現場発泡の吹付けウレタンについてのお話です。
先日、「最近、現場発泡の吹付けウレタン断熱を使用する工務店が増えてきていますが、御社でもどうですか?」とのお話を頂きました。 しかしながら、当社では今のところ現場発泡ウレタンを採用する予定はないのです。 以下にその理由を上げます。
① 防火構造とならない。
県内の住宅地のほとんどが、準防火地域外であっても22条地域には該当しますので、外壁を防火構造にする必要があります。
防火構造とするには、各建材メーカーが、外壁+ 面材+断熱材+内装材の組合せで認定を取得している仕様にするか、基準法の告示にある仕様とする必要があります。
例えば、当社が使用している耐力面材モイスを使い、外壁にガルバリュウム鋼板や無垢の木など自由に選択しようとすると・・・ 断熱材はグラスウール・ロックウール・セルロースファイバーのいずれかを選択するしかありません。吹付けウレタンでは認定を取得していないのです。 また普及率の高いダイライトを面材として使用する場合には、高グレードの12㍉タイプを採用したとしてもガルバリュウム鋼板とウレタンの組合せでは防火構造とはなりません。
他に、この様な耐力面材を使わない在来のスジカイ工法と、現場発泡の吹付けウレタンの組合せにしてしまうと、外壁にはごく一部の窯業系サイディングを選択するしか、防火構造とする方法がなくなってしまいます。 (もし、他に認定が取れている組合せがあったら教えて下さいね。)
さらに、こういった耐力面材を使わない在来のスジカイ工法で、現場発泡の吹付けウレタン施工した場合には、以下の様な不具合も懸念されます。↓
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20121107/590434/
つまり、吹付けウレタンを使用した場合、外壁材や面材が限定されてしまうのです。 (ただ・・・ 実際には、認定以外の組合せで施工している住宅がけっこうありそうですけどね・・・)
② 高い断熱性能が確保できない。
現場発泡の吹付けウレタンは、断熱性能、気密性能が高いイメージがありますが、数字でみてみると決してそうではない事がわかります。
現場発泡の吹付けウレタンで施工する一般的な厚みは、せいぜい50~75㍉(1日で80㍉以上の吹付けはクラックや垂れが懸念されますので)といわれています。 例えば、最近普及してきた「水で発砲するアクアフォーム」を壁面と屋根面に使用した場合、熱伝導率が0.034w/m・kの断熱材ですので、75㍉厚の場合の熱抵抗は、0.075÷0.034= 2.20㎡・k/w 壁面・屋根面ともにです。 (実際には、もっと薄い50㍉厚程度としているケースが多い様です。)
次に、当社が普段採用している高性能グラスウールの計算です。
壁に105㍉、屋根面に210㍉充填の場合、熱伝導率が0.038w/m・kですから、壁面の熱抵抗は0.105÷0.038= 2.76㎡・k/w 、屋根面の熱抵抗は0.210÷0.038= 5.52㎡・k/w
熱抵抗値は、数字が大きいほど断熱性能が高いですので、安価な高性能グラスウールをたっぷり充填した当社仕様の方が、はるかに断熱性能が高くなる事がわかります。
もっとも、現場発泡の吹付けウレタンでも100㍉~200㍉以上の極厚の吹付けとすれば、当社仕様に近い断熱性能となります。 しかしながら、現場の納まりや金額面で考えると、まず採用しない厚さです。(その費用があったら、他の工法でウンと性能が上げられますものね。)
「吹付けウレタンを採用した高断熱・高気密な住宅」と うたっていても、快適に住まうには、床暖房などのエネルギー消費の大きい暖房器が必要な程度の住宅です。 これではとても省エネ住宅とは言えないレベルです。
昨今の省エネ住宅では「エアコン暖房」(ヒートポンプ暖房)とする事が基本ですが、新潟でこの程度の断熱性能の住宅では、エアコン暖房の採用は寒くて無理です。
つまり、厚みの確保できない現場発泡の吹付けウレタン断熱は、比較的温暖な地域なら良いが、東北や北海道などの高い断熱性能を必要とする地域で省エネ住宅を作るには、不向きな断熱工法なのではないのかと考えます。
また、吹付けウレタンなら気密性も高いイメージがありますが(プロでもそう思っている人が多いですが)、柱やタルキ間に充填しただけで気密をとろうと思っても、実際にはあまり有効でないのが本当のところです。 やはり面材などの外周部で目張りをして気密を確保する必要があります。(もしくは内部側の防湿シートで)。 現場発泡の吹付けウレタンはあくまでも断熱材として考え、別途に気密性を確保する必要があるのです。
参考までに、この様に吹付けウレタンの気密性を検証した方もおられます。→http://dannetu35.blog90.fc2.com/blog-entry-145.html
以上、なんだか現場発泡の吹付けウレタンのデメリットばかり並べてしまいましたが、貫通金物などの熱橋を防いだり、部分的な隙間を埋めるには、吹付けウレタンはとても便利な品です。
その様な使い方なら当社でも採用していますし、吹付けウレタンの部分的な使用については私も大賛成です。