《乙女》→イン・ザ・ナーサリー maiden in the nursery

『悦楽はあまりに富んでいるが故に苦痛を渇望する。地獄を~不具を、一口にいえば世界を――』
あたし渇望してるの。

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non-obvious interface

2010-07-15 19:28:25 | a pandemonium
 

    非自明な界面


   нулевое

Замороженные глаза.
Плоскость отвлеченности обрабатываемая на сетчатке покрошила. Оно исчезло. Оно появлялось снова. Было повторено несколько времен.
И, оно исчезло.
Было вполне пропаданием.

凍結する眼球。
網膜で処理されたアブストラクトの平面は崩壊した。
それは消えた。
それは再度現われた。
数回繰り返された。
そして、消えた。
それは完全な消失だった。



    (一)  nympha’s dark petal


 黒の階調を敷き詰めた枯山水が四方を被覆する庵(セル)――少女はそこにいた。
 粗い分解能で対象領域を選択していた。
 欠落や欠損を自補した。点や線を自補して面を、面を補して体を、そうして膨らんだ黒の飽和した空間を汎化し、位相に見(まみ)え選択していた――。

「――有為は居丈の視界にだいたいあったの。
 ……だから……あたしには両腕と別に翼もあったのだけれど……広げたことすらなかったわ。
 だって……」
 モノローグが散逸する――その初期反射から後期残響までの僅かな時間に、彼女は自身の表象の虚空で小さな十一個の黒の偏球を並べた単純な花の形を描き、その周囲に同色の――花の五倍程の大きさの三十二の偏円を重ね、同様にその倍の大きさの六十四の偏円を重ねた漆黒の睡蓮(スノーボール)を形成した。
「……意味が……なかったから……」
 睡蓮が回転しながら庵を包括する。
「el topo(モグラ)の座臥には……」
 選択が為され、黒無垢の両翼は枷を解かれた。
 羽ばたきすると体が垂直に浮き出し、落ちるように上方へ引致され、やがて黒砂の花の粒子を貫き眩耀(げんよう)の拡散の中へ吐き出された。
 
 広げられたままの翼は障壁に全ての羽を毟られて、前膊(ぜんはく)部から肩口までの肉が削げ落ち骨格(フレーム)を露わにしている。
「………………………………」
 滑空のようなそれがもたらした一連を、彼女は自身にトランスレートし得なかった。



   (二)  ambivalent


 未知のそこは、はじめは境界なく、ひたすら散光が支配する白い光の空虚でしかなかったが、漸次に白のニュアンスが発散して行き、ある瞬間に彼女にとって未知の色の一つ『赤』が知覚されると俄に際限ない未知の色調が上書きされて空間に収束した。
 色彩の群舞は彼女に無上の興奮を与えた――が、やがて色から形が生じると、その全てが既視の相を呈し、それらデジャビュの面の各々は纏まって一つの見慣れた庵を結んだ。
 更には既知の庵に黒の彼女が在ったように、多色の「彼女」がここにもいて同じように選択している――相称な枯山水の空間――そう見えた。
 そして開世界(ここ)に対置した精細さを自補した彼女の自我は、同定の最中に、そこに在るシンメトリの「庵主(自分か何か)」の背にある翼を目の当たりにして息を飲んだ。

 遊離した色彩が刹那に連続し、影に艶を消し、影までもがそれを孕み、滑らかなグラデーションを形成して、滑らかに乖離し崩壊する――羽毛も羽も、それら全てが淀みない清雅を湛えるさま――

 体が不整に連符を刻みだした――厳(いか)めしい程の美しさに戦慄したのだ。
 同時に幾つかの感情が込み上げた。
 思考は局所解に拘束され情動に隷属し、そうして彼女の全体はその場に崩れて、ここで初めて知覚した白い光の涙を流した。

 零れ落ちる光の影の一つ一つに彼女の神を見つけた。
 無数の影が有り余る色に覆われた彼女に向けて一様に囁く――。

 嗚咽が止んだ。
 仰向けになって、しばらく色に満ちた虚空を見回した後、上体を起こして立て膝をつき、躄(いざ)りながらようやく立ち上がって、両の瞼を固く閉じ胸の前で祈るように掌を重ねた。
「――見慣れた色……」
 彼女の閉じた眼界に果てない闇が張り付いて、光のないそこと同色の不明瞭なチューブが浮かび上がってきた。
 チューブは交わって片方の口がその内側から外を覗くと、そこから裏返ってチューブの縁同士で繋がり、継ぎ目のない異形のボトルになった――



