もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

3 119 佐高信・姜尚中「日本論 増補版」(角川文庫;2004) 感想5

2014年07月12日 01時19分45秒 | 一日一冊読書開始
7月12日(金):

254ページ  所要時間 2:05    ブックオフ 70円

著者 佐高信59歳(1945生まれ)。
   姜尚中54歳(1950生まれ)。

今日も一日本当に忙しかったが、ねぎらいの言葉一つない職場で空疎な気分を味わった。若い時から、職場でたくさんの人間の地雷を踏んできた。近頃は、さすがに気をつけて踏まないようにしてきたつもりだが、そもそも気付かないのが地雷である。

いい歳をしてもっとしっかりとものを考え、ゆったりとした器の人間だと思っていたのが、意外や意外、「自分はしっかりしている」という幼稚なプライドの持ち主で、「傷つけられた」と被害者意識を持ち、かれこれ10カ月近くも執念深く俺に対してシカト(無視)を決め込んでいる馬鹿な同僚がいる。笑えるが、疲れる現実だ。

疲れて帰宅後、一休みしてから、気分がふさぎこまないよい工夫はないか?と考えをめぐらして、昨夜の15秒読書を思い出した。「難し過ぎれば、投げ出せばいいさ」と軽い気持ちで、本書を手に取り、ページに目を這わせ始めた。

勿論、読みとりはできないが、対談形式であまり難解な言葉を弄ばない文章なのが幸いして、大雑把には言わんとすることは分かったので、眺めるのを止めようという気にはならなかった。ページは快調に跳んでいく。「まあ、これもありかな」と思った中盤、急ブレーキがかかった。

「第3章 日本の政治を徹底批判する」で、ちょうど10年前の安倍晋三ら、40代の戦争を知らないタカ派連中の増殖に警鐘がならされているのだが、その将来への危惧のことごとくが正鵠を射ているのだ。「この本は、正真正銘の予言の書だ。今世に出ている様々な論評よりも、10年前の本書にすでに現在の全てが語られている。」ある意味、佐高信と姜尚中の世の中を観る目の確かさが10年を経て証明されたことになる。ならば、今後の日本の歩みも彼らの言論に注目することでかなり正確に見通すことができるだろう。

まあ、今の政治家のどうしようもない劣化と野党勢力の分裂・烏合の衆化が、ファシズム(全体主義)の好餌であることを知れば、10年後の日本が破滅に向かって邁進し、すでに多くの命が戦場で落とされ、その命の一つ一つがくさびとなって、元に戻れない破滅へのカウントダウンに入っているだろうことは容易に想像できる。

本書の中には、時代の節目をきれいに腑分けして見せ、気の利いた警句的言葉や指摘が満載されている。ページの耳を折り、鉛筆で線を引いたところもたくさんある。

・佐高:あの手のは慶應に多いですよ。坊ちゃんタカというか、安全圏にいながらすさまじいタカになっていくタイプですね。
 姜:僕は自民党の二世議員と話す機会が多いんですけれども、すごく危うい気がして仕方がないんです。略。世代交代を一挙に進めようとしている自民党の若手と言われる四〇代の人たちが、かなりはしゃいでいますね。その一つのコアに安倍さんがいて、一〇年後の日本の政治を思うと、不安です。彼らには戦後感覚というものがほとんどなくて、自分たちの単純極まりないタカ派的な発想を斬新だと勝手に思い込んでいるんですね。147~148ページ

・姜:「けしからん」と言っていては、外交は成り立たないわけです。しかし、そういう単純な政治意識におもねる、あるいは支持する一部のメディアや世論がある。一〇年後、今の若い人たちは日本の政治の中で、いったいどんなリーダーを仰ぐことになるのだろうと考えると悪寒が走ります。157ページ

・佐高:私は、自民党の総裁選に出た高村という人を見ると、「あ、この人原理研だ」と思うわけです。
 姜:彼はそうですか?
 佐高:統一教会に近い人です。161ページ

・姜:自殺者は、小泉になってから、むしろ増えている。そのうちのかなりの数が、明らかに経済的事案でしょう。人ひとりが自殺するということは、いちばん近い近親者、親や子どもや奥さんを入れると、最低五名から八名が直接的な影響を受けるわけですね。三万数千の自殺者に加えて、自殺未遂者は一〇倍いるということですから三〇万。三〇万に八をかければ二百四○万、それだけでも大変な数ですよね。そういう社会状況の中で、「改革」「痛みを伴う」と、啖呵を切っていられるということは、尋常じゃない。168ページ
   *今も同じか、それ以上に最悪だ。三万人を切った自殺者は、消費税8%によって必ず再度三万人を突破するだろう。

他にもいっぱいあるが、すでに眠剤とフォア・ローゼズを飲んでしまった。そろそろ寝ることにする。

目次: 語り下ろし 『愛国の作法』をめぐって/第1章 日本思想論/第2章 日本文学とアジア/第3章 日本の政治を徹底批判する/第4章 国を超える新たな「公」へー公開討議より/終章 精神の鎖国主義をどう脱却するか

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