということになります。当然ながら、一般の国民は憲法を守らなくてもいいという意味ではなく、「日本国民」は憲法の前文で様々な決意、確認そして誓約を宣言していますから、具体的には、憲法の考えの下に作られている各種の法律に従うことが求められていると言えます。
なぜ第99条のような条文があるのでしょうか。それは、日本国憲法は、政治権力あるいは国家権力を制限するための仕組みであるからです。ですから、内閣総理大臣に象徴される国会議員と公務員という地方公共団体も含めた国家権力に関する規定や、国民に対して国家権力側が保障すべき権利・自由については憲法の中で細かく書かれています。その一方で、国民が守るべき義務として憲法の中に規定されているのは、教育を受けさせる義務(第26条)、勤労義務(第27条)、納税義務(第30条)の3つだけなのです。
言い換えれば、法律を制定し執行することによって権力を行使する公務員に対して憲法尊重義務を課している条文が第99条であり、日本国民が作った憲法であることを謳った前文の主旨からしても、「日本国民が国家権力に憲法を守らせている」という構図であるのが日本国憲法なのです。
ですから、憲法尊重義務がある国家権力側が、十分な国民的な議論が無いまま憲法改正に突き進むのは由々しき事態です。とりわけ、改正すべき内容が国民の間で議論や共有がされないままに、とにかく第96条を改正してハードルを下げようというのは、権力の暴走と言う他ありません。今一度、第99条の意味をじっくり考えるべきです。
地図にだまされない!日本上空を通過する弾道ミサイルとは?
憲法改正論者の中には、最近の北朝鮮による長距離ミサイル実験のような情勢変化に対応できるように、第9条を改正して日本も集団的自衛権を行使できるようにする、例えば、アメリカに向けて発射された弾道ミサイルが日本上空を通過した場合は集団的自衛権として打ち落とせるようにすべきという方もいらっしゃるようです。しかし、他国に向けられた弾道ミサイルが日本上空を通過するケースとはどのような場合か、ここで冷静に考える必要があると思います。
よく使われる地図(メルカトル図法)では、日本が中央付近にあり右に太平洋を挟んでアメリカ大陸、左にユーラシア大陸という構図になっています。そうした地図で考えれば、北朝鮮からアメリカに向けて発射されたミサイルは日本上空を必ず通過すると思いがちです。しかし、それは間違いです
※北朝鮮からアメリカ本土に向けて飛ぶミサイルは日本上空を通過しない(Google earth画像を加工)
その理由は学校の地理の授業を思い出せば分かりますが、お手元の地球儀か、「グーグルアース」で北極辺りを中心に眺めれば一目瞭然です。上記の「グーグルアース」画像では、北朝鮮のミサイル基地「ムスダンリ」から発射された弾道ミサイルがアメリカ西海岸の最大都市ロサンゼルスに向かって飛翔した場合の経路(白い線)を示してみましたが、日本上空は通過しません。この経路は北朝鮮がアメリカ本土を狙った場合のほぼ南端(太平洋側)のものですから、ワシントンやニューヨークを狙った場合は更に北側(つまり日本上空を通過しない)となります。中国の場合もほぼ同様です。
例外は、重要な軍事基地があるハワイやグアムに向けてミサイルが発射された場合です。しかし、アメリカ軍基地を攻撃するのであれば、当然ながら、より北朝鮮の近くにある在日アメリカ軍基地も同時に攻撃目標とするでしょう。その場合、自衛隊は全力を尽くして日本国土を守るわけですから、ハワイやグアムに向けられたミサイルはアメリカ軍に任せることになるでしょう。
このように、日本上空を通過する弾道ミサイル迎撃の可否の議論は、少なくとも、集団的自衛権を行使する典型例としては、あまりにも現実性が乏しいものだと言えます。そうした議論よりも、これからの「人口減少社会」に対応するために、国と地方のあり方やその規定である憲法をどう変えるべきかについて国全体で冷静に考え議論することの方が、遥かに現実的・長期的課題であるはずです。
お読み下さり、ありがとうございます。