    (三)  concerto for 2 violins


 透き通る両翼をたたむと、彼女はボトルの外側に剥き出しになっているそれの内側に吸い込まれた。

「……あなた……清らかなあなた……とりどりの砂で拵えた川の流れ……。
 あたし見たの……色の波を照り返す砂の水面に、その微かな光彩の振動に飲まれて行く華奢な足を……それに見入って佇むあなたの後ろ姿を……あなたの――」

 ボトルはクローズアップすると闇と差異のない黒い塊で、恣意を揮毫(きごう)した唯一の書画の縮れた線を一本にして丸めた、結び目も縺れもない、そこに稠密な麺状のフラクタル――アール・ブリュット(生の芸術)――か、或いはキリル文字で間隙なく埋め尽くされ飽和した――ルースキイ・アヴァンガールトな――黒の方形の集合で、一口に言えば前衛芸術様の一つの塊だった。
 そしてavant-gardeな三次元の張りぼてのそこからは、間もなく何も彼もが零れて、その中身は眼界の無辺際な真空(ヴォイド)の中を、垂直に、時空ごと、一纏まりに落下した――。

 彼女と「彼女」の象徴が、二つの偏円を重ねたベン図の軌道上を、その重なりを中心にして互いに漂っているのが彼方に見える。夥しい数のあらゆる色の光が煌めきの渦になって、それらを取り巻き流れていく。

 零れ落ちたサブセットは、近接した無数の錯雑な波とスクリームのようなその残響に貫かれ、侵蝕されながら――無調な真空の調べの場に、変わることのない表象に、原初の闇に、まるで無為のような漆黒の中央(まんなか)に――幾度か黒の光を明滅させると、無窮な闇黒の集合に溶けて見えなくなった。








次回へ

[BGM]
 introduction
  news from nowhere / cabaret voltaire
 chapter
  concerto for 2 violins / johann sebastian bach
� vivace
� largo ma non tanto
� allegro




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コメント (4)

ブリコラージュの遠点

2009-11-26 03:39:59 | a pandemonium
 

   (一) 濫觴


 ――天地未だ剖(わか)れず、陰陽(めを)分かれざりしとき渾沌(まろか)れたること鶏子の如くして、溟(くぐも)り牙(きざし)を含めり――

 ――開闢(あめつちひら)く――
 ――渾沌を掻き回す矛――
 ――産まれる国――



   (二) entropy coding


  わたしは昼夜も知らず沼のほとりを歩く「おれ」なのだろう。スマトラの勿忘草の花を探しに、沼に飛び込む「おれ」なのだろう。然して、そのまま沼底で骸になって、己の口から伸びた睡蓮を仰ぎ見る「おれ」なのだろう。



   (三) iterate


 場に粒子が足掻いている。愚昧が平面に埋もれている。無限の平面に覆われて、無限の誤謬に埋もれている。
 質量にもがいている。意味の界に足掻いている。
 定量化している。象形している。指事している。
 神話に埋もれている。神話が埋もれている。現象的意識に埋もれている。
 集合を分解している。合成している。並列性を抽出している。分解定理で断章を置換している。エンコードしている。デコードしている。
 平面で単振動している。素数に弄ばれている。粒子の場で隔たりが満たされている。無限の平面の内で溺れている。
 愚昧が意味を欲している。縫い目を探している。綻びを探している。
 欲の具象に覆われている。欲の平面に溺れている。
 平行の交差を目前に欲している。涅槃を欲している。生きながら欲している。侵しながら欲している。妄執している。



   (四) 東雲


 都上がりの歌を歌う――潰れた喉で。
 無垢の声を聞く――潰れた耳で。
 気息する――潰れた鼻で。
 離散の光陰を連ねる主観。
 断片が絡み合い、縺れるトレイン。
 欠損したピクセルに無反応の知覚……静的な環境に揺らぐ知覚……。
 やがて、潰れた目を伏せる……夜の終わりの目映さに。



