昨年のことですが、友人から古い椅子の修理を依頼されました。
座の籐が破れた状態です。
こちら、”中央木工(株)(現、飛騨産業)”の”第弐號 曲木椅子”、製造1920年(大正9年)という、古いものです。
飛騨の家具館に展示してある、第弐號 曲木椅子がこちら。
ミュージアムに展示されるのに値する、古い椅子。
当時、ノックダウン方式で出荷されていましたが、高山線もまだ開通していない時代で、岐阜まで馬車で輸送されていたのだといいます。
椅子の曲木の部分には、バリが入り、釘で打ちつけた痕跡がありました。
ささくれた状態を、無理に接着するのはタブーです。
引っかかりの無いように研磨することにしました。
塗装の剥げた部分は、顔料の入ったオイルでリタッチし、蜜蝋でつやを出します。
問題は、座の破れた籐です。
現在、籐張りのできる職人は、メーカーにも、県内にもいらっしゃらないのです。
クラシック家具を扱う”ダニエル”さんに尋ねましたら、"THONET"を扱う"AIDEC"さんなら、修理ができるとのことでした。
ともあれ、籐の修理は可能ということは解りましたが、椅子のオーナーの希望は、「座を、ブリティッシュっぽい柄の布張りにしてほしい。」というものでした。
であれば、このクラッシックな椅子に合う布を探さなければなりません。
"Moris & co"の張布はどうかな、と思ったんですが、
小椅子には大きすぎる柄です。
しばらくすると、オーナー様が「張ってほしい布がありました。」とおっしゃいます。
なんでも、使っているカウチのアームカバーを外したもので、もともと椅子の張布です。
可愛い小花で、ちょうど座と玉縁(パイピング)が取れるほどの分量でした。
座面の平らな椅子は、ウレタンを敷いたとしても、当たりの堅い感じがあります。
考えて、MDFボード(木材の繊維板)をドーナツ形にくりぬいて座板を作り、抜いた部分にダイメートロール(布バネ)という素材を張ることにしました。
もともとの籐は、バネのようにしなって体重をささえてくれます。
籐の座り心地に一番近いのではないかと思い、ダイメトロールを思いつきました。
もしかしたら、飛騨産業さんが持っているかもしれないと思い、八軒町のとなり町、名田町にある、飛騨産業アウトレット館に行きました。
「第弐號 曲木椅子を治したいんです。会社の歴史に残るあの椅子のために、どうか(ダイメトロールを)お分け下さい・・・。」とかなんとか言いますと、
「あるよ、ダイメトロールなら。焼却炉のところに。」と、アウトレット館の”K手C七”さん。
焼却寸前のダイメトロール張りのフレームを、タダで分けて下さいました。
こちらのフレームに張られている黒い布が、ダイメトロールです。
ドーナツ型のフレームとダイメトロールをベースに、薄いウレタンを敷き、張布を張って、完成した椅子。
破れた籐はどうしたかといいますと、どうしても剥がす気になれなかったので、内蔵しました。
籐を隠すように、布を張った座板を上に乗せてビスで止め、裏布を張りました。
いつか、完全復刻したくなったら、座板を外して、籐を張り替える余地を残しておきたかったのです。
製造から96年経った椅子。
よくぞ直しをご依頼くださいました。
これからも、現役で頑張ってくれることだと思います。
座の籐が破れた状態です。
こちら、”中央木工(株)(現、飛騨産業)”の”第弐號 曲木椅子”、製造1920年(大正9年)という、古いものです。
飛騨の家具館に展示してある、第弐號 曲木椅子がこちら。
ミュージアムに展示されるのに値する、古い椅子。
当時、ノックダウン方式で出荷されていましたが、高山線もまだ開通していない時代で、岐阜まで馬車で輸送されていたのだといいます。
椅子の曲木の部分には、バリが入り、釘で打ちつけた痕跡がありました。
ささくれた状態を、無理に接着するのはタブーです。
引っかかりの無いように研磨することにしました。
塗装の剥げた部分は、顔料の入ったオイルでリタッチし、蜜蝋でつやを出します。
問題は、座の破れた籐です。
現在、籐張りのできる職人は、メーカーにも、県内にもいらっしゃらないのです。
クラシック家具を扱う”ダニエル”さんに尋ねましたら、"THONET"を扱う"AIDEC"さんなら、修理ができるとのことでした。
ともあれ、籐の修理は可能ということは解りましたが、椅子のオーナーの希望は、「座を、ブリティッシュっぽい柄の布張りにしてほしい。」というものでした。
であれば、このクラッシックな椅子に合う布を探さなければなりません。
"Moris & co"の張布はどうかな、と思ったんですが、
小椅子には大きすぎる柄です。
しばらくすると、オーナー様が「張ってほしい布がありました。」とおっしゃいます。
なんでも、使っているカウチのアームカバーを外したもので、もともと椅子の張布です。
可愛い小花で、ちょうど座と玉縁(パイピング)が取れるほどの分量でした。
座面の平らな椅子は、ウレタンを敷いたとしても、当たりの堅い感じがあります。
考えて、MDFボード(木材の繊維板)をドーナツ形にくりぬいて座板を作り、抜いた部分にダイメートロール(布バネ)という素材を張ることにしました。
もともとの籐は、バネのようにしなって体重をささえてくれます。
籐の座り心地に一番近いのではないかと思い、ダイメトロールを思いつきました。
もしかしたら、飛騨産業さんが持っているかもしれないと思い、八軒町のとなり町、名田町にある、飛騨産業アウトレット館に行きました。
「第弐號 曲木椅子を治したいんです。会社の歴史に残るあの椅子のために、どうか(ダイメトロールを)お分け下さい・・・。」とかなんとか言いますと、
「あるよ、ダイメトロールなら。焼却炉のところに。」と、アウトレット館の”K手C七”さん。
焼却寸前のダイメトロール張りのフレームを、タダで分けて下さいました。
こちらのフレームに張られている黒い布が、ダイメトロールです。
ドーナツ型のフレームとダイメトロールをベースに、薄いウレタンを敷き、張布を張って、完成した椅子。
破れた籐はどうしたかといいますと、どうしても剥がす気になれなかったので、内蔵しました。
籐を隠すように、布を張った座板を上に乗せてビスで止め、裏布を張りました。
いつか、完全復刻したくなったら、座板を外して、籐を張り替える余地を残しておきたかったのです。
製造から96年経った椅子。
よくぞ直しをご依頼くださいました。
これからも、現役で頑張ってくれることだと思います。