もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

96冊目 柏木哲夫「死を看取る医学 ホスピスの現場から」(NHK人間大学1月-3月;1997) 評価3

2011年12月10日 04時56分02秒 | 一日一冊読書開始
12月9日(金):

131ページ  所要時間3:00:

ほぼ15年前の本。著者57歳、ホスピスで2000名を超える患者を看取ってきた大阪大学人間科学部教授、淀川キリスト教病院名誉ホスピス長。     

前年の1996年7月、第1回の日本緩和医療学会が札幌で開かれた。欧米に比べて、遅きに失した感のある「ターミナルケア」「死を看取る医学」のはじまりを告げる啓蒙書。     

読後感は、創成期の前向きな高揚感は伝わるが、総花的で、いまひとつテーマ立ても、未熟で焦点が定まっていない。まだ15年しか経っていないのに、現在のホスピス、緩和ケア医療に対する意識に比べると随分と遅れた印象を受ける。私の感じ方が間違っているのか、やはり15年で大きく状況が変わったのかは、わからない。

ただ、強く感じたことは、ホスピスでは、痛みを緩和すること(90%の痛みはなくせる!)は当然として、死と向き合う患者の精神面のケアが非常に重要である。死についての見方・考え方、死生観、人間論といった哲学的部分による裏打ちが必要になる。そういう意味で、ホスピスを考えることは、どう生きるかも含めた哲学的考察の非常に良い題材になる。    

目次:1 現代の死/2 病院死の問題/3 生命の質と末期医療/4 ホスピスの働き/5 緩和医療/6 安楽死と尊厳死/7 癌患者の心に聴く/8 癌告知 /9 癌と心のもち方/10 ターミナルケアとユーモア/11 死別の悲しみ/12 老いと死     

「なぜ、私が?」(「Why me?」)/緩和医療は消極的なニュアンスで受け取られがちだが、非常に積極的な医療です。「積極性が苦痛の緩和に向かうという点で、一般の病棟での医療とは違うということです」。

「尊厳死というのは、自己決定権という点では大きなプラス面がありますが、人間が持っている命の大切さ、それはどのような状態になってもその命という神聖なものであり、それを不自然に延ばしたり意識的に短くしたり、人工的に扱うのはよくないのだ、という考え方をしっかりともっておく必要があるのではないか」

「アメリカでは100%近い人が告知を受けています。しかし、日本ではまだ20%ぐらい(1997年当時)」。略。これから先、日本でも告知が重要視されていく。

癌告知の研究(E・キュブラー・ロス)=「否認」→「怒り」→「取り引き」→「抑うつ」→「受容」、日本の場合、告知率がはるかに低いので、反応はもっと複雑になる。特に最後が「受容」か「あきらめ」かは、似ていて全く違う。

死に対する受容能力の高い人=自律的な生き方(しっかりした人)、恒常性が高い(落ち着いた人)、覚悟ができる(がまん強い人)、自分を見つめる(冷静な人)、継続的自己同一性(過去・現在・未来の時間をつなぐことができる人)、人の死を受け入れることができた人、与える人生を送ってきた人、信仰を持っている人である。   



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