   (五) 平明


 朝を待てず、そこにある光に身を投げて砕けた。暗い空か海に離散した断片は嘗ての鳥、それを成した血肉や羽根。
 直に死ぬ程焦がれた朝が曝す――鳥を屠(ほふ)った灯台の硝子に点在する細(ささ)やかな赤い水玉。
 元の意味を失った部分。嘗ての全体の欠片。嘗ての意味の欠片。嘗ての連続性から解き放たれた、今は黒味がかる赤の水玉。



   (六) 無真唯刻主観結主観


 神さびる面。神さびる体。神さびる秩序。そして、その閉世界の終わりか始まり――。
 神さびる世界、そこにある自我に、そこにある顕在か潜在の平面に……無意味の様な多様体の局所で……。
 そして、その開世界の始まりか終わり、その世界の終わりか始まりに……無意味の様な多様体の局所で、非平衡の秩序が神さびる――。



   (七) 狂歌


 漆地に砂子擦(なす)った蒔絵散らかり、かかる月の下に虫時雨狂うありふれた夜――。ひとしきりして時雨止み、索漠の領。ありふれた静寂(しじま)で、月影に俯(うつむ)く秋を待たずに枯れた花。
 静寂が夜を結ぶ――綻び、解け、黄身の共(むた)に――ありふれたこの夜が時の破線に斑消(むらぎ)え白け落ちる。
 暁雲――水鏡に今は月も無く、朧々の雲間には浅葱の綾織り、小躍る飛沫は輝線の時雨。
 東雲――夜の終わり。無明を差し招く霧深き朝(あした)――三界に百代ありふれる終わりか始まり。
 虚ろが早天に煌めくと、現の霞に溶ける。光は野(げかい)に散らかる。

 散光――。
 ――朽ち葉、枯れ花の陰にある生への逡巡……索漠の朝に露命愁(うれ)える生への逡巡……。
 愁も歓も、その光彩に滲む――。
 ――だけれど、わたしは生きる他ない。
 やがて野に光明が充ちる。
 ――生きてヒルコ姫に祈る他にない。
 やがて充ち満ちて野を暴く。
 ――あなた。
 露命の明滅――
 ――あなた……。
 悲喜や貴賤――
 ――あなたはいないのに……。
 わたしを暴く。
 ――唯生きるわたし……。

 ステレオタイプなモノローグの終わり――

 …………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。

 ありふれた沈黙を裂いた翅音――

   洗ひ髪あしたの原に立つをとめ

「……虻……の翅音…………」

   女郎花生(さ)く

「………………門の向こうで聞こえるような………………………………………………………………」

   黙然の原

 ……ブウウウ…………ンン…………ンンン…………。 



   (八) unbroken circle


 夜の終わりにあなたが触れたわたしの頬。ホメオモルフィズムを思うわたしの頬。わたしのように美しいあなたとあなたのように美しい――滂沱(ぼうだ)に濡れるわたしの頬。


 
   (九) ou est ma chatte?


 現実に随行する。わたしは随行する。
 言葉は随行する。わたしに随行する。

 



 
 

次回へ

 [BGM]
① little fluffy clouds / the orb
② l'invitation au voyage / henri duparc
③ anagrama / sonic youth
④ nabitte / cluster
⑤ higher than the sun / primal scream
⑥ spiral static / muse
⑦ heaven knows i'm miserable now / the smiths
⑧ may the circle be unbroken / spacemen 3
⑨ train of thoughts / quantec
  train of thoughts (elliott dodge remix
) / quantec



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an account of my hut

2009-07-10 04:24:19 | a pandemonium
 


    一  chain (waking)


 切断(log out)か接続(log in)――チョコレートの香水を抱きて、ブランケットの墓の下に溺る。
 切断(closed)か接続(open)――訪るる覚醒――光(かげ)滲む……。

 解像度増す視覚対象……現実(うつつ)……
 視覚風景……意味……断片……現実……
 ……忌(ゆゆ)しき現実……

 再び……墓にかづき思う……何も思わざるを……
 かづく……深くかづき考う……何も考えざるを……
 結果、紛い移ろい果つ――夥(こちた)しマルコフ性の断章。

 無脳のごとく垂れ流すパターンを、現実の縁(エッジ)が切り裂く。うち出でし不連続の境界――パターン整合せざる其等の切断面より覗く腸(はらわた)や滴(しほた)る体液、延(ひ)いては、其を成す六十兆に亘る最小単位までの、微細なる膜覆う表裏の面(おもて)――其れ等は多様の今と整合したりき。

 切断(unconnected)か接続(connected)。
 カーテンの隙間(ひま)より洩るる光筋に舞う埃。其の帯中にしか見えざる――風景のノイズが、実際には辺(きわ)一面其処彼処に乱舞したり……
 ――カーテンを開らき、窓を開(あ)く。
 鈍色が裂けて、光溢れ出す大仰なる朝(あした)の始まり。其の匂い。朝食の支度の匂い。わたりのベーカリーのパンを焼く匂い。
 雨後の湿気を孕みし風が吾に纏わりつく。
 入れ替わりに部屋より抜くる甘き匂いが告げき。汝も又、此処に散る埃のごときものの集(すだ)き――と。

 雀の声。鳩の奏(あそ)ぶおかしな歌。
 振り返らば、もう其処に塵は見えず。

 切断か接続か――。
 記憶の実行より消去までの刹那の常世――散逸の伴わざる可逆な時間が、不可逆に流る。
 散逸と共に今が時を敷衍す。



    二  connected (complex helix)


 虚数が見せたり。
 虚数が此の世界を見せたり。

 フィックスド・ポーン。鏡の彼方と此方に、前後反転の――i(虚)か1(実)。
 実平面に描出しし虚空間の棋譜の儘に――デュアルの――クイーンのポーンが虚平面の盤上をプロモーションに向かう道程。
 道すがら、大口のねこまが笑いて言う。
「此処にては皆、大脳辺縁系(おつむ)が暴走したるぞ――」
 尻尾より消え行くねこまと口上。
「ウヒヒ……其は無論、汝も吾も――」
 emptyの敷き詰めの中に、にやけ口のみが笑いたり……ねこまそのものは疾うに――げに存在せざるjamのべたつく甘き匂いに塗れし「今」に――消え失せしかど……。
 
 ……暴走おつむ……
 ……汝も……って……?
 ……超(いと)なめき奴!!

 歪む詰めチェスの駒の際にて、今音も無く三角が転がりたり――。



    三  euclidean neighborhoods (when i dreamed of confusing me)


 事象が錯綜して新しき事象が生起す……時が歪むる次元の描像を――無限の視点の断片なるその正面の一つを……甘き匂いが辺縁系に焼き付く。事物の表面――意味の欠片。
 辺縁系に焼き付けらるる胞。
 大きなり――なりにし――吾と小さき――なりにし――部屋。
 キノコを食しても戻れざるは、吾が――不可逆性の連続量――時なれば。

 匂いが辺縁系に焼き付けし縮約の胞。
 個別のオブジェクト。個別の座標系。リライトに携わる規則と頸木(プリンシプル)。

 ……面。
 ……歪みし面。
 ……星形を囲いき……内在の庵に……星形を……多様体に……。



    四  couldn't put egg again (paranoid)


 ――何故此処に一人にて居るや? 

 厚みのなき不安定なる塀の上にて、卵に張り付く大顔が、「名前は吾の影を意味す」と言う。恣意的な翻訳と意味の選択――百出せざる間に(何故か)吾が打ち負かされけん誕生日、非誕生日の議論。

 ――此処には他に誰もあらねば。

 恣意的な翻訳と恣意的な意味の選択、其の使用――其れ以上にてもなく其れ以下にてもなく。
 卵の言葉、過剰なる意味。――其の“意味の仕事量”の超過分を、品詞群が回収に来と大顔の言う。

 ……暴走おつむ……例外なく……
 ……辟易しき……超辟易しきっ……!
 ……此処にも、卵にも……

 用は無し……既にジャバウォッキーは翻訳されき……恣意的に。

「ごきげんよう」
 一礼して足早に歩み始むと、とばかりして何かの落ちて拉ぐる音。

 他に誰もあらねば――



    五  unconnected (waking)


 ――ノイズ。

 溶明に目覚めれば甘い匂い。

 ――ホワイトノイズ。

 頬を枕が、体をブランケットが、夢を匂いがなぞる。

 ――次第に強まる雨音。

 鴨長明を読んだ月暈の夜に見た夢はルイス・キャロル。

 ――雨音。漸高の雨音。

 月白頃は――暴走おつむ。

 ――雨音。雨音。無音(unconnected)。雨音(connected)。

 生理前の非誕生日に見た夢。

 ――雨音――――無音(connected)――――雨音(unconnected)――――。

 ザ――ザ――。………………。ザ――――――。

 ――ノイズ――瞬きに消え去り――瞬きに始まる――ぶつ切りのノイズ――

 …………ザ――――――――――

 ――刹那の常世――瞬きに消え去る全て――

 ……ザ………………



    六  my hut


  my cell.
  height,
  breadth,
  depth and time.

  cell.
  the one that exists there.
.



