もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

7 069 松本修「全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路」(太田出版:1993)感想 特5

2018年06月14日 02時08分11秒 | 一日一冊読書開始
6月13日(水):  

446ページ      所要時間2:45      蔵書

著者44歳(1949生まれ)。滋賀県に生れる。京都大学法学部卒業後、朝日放送入社。テレビ制作部で、バラエティー番組の制作に携わる。「霊感ヤマカン第六感」「ラブアタック!」「わいわいサタデー」「合コン!合宿!解放区」「食卓の大冒険」等の人気番組を企画・制作する。1991(平成3)年「探偵!ナイトスクープ」の「全国アホ・バカ分布図の完成」編で、日本民間放送連盟賞テレビ娯楽部門最優秀賞、ギャラクシー賞選奨、ATP賞グランプリを受賞。2010年より、大阪芸術大学教授を兼務。主な著書に『全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路―』『探偵!ナイトスクープアホの遺伝子』などがある。

25年前に買って読んだ本を久しぶりに手に取って読んだ。1ページ15秒を原則にして眺め読みした。探偵ナイトスクープで取り上げられて、ギャラクシー賞をとった題材の裏を紹介する内容だが、当時ものすごい話題の書として売れていた本。俺もその時に買って読んだ。

面白いと思える人間には途方もなく、果てしもなく面白く読めるスリリングな内容を持つ<探究の書>である。

探偵ナイトスクーププロデューサーの著者が、「私は大阪生まれ、妻は東京出身です。二人で言い争うとき、私は『アホ』といい、妻は『バカ』と言います。耳慣れない言葉で、お互い大変に傷つきます。ふと東京と大阪の間に、『アホ』と『バカ』の境界線があるのではないか? と気づきました。地味な調査で申しわけありませんが、東京からどこまでが『バカ』で、どこからが『アホ』なのか、調べてください」という依頼をもとに番組を作り、中途半端に終わったところから再度の本格的調査を始める形で壮大な知の旅路をが展開されていく。

テレビ局の総力を挙げた全国の自治体をしらみつぶしにしたアンケート調査もさることながら、それを束ねる著者自身の常人とは思えないほどで学者顔負けの広範で徹底的な文献調査に圧倒された。

柳田国男が「蝸牛考」で展開した「全国の方言は元々の京言葉が京都を支点にコンパスを回したように地方へ広がったものである」という“方言周圏論”を、柳田自身が最後まで自信を持ち切れなかった説だったが、全国のアホ・バカ言語を見事に分析・分類・解決し切った痛快な内容である。方言周圏論によれば、アホは、バカよりも新しい言葉である。また、地方に全くもって多様に存在するアホ・バカ言語もすべて京都・上方に発するものである。

著者は、方言周圏論の証明にとどまらず、アホとバカの語源についても考察を深めていき、日本語にはB音で始まる音がないこと、また婉曲でなく直接的に相手を貶める言葉がないことを踏まえて言葉の森の奥へと分け入る。途中、道を見失いそうになりながらも、白楽天の詩の中に「馬鹿の宅」という言葉を発見し、彼の詩文が平安貴族の基礎教養であることに思い当たり、これをバカの発祥と断定する。ちなみに、鹿を指して馬だという故事はバカとは無関係である。さらに、最古のアホの使用例とされる鴨長明『発心集』の後世の人間による捏造を見破り、阿呆の阿は特に意味がなく、呆が「ぼんやり、間の抜けていること。中国の江南から日明貿易で五山禅僧を介して伝来したことを突き止める。

超速読だったが、梗概は25年前の探偵ナイトスクープと読書によってわかっていたので途中で迷子になることなく最後まで眺め読みができた。たくさんの付箋もできて思った以上に早く読み通せたので望外で痛快な読書になった。

探偵ナイトスクープのスタッフとして大嫌いな百田尚樹がよく登場するが、この本の中での百田のキャラは悪くない。

【内容紹介】ふとした疑問をきっかけに驚異の高視聴率番組『探偵!ナイトスクープ』がいどんだ「アホ・バカ語分布」の謎。全国市町村をも巻き込んだ大調査は、ついには学会をもゆるがす数々の大発見へとたどりついた。「バカ」の語源発見ほか、知的興奮溢れるその冒険のすべてを、番組プロデューサー自らが書綴ったドキュメンタリー風ノンフィクション。/
アホとバカの境界は? 素朴な疑問に端を発し、全国市町村への取材、古辞書類の渉猟を経て方言地図完成までを描くドキュメント。 /大阪はアホ。東京はバカ。境界線はどこ?人気TV番組に寄せられた小さな疑問が全ての発端だった。調査を経るうち、境界という問題を越え、全国のアホ・バカ表現の分布調査という壮大な試みへと発展。各市町村へのローラー作戦、古辞書類の渉猟、そして思索。ホンズナス、ホウケ、ダラ、ダボ…。それらの分布は一体何を意味するのか。知的興奮に満ちた傑作ノンフィクション。

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