少し強めの風、雨雲の流れは速くいつ雨が降ってきてもおかしくない天気。
今年は夏らしい夏がないままにとうとうアユ釣りの時期は過ぎてしまった。
巷には既に竿を納めたアユ師も増えてきた。
ある夏、とある川での出来事。
爺様が出かける川なので、水深はせいぜい1mの安全な川。
流れのヘチを下流へ漕ぎ歩いていた時、大きめの底石を越えようと踏み出した足が石垢で滑って前のめり、転んではならぬとさらに踏み出した足も滑って万事窮す。
左手に釣り竿、近くには右手で掴まるような草木もなく、流れは速いが1ｍもない水深でザンブとばかりに顔から落水してしまった。
着衣水泳の経験はないが、ある程度水には強い爺様、川水を飲み込むことはなかったがみっともなさも手伝って少々焦ってしまった。
高齢者などの水難事故の多くは、こんな状態に陥った時のパニックに起因すると聞くが、この時の爺様はすぐに立ち直って難を逃れた。
水を飲み込むとパニックが加速するので数秒間呼吸を止め、落ち着いて体勢を整えることで最悪の事態を回避したい。
例え流されたにしても、そこが川である限り流れる先の何処かには手ごろなホールドがあり浅瀬もある。
押しの強い大河や早瀬が好みのご同輩には、少し高価ながら手動膨張式のライフジャケットと言う手段もある。