 
 
 


次回へ

 [BGM]
① rush / depeche mode
② never let me down again / depeche mode
③ don't give it up / siobhan donaghy
④ bad penny / big black
⑤ zoo-music girl / the birthday party
⑥ numberless land / ill bone



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scarlet

2009-04-30 22:58:38 | a pandemonium
   (一)  Actuality


  漸層の地平
  非人称の記憶
  翻訳されて尚曖昧な

  ――色

  富める者の娘
  貧しい者の娘

  二つの礼拝堂で司祭が説くの
  主の御前で皆平等なんですって

  ――色

  曖昧な記憶
  カフカのように取り留めのない

  ――色

  変数

  共鳴
  同定

  ――定量化して

  逆巻けば重力が膝をつかせて
  身体中を舐める

  ――業を

  芽生えた浅い幼いあたしを辱める

  ――分割して中央(まんなか)を取り除いて

  穢れの杯
  三月のウサギ
  世界の表面で

  ――無限に分割して

  弱者に救い

  あるわけない
  捕食に心が
  
  ――無限に中央を取り除いて

  汚れた皿の上で
  堆積した骸の上で
  業の漸層の地平面で
  不可分なものに線を引いて

  ――残る無限小の業の端々

  浄化不能の既在に――
  曖昧の記憶に――

  脈動と交錯して断続に聞こえてるの
  フィリップ・グラスの『in the penal colony』

  ――笑えるでしょう?


   (二)  paradise lost


 既が滾り滴り
 引き攣り膨らむ循環論法の虚空
 その今にいつか現れる
 絶対が

 無限公理の柩
 仮象の墓

 粟立が
 畏怖が
 叫喚が

 未来
 その柩に


   (三)  objectum


 陽が滲んでいた。
 視線は空を向いてた。
 横たわったまま空を撫でていた。
 生きていた。

 影が滲んでいた。
 それは一心(ひたぶる)に取り囲んで、容赦なく噛みついた。
 枝のように足が折られては別々に運ばれていた。
 粗雑に千切られてよたよた運ばれていた。

 時が滲んでいた。
 笑うような声を聞いていた。
 泣くような声を聞いていた。
 まだ生きていた。

 動いていた。
 ゆるゆる蠕動していた。
 色(におい)が滲んでいた。

 光(かげ)が滲んでいた。
 闇が滲んでいた。

 遠く祭り囃子を聞いていた。
 咽び泣いていた。

 皆、境界なく滲んでいた。

 生きていた。

 羽もないのに飛んでいた。
 仰向けに飛んでいた。
 視線はやはり空に向いていた。
 わかっていた。

 御輿は疾うに朽ちていた。
 月が滲んでいた。

 ――気づけば横たわって空を見ている。
 ――起き上がろうとして空を撫でている。
 ――何も彼も愛おしくなって咽び泣いている。

 ――祭り囃子をすぐ側に聞いている。

 
   (四)  cluster


 非交錯。
 非周期。
 共振。
 軌道。
 魂。





 

次回へ

 [BGM]
① only shallow / my bloody valentine
② crisis / jaco pastorius
③ air eyes (mira calix remix) / seefeel
④ kid for today (stereolab remix) / boards of canada



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in the womb

2009-02-28 12:48:29 | a pandemonium
 

   (一)  hollow echoes


 仮(あからさま)に……
 己に律性を持つさしし箍様の麗しき世が在りて……
 其が有す――視うる、視えざる、形定か、其の定かにはなあり物や、察し、測ること叶わざる他の某か……単、群、其等が多階層の造りの中身、外見(けしき)のさながら――種々の有限に、せん妄の見すめる……紛い、真――其の離接、或いは合接――なる無限が撞着と内在したり……而して其は連なる儘に、くにゃくにゃと――丸形、三角形、矩形、伸び、縮し、花の影と込み入りて――位相幾何様の変容にうちいづ。
 なるとしせば……敷き詰められし幻姿――現象は主たる単位胞の知性ならんや……事象は客(まろうど)の果てならんや……其処に論理と実は連ならんや……。


   (二)  incapable girl


 客一人になりしバスの車中にて露伴を読みたる。
 すずろに見し車窓に映る戯奴(あたし)と街の夜の其処彼処――灯火に咲く花のいろいろ。
 信ぜられざる際の精緻なる影に、皆嘘(ひがごと)にあらずやと……彼此思いたるは柔らかなるげに包(くる)まり見たる浅き夢かも――

 矩形(まど)の中に移らん影。
 其処にては戯奴のみが同じに――戯奴を除きしせちなる物達や場所――そうではなしめる――その他が、うち出でて、消え去にき……見たるのみにて留むる事のせられざる悲喜の欠片が。
 
 唯、花は世は窮無く麗しく。
 故、得体知るはかしこし。
 iPodを供として、今を唯甘受するのみ――無能なれば。


   (三)  freakout


 愛神の園、悦楽の庭。
 君は神の矢に胸を射抜かれて、未だ若くこわき――泉の底の吾に恋す。

 吾に詩を。
 君と詩を。

 老醜は仄めかし若き恋を妨ぐ――
 柔らかなる垣が抱き寄す。

 接吻をして、引き裂かれて――
 柔らかなる棘の垣が抱き竦む。

 吾は幽閉に秘さる。
 君はまた蹂躙さるれど――さりとて猶吾を求むるぞかし。

 げにそに麗しき物語ならん……

 吾に詩を。
 君に薔薇を。

 げにゆゆしき程に麗しき物語。
 久遠の愛園にて、垣に抱かれし時は満ち足りて……圧壊するぞ――
 花と夢(こい)とが。






次回へ

 [BGM]
① 偏食 / petrolz
② hudson river high / black science orchestra
③ steal softly thru snow / captain beefheart & his magic band



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happy ending in ghost fields

2009-02-06 02:57:45 | stereo typed
 

   (一)  epilogue 


 高次元データを次元縮約し写像した一つの可能世界。
 錯視の空間に可視化されたノイズ。

 ――僕或いは君。
 ……無辺際の……幽玄の器の中で恋をしたんだ……多分……
 おかしな恋を……。



   (二)  7 november 2008 ‐ bootstrap ‐

 
 柘榴(ざくろ)を食べたの――。

 耳を疑った、が……下校途中に立ち寄った書店で、目当ての書籍を物色中の僕に――同じ高校の制服を着た――恐らく初対面である筈のその娘は……唐突に、そして確かに僕に向かってそう言ったんだ……。
「え? ああ……柘榴を……君が? は……はは……は……」
 ぎこちない微笑みと言葉を返す――反射的に。
 状況が掴めず、薄気味悪かったのだが……その……何しろその娘……可愛かったから。

「うん。……あなたの柘榴だよ……。欲しかったんでしょ? ペルセフォネかコレーか……どちらだとしても、つまり乙女――それも、あなたのように考える――無垢の女の子を。
 ……あたしね……七ヶ月前生まれたの……真っ白な部屋に……今のこの姿で。
 部屋の中にはベッドとPCと、あたし……それと甘い匂いがしてた。
 ベッドに寝そべった儘匂いを辿ると、枕元に十二粒の柘榴の実があって……眺めてたら空腹なのに気付いたわ……一粒食べてみたら美味しくって……四粒目を食べ終えた時……わかったの……あなたがあたしを生成したんだって。
 だから、あたしはあなたの思考の分散を描出して待ってた……そして、ほら……冬が来る前にあなたはあたしを見つけたわ……」
 そう言うと彼女は後ろ手を組み、首を傾げて、可愛く……本当に可愛く笑ったんだ……。

 ああ……笑顔が……いい……モロ、タイプだ……。
 ……けど、彼女……言ってる事が相当ヤバいんだよね……
 ……からかわれてる……罰ゲームか何かでターゲットが僕とか……そんな所か……。
 何にしても、僕がハデスで彼女がコレーって設定なんだろうが――背景が逸脱していてよくわからない……それとコンテクストが……かなり変だ……大体、この状況だと僕の方が見つけられた体ではないか……となると、やはり電波か不思議系の類……という線が――。
 ……まあ別にいいか……暇潰しの玩具な僕でも、電波な娘でも。こんな可愛い女子と絡める事希有なんだから――何なら彼女の奇異な発言に関しては、言語の離散性に於ける欠陥の所為とかにして目を瞑ったっていい……。

 ティーンエイジャーの僕をエロスの矢が射抜く事など……実際、容易い……
 即ち、ニューサの野原ならぬ、ここ中規模書店内に於けるハデスとコレーとの邂逅(めぐりあい)に、始まるかどうかも知れないラブコメ的ストリームの系統樹を、ほとんどデータもないこの時点でオーバークロック気味に夢想していたんだ僕は……美少女に声を掛けられ、もうすっかり浮かれてた……。

「僕が君を見つけたの? 君が僕を見つけたんじゃなくて? それに……第一僕は黒馬に乗ってはいな――」
 言葉を遮って、彼女は上目遣いに「これ……」と言うなり――やさしく白き手をのべて――僕の手を取って握らせたんだ……薄紅の秋の実を。



   (三)  6 april 2008 ‐ entanglement ① ‐


 Everyone was lost in our houses....you were lost in our world
 Shattered fragments of the code

 You hear laughter
 Mixes and tangles....fragments of the ghost
 Shadow comes to say again
 This is result you know had to come

 ....you will say

 “wovon man nicht sprechen kann,
 darueber man schweigen”

 at that time, space will be filled with laughter
 and, it finally overflows



   (四)  XX april 20XX ‐ subjectum ‐


 満開の桜の下に彼女は消失し、そして虚実の連続は絶たれた。
 安吾の描いた下衆な女の最期のように……花弁になって消え失せたんだ。
「現実に……日常に回帰する……それだけの事……」
 振り切るように桜に背を向けた――刹那、世界はアンダークロッキングし、遂には静止して真っ暗になった。……混濁が起こって……僕はその場に昏倒した……らしい……。

 ――それから数日が経過し、昏睡から覚醒した僕と日常は以前の儘に帰した。

 何時も朝は登校時間ギリギリまで寝て、慌てて身支度するんだ。進級後の登校初日だろうが、それは変わらない。
 クリーニングされた制服に袖を通す――スカートを穿く……あ、あれっ?……僕、女の子だ……

 喚起――

 鏡に映る僕は……ああ……やはり彼女だ……
 ……僕は君……
 込み上げて零れた雫は、鏡の中に見当たらなかった。

 発露――

 君の事、本当に好きになってた……鏡の中の君を見てるだけで……満たされて行く……この途方もない多幸感……何なんだ、僕は一体……自分に恋してたのか……交錯……主客の……

 フォトフレームの中に見覚えのある顔が君と笑っている。
 ……あれは……僕の……父だ……何で……
 ……いや……君の……父親……あれは……僕だ……
 ……僕の……天使……何よりも大切な……君……
 ……だから僕に……至幸が溢れる……君の無事を知って……

 ――ああ……違う。そうじゃない。

 いなかったんだ……最初から僕なんてものは……
 君の中のアニムスか……多元の草稿の何れか……
 ……それらに連座するゴーストなんだ……
 ……日常に帰ったのは君だ……そして君こそがハデスだった――君のような……君の父親のような僕を――君が欲した――コンフィグしたんだ……


 コメディの起点か終点か。ノイズが解かれ崩壊を始めた「僕」全ては、濁り無く透き通る不可視の花弁になって、決して重なり合わず、散り散りに、無数のタスクと消えて行く。ただ、それを観測し得る者など、愛する君の世には存在する筈もなかったが。


 
   (五)  node of mandragora 


 かたみに及びて紛う力の
 波及し其は遠く離(か)れて
 尚間にうたて振る舞う

 創発は連綿として
 仮初めの普遍が与(むた)

 吾(あ)が再帰が吾を生成(な)せば
 同刻に又うち出ずる愛(かな)し君

 無秩序が君をあそぶ

 〈四.六六九二零一六零九零〉
 〈間歇性〉

 密(みそ)かに秩序(きみ)を



   (六)  7 april 2008 ‐ entanglement ② ‐


 4月6日午後6時9分(平成20年)――
 江東区東雲の大型商業施設敷地内の歩道に、操作を誤った普通乗用車が乗り上げ、男性1名女性6名を撥ねる人身事故が発生した。
 死者0名、重傷者9名(加害車両内含む)――七日午前0時現在、被害者の内男女二名が予断を許さぬ重篤にある。


 
   (七)  redundancy bit 


「こ……これって林檎……だよね……」
 脈拍が加速する。
 薄紅の実を握らせた柔らかな白い手は、未だ僕の手に触れた儘……

「……ねぇ」
「うわっ……な、何?」
「ちゃんと見てよ」
 彼女を見た……睨んでる……林檎を指差して。
 視線を林檎に向けると文字が記されている。これは……URL……じゃないか。
「……なんで林檎にUR……あ……」
 僕は……そのアドレスを知っている……
 そう……あなたはあたしを見付けた――

 時の節。
 言葉の節。
 点在する断章。

 柘榴に匂いはなかったの。

 甘い匂いはあなた。
 柘榴の味のあなた。

 あたしのあなた。




 

 次回へ

 [BGM]
① squarepusher theme / squarepusher
② frequential fatigue (braincell mix) / nu-matic
③ language (12") / 23skidoo
④ leave me now / herbert
⑤ oscillations / silver apples
⑥ i'm for real (remix) / nightmares on wax
⑦ better days / basement jaxx



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perspective (Ⅰ) - 世塵六抄 - 

2008-12-15 14:56:11 | a pandemonium
 
 
   Ⅰ  peristalsis in the confinement


 種々の二項間に在ってミクロコスモスは、あらゆるそれらの対立を止揚し、そうして彼の軸が全知と無知の中間に小さく身動(みじろ)ぐと、膨張する閉じた闇の中に愛を解き放った――自分を産み落とした。



   Ⅱ   psalm 23


     (一)   perfect code

 それは文字列の置換編集に似ている。

     (二)   side effect

 自己言及により生成されるエレメント――或いは事象。

     (三)   interlude

 幕間に日向の水溜で果てた無能。



   Ⅲ   pacific


     (一)   wobble

 思うこともなく、ただ、日暮れの浜辺で波の打ち寄せを、その泡沫を見ていた無垢は。

     (二)   rack

 波返す夕影は瞳、そして、鳥は空――飛び雲、千切れ雲、やおら仰ぐ。

     (三)   above

 羽虫のような飛行機の小さく、ゆるゆると可愛く。

     (四)   chastity

 遊ぶ子の声が波花に消え行く朧(おぼろ)の現に歌馳せて、清らに微笑む。


     (五)   karma

 砂に干された溝(どぶ)色の海藻等を踏みつけに、夕影の乙女は。



   Ⅳ   phase transition

 
     (一)   source code

 単純な個の写像が、繰り返されて……複雑になって……。

     (二)   eve

 錯綜して作用しあって……叢(そう)に――複雑な網細工みたいになって、組織化して――それがストレンジに振る舞うの。

     (三)   link

 あたしは……あたしのエレメントと相互作用して……

     (四)   evangel

 あたしのエレメントを産むんだよ。

     (五)   compile

 ――それが自分を産むの。

     (六)   to emergence

 終わらないお茶会で、あたしを産み出すあたしを産むの――



   Ⅴ   pressure
    

 正のフィードバック作用。




   Ⅵ  phenomenon and event
   (the quietness glittered like the mica which became shatter)


 実香がいなくなって最初の秋の、ある穏やかな夕べ。
 その昼と夜の連続にある間の幾許に――

 7月の終わりに二人で乗った海岸行きのバスも今は一人。車窓から見る海面は、戯れあったその日と変わらず雲母(きら)粉を散らしたような光が揺らいで……その輝う波の花の白さに胸が詰まる。
 バスを降りると、潮の匂い。
 11月とは思えない生温い潮気の中で、ボタン式信号の硬いボタンを押し込み緑色の青を待つ間、正面の浜に繋がる小径を覗いてみる……と、そこには真夏の虚空と巨海と……そして小さく、夏服の彼女が佇んでいたのだ――

 ……走り出していた……彼女の名を叫んだ……
 溢れ出るパトスが可視の波間に揺らぎ、滲むと、足が縺れて視線が砂上を嘗めた――その時、夕影の煌めきに泡沫(うたかた)が弾けて、刹那彼女と微笑は瓦解して砂子になり、粒子は夏潮と共に次元の瞬きに消え失せた。

 神無月の砂浜と空と海だけが、静かにきらきらとