もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

0096 水木しげる「白い旗」(講談社文庫;1961(2010、1991)感想 4 「特攻」は「永遠の0」のモデルだ!

2013年08月26日 21時51分23秒 | 一日一冊読書開始
8月26日(月):

306ページ  所要時間 1:30      図書館

著者39(88、69)歳(1922生まれ)。

水木しげるの<戦記物のマンガ>である。当時一頁二百円(今の7000円ぐらいか?)の<貸本マンガ>の原稿は“捨てる”風習だった。原稿は無かったが、一冊、本が残っていたので30年前の本が出版できた。本書は、1991年、30年ぶりに株式会社コミックスより復刻された本の再刊本である。「それにしても、三十年も日の目を見なかった戦記物が本になるということは、それこそ夢みたいな話だと喜んでいる。」(306ページ、水木さん談)

水木しげるは、<妖怪関連>だけではない。<近代史を題材にしたマンガ>などでも間口と奥行きの非常に深い作家である。特に、彼自身が左腕を失った陸軍二等兵としての従軍体験をもとにした戦記物は出色である。例えば『総員玉砕せよ!』を読めば、<詭弁モンスター橋下>が弄する「従軍慰安婦は軍との関与無し」という虚しい言葉遊びのウソが簡単にあぶり出されてしまうのだ。水木しげるの戦記物における仕事は、もっと再評価されてよいと思う。

最近の超低知能<ヘイトスピーチ>の国益バカどもの愚劣な申し入れに、何の見識も持てずに屈して「はだしのゲン」の小学校図書館での閉架を決め、世論の批判を受けて慌てふためいて撤回する定見の無い醜態をさらした島根県と鳥取県の教育委員会他の恥知らずな醜さ、見苦しさを見るにつけ、水木さんの戦記物マンガをもっともっと図書館に入れるべきだと思うのだ。

目次

◎白い旗(硫黄島玉砕で奇跡的に生き残った傷病兵6名を活かすために海軍大尉(水木さんの兄の親友)が、米軍に白旗を振る。そして、生き残った味方の日本陸軍23名に射殺される実話)

◎ブーゲンビル上空涙あり(米軍の最大の獲物である山本五十六長官の飛行機が、待ち伏せされ撃墜される話)

◎田中頼三(ガダルカナルに飛行場を作れば、日本の「不沈空母」になる。ガ島をめぐる日本軍と米軍の死闘、圧倒されていく日本軍にあって、米軍をきりきり舞いさせた第二水雷戦隊(駆逐艦部隊)司令官田中頼三の活躍)

◎特攻(半分近い141ページを割いて描く水木しげる版「永遠の0(ゼロ)」。というより、こちらの方が元です。特高はにわか仕込みの飛行機乗りでは、目標の空母まで到達できない。熟練の最高レベルのてだれの飛行機乗りにしてようやく可能だった。主人公は沖縄出身の撃墜王上代守(かみしろまもる)海軍大尉というゼロ戦乗り最後のシーンは、「永遠の0」とまったく同じ! 水木しげる、恐るべし!

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