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得難い落語の目と耳

2014-07-31 11:35:32 | 落語
▼核心をつく指摘
 人のあら捜しが得意な人は多い。ヨイショが上手な人も多い。が、辛口で、的確な指摘をしてくれる人は、そうそういない。ところが、いた。落語会から一夜明けて感想を聞いた。電話で講評を聞きながら唸った。届く言葉が核心をついていたからだ。「苦い薬は身体にいい」って、昔っから、そう言いますな。

 この人は相当、落語を聴き込んでいる。でないと、あれほど見事に課題を指摘出来ない。夕刊紙面の文化欄に、“営業用”の批評を綴る昨今の評論家より、数段シャープな矢を放つ。今回の落語会に出演した5人について感想を聞いた。

▼新境地を開く気構えで
 最初はDについて。落語は無難に器用にまとめている。ただ、人間国宝の桂米朝が以前、こんなことを言っていた。「女性が落語をやるということは、自分で新たな新境地を開くというぐらいの気持ちでないと、とても高座には上がれない」。

 Eについて。何を言ってるのかわからない。客席が静かだった。この点に、本人が気付かないといけない。話が煮詰まっていない、ということでしょう。次がF。言葉が立ってる。オン(音)が明瞭。ただ、最後のオチに工夫が足りない。噺をそこへ持って行く盛り上げが大切。

▼必ず決勝でAに入る
 Gの番だ。この噺は、本来、もっと笑いが取れる噺。場慣れしているので落ち着いて演じているが、今回は“流している”感じがした。この人、もっと本気になってやれば、ABCのランクだと、必ず決勝でAに入る人だ。

 最後がH。けっこうでした。相当、稽古を重ねたのが分かる。(お客が)聴いてる空気がでてた。そしてチラッ、チラッと文楽が出る。(噺の)ワンフレーズが文楽のオン(音)なんです。口調なんです。残念なのは最後のところ。カミシモ(仕草)がテレコ(間違う)になっていた。

▼「言葉が立つ」の表現
 以上だが、落語を聴いてる「空気がでる」だとか、「言葉が立つ」などという鋭利な言葉がよく出てくるものだと、感心した。ただ、落語に耳を傾けているだけでは、とてもそこまで及ばない。

 あたくしも落語を習って今年5月で、ちょうど5年目。少しでも落語の世界を知りたくて、寄席や独演会にも通った。落語に関する書物や江戸関連本を最初の1年間で100冊以上読んでみた。

▼得難い「目と耳」
 この中には京須偕充や興津要ら演芸評論家が書いたものもある。だが、それらのどこにも聴いてる「空気がでる」だの、「言葉が立つ」などと言う表現はない。「客が聴き入っている」「声がいい」などと、ごく普通の書き方をしている。

 しかし、そうした表現よりも「言葉が立つ」と言った方が直感的で、迫力が伝わる。聴いていた時の身体の体感が、「言葉が立つ」の表現になったのだろう。鋭い感性だ。言葉の持つ力を改めて知った。

 的確な指摘は稽古の励みになる。得難い「目と耳」を手にしたことに感謝している。


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