『日本語語源大辞典』によれば、「生きる」という言葉は、「息をする」からきているそうです。
永年、助産師をしていた方から聞いたのですが、赤子が羊水に包まれたお母さんのお腹から、外気に触れる外の世界へ出て、まずすることが肺呼吸だそうです。
これができねば、酸素不足でたちまち命は終わってしまいます。だから赤子は懸命に肺で息をしようとし、助産師はそれを助けます。生まれたての赤子の吸う息、吐く息の一つ一つは、まさに命と触れ合っており、「生きる」行為そのものといえるでしょう。
めでたく呼吸できるようになった赤子は、今度は呼吸活動を維持するために飲食し、排泄し、成長してからは読み書きを習い、働きもします。人間の営みといっても、根本を言えば「生きるため」「息をするため」に集約されるでしょう。
さて、人生はしばしば海に例えられ、「生まれる」ことは大海に放り出されることにも例えられます。
映画『なぜ生きる――蓮與聖人と吉崎炎上』の中で、「泳がなければ沈むだけ。私たちは、一生懸命泳がなければなりません」
と蓮如上人が仰る場面があります。
ここで「泳ぐ」という行為は、生きることを意味します。交互に手を動かす、そのひとかき、ひとかきは、一息一息、呼吸をする行為にほかならないでしょう。手の動きを止めたらそこで沈むように、息を止めたらそこで死んでしまいます。
息をするのは死にたくないからです。〃自分らしく生きるため〃ではないでしょう。それはずっと枝葉の問題なのです。
死にたくないから息をしますが、息をしていてもやがて止まるのです。「出る息は入る息を待たず命は終わる」の仏説どおり、それは全ての人の姿です。
ならばなぜ、人は息が止まるまで息を続けるのか?なぜ息をする?なぜ生きる?映画はその本質を問いかけています。
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