もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

170615 【社説】:毎日「強引決着の「共謀罪」法案 参院の役割放棄に等しい」、朝日「国会最終盤 極まる政権の強権姿勢」

2017年06月15日 18時05分15秒 | 時代の記憶
6月15日(木):
  
毎日新聞強引決着の「共謀罪」法案 参院の役割放棄に等しい 2017年6月15日 東京朝刊
  後半国会の焦点である「共謀罪」法案が成立する運びとなった。与党が参院法務委員会での採決を省略し、本会議で可決するという強硬手段を選んだためだ。
  多くの欠陥を抱える法案を是正することなく、決着を急ごうとする与党の強引さに驚く。
  「共謀罪」法案は準備・計画段階でも犯罪の処罰を可能とする。刑事法の体系を大きく変える法案だ。
  政府は国際組織犯罪防止条約の締結に必要だと説明してきた。
  だが、一般人が警察の捜査対象となり、監視社会に道を開く懸念を衆院段階では払拭(ふっしょく)できなかった。
  だからこそ、参院では対象犯罪を大幅に絞り込むなど法案を抜本修正することで「再考の府」の責任を果たすよう、私たちは求めてきた。
  にもかかわらず、参院での法案審議で、政府は不安を解消するどころか、逆に広げた。
  政府は衆院の審議で、法案が適用される「組織的犯罪集団」について「一般人は対象にならない」と説明してきた。ところが、金田勝年法相は集団の構成員でなくても関係がある「周辺者」であれば処罰され得ると新たに答弁した。一般人との線引きをあいまいにする見解である。
  安倍晋三首相は参院審議にあたり「できる限り分かりやすい説明をこころがけたい」と国民理解を強調していた。その約束はどうしたのか。
  しかも与党は、法案を修正するどころか委員会で採決すらせず、委員長の「中間報告」で済ますという異例の展開となった。
  参院法務委員会は公明党議員が委員長を務める。与党が委員会で採決を強行しなかったのは、公明党が重視する東京都議選の告示を来週に控えての配慮とみられている。だとすれば、ご都合主義も極まれりだ。
  学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題も、与党の対応に影響したとみられている。
  文部科学省は内部文書の再調査を進めており、結果が公表されれば野党の攻撃が激化する可能性がある。都議選を控え「加計隠し」のため国会の幕引きを急いだのではないか。
  与党が今国会で成立を目指すのであれば、会期を大幅延長して議論を尽くすべきだった。こんな決着の仕方は、参院の役割放棄に等しい。

朝日デジタル(社説)国会最終盤 極まる政権の強権姿勢  2017年6月15日05時00分
  あまりに乱暴な国会運営だ。とうてい承服できない。
  「共謀罪」法案について、自民党は参院法務委員会での審議を打ち切り、本会議での直接採決に向けて「中間報告」を行うことを提案した。民進など野党が激しく反発するのは当然だ。
  中間報告は、国民の代表である国会議員の質問権を事実上奪うものだ。憲法が定める国会への閣僚の出席・発言義務を免ずることにもなる。    提案自体が参院無用論につながりかねない強権姿勢を、与党の参院議員はどう考えるのか。
  政権側の思惑は明らかだ。
  共謀罪法案は何としても成立させる。だが18日までの国会会期を延長する事態になれば、森友学園や加計学園の問題で野党に追及の機会を与えることになる。とにかく早く閉会したい。強引な手法をとっても、人々はやがて忘れるだろう――。
  異なる意見に耳を貸さない。数の力で押し切る。国民を軽視する。くり返し指摘してきた政権の体質が、国会の最終盤に、最悪の形であらわれた。
  法案をめぐる疑問と危惧は、一向に解消されていない。
  国際組織犯罪防止条約に加盟するには法案の成立が不可欠だという政府の主張は、本当に正しいのか。実行されなくても計画の段階で処罰できるようにする共謀罪を、なぜ277もの罪に包括的に導入しなければならないのか。国連の専門家が、政府と異なる見解を明らかにしているのをどう説明するのか。
  まだまだある。
  政府は「一般人」には影響はおよばないと説明するが、それを担保するものは何か。市民団体などに対する不当な監視活動が明らかになっても「正当な業務だ」と開き直る警察当局を、なぜ容認するのか。この先どのようにコントロールし、逸脱・暴走を防ぐのか。
  国民の不安がぬぐえていない状況を見れば、いったん廃案にし、答弁能力に疑問符がつく法相を交代させて出直す。少なくとも、当初の会期にとらわれずに審議を尽くす。それが政治が果たすべき当然の責務だ。
  安倍首相は今月、ニッポン放送の番組で「不安を広げるための議論を延々としている」「あおっているに過ぎない」と野党を批判した。十分な説明ができない政府の責任を棚に上げ、反対する者を徹底的に攻撃する、いつものふるまいである。
  単に共謀罪法案の行方にとどまらない。「熟議」「謙譲」という言葉の対極にあるこの政権の下で、民主主義はどこへ行くのか。懸念がふくらむ。

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