もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

0098 大平光代「大平光代のくじけない生き方」(三笠書房;2012) 感想 3+

2013年08月30日 01時01分59秒 | 一日一冊読書開始
8月29日(木):

253ページ  所要時間 2:00     図書館

著者48歳(1965生まれ)。弁護士(休業中)。副題は「“自分らしい”幸せをつかむ75のヒント」である。

著者の名前は、前から知っていたが、著書は読んだことが無かった。時間・気力ともにきついので、「とりあえず、この有名人と短時間でもお付き合いしてみる気分で眺め読みしよう」と思った。実際には、平易な文章なので、ふつうに読めた。

不思議な感触の読書だった。イメージしていた人ではなかった。まじめで誠実そのものなのだ。斜めに構えるところが全くない。やろうと思えば少しはできるのだろうが、意識的にストレートにまじめに親切であろうとしている。それでも、伝えるべきメッセージがあるということなのか…。

読み進むにつれて、頭に浮かんできたのは、江戸時代の石田梅岩の「心学」だった。昔からおれは、「心の持ちようによって、生き方が変わる」という内向きの此の思想が好きになれなかった。

しかし、大平さんが本書で語っているのは、まさに<心の持ち様>、すなわち<ポジティブシンキング>と<感謝の念>なのだ。正直、戸惑ったが、「何をぬけぬけと白々しいことを云々」とまでは、思わなかった。理由は、この本のあちこちで語られる著者の人生の来歴のすさまじさによって、言葉自体に薄っぺらさを感じる訳にいかない感じになったからだ。

中学でのいじめがもとで、14歳で割腹自殺をはかり、16歳でヤクザの組長と結婚、背中に入れ墨を彫る。22歳でホステスをし、離婚後、養父に引き取られ、宅地建物取扱主任、司法書士と資格を取り、28歳で司法試験に合格する。しかし、司法修習生の期間も、その後の弁護士活動も結構大変で苦労していた。大阪市の助役に就任してからは、あらぬ噂をたくさん流され人間不信に陥り、40代になったら出家する予定だったのが、急転して11歳年上の現在の夫である弁護士と知り合い、結婚。一方で、実父、養父、養父の実子で著者の妹となり、著者をずっと支えてくれていた妹が、皆ガンで死んでしまう。妹は不妊治療でようやく授かった6歳の男女の双子を残した無念の死である。やがて、著者は41歳の高齢出産で娘を授かるが、出産自体が命懸け、産後も重い病気になる。生まれてきた娘は、白血病や心臓疾患など生死にかかわる重篤な合併症をいくつも抱えて生まれてきていて、その上でダウン症だった。それでも、著者は娘が生きていてくれるだけで幸せ。「私にしかできないダウン症の娘の子育てという弁護士よりもずっと遣り甲斐のある仕事を娘が与えてくれて幸せ!、と言い切るのだ。もって瞑すべきだろう。娘を持って14歳の自分が割腹自殺をはかった時の父母の思いを理解し謝罪したいが、ガンで既に実父無く、実母はアルツハイマー症で娘である著者を理解できない。舅、姑は大変よい人たちであったが、この人たちとも既に死に別れた。ダウン症の娘のために、夫とともに少しでも長生きをしなければ、と考える日々であるが、大平さんは、弁護士を休業しながら、毎日が幸せ、なのである。 何をかいわんや、瞑すべし瞑すべしである。

訴えている内容は、<通俗的>であるが、それを実際に実践し、幸福感を得ているところが、<通俗的>になっている。もはや、この書は、<宗教家の書>と考えるべきだ。大平さんは、子どもを産み育てながら、在家で出家しているのだと思う。

本当に生きるのに行き詰まって死ぬことを考えた時には、この本をもう一度読もうと思う。

目次 : ※コピペ
はじめに 「自分らしい幸せ」をつかむには
1章 <自分をよりよく変えるヒント>あなたはもっとラクに生きられる
2章 <働き方のヒント>今日から“いつもの仕事”がもっと楽しくなる
3章 <恋愛・結婚のヒント>ベストパートナーと幸せになるために必要なこと
4章 <健康に生きるヒント>自分の心と身体の声を聞いてみよう
5章 <お金と賢くつきあうヒント>上手なお金の使い方・下手な使い方
6章 <生きがいのヒント>今日から始める「夢をかなえる」生活
7章 <いい関係づくりのヒント>夫婦・家族関係を円満にする秘訣はどれもシンプル
8章 <素敵に年を重ねるヒント>人生には一つも無駄はない
9章 <大平流・前向きに生きる六つの習慣>「今、どう考えたか」でその後の人生が決まる

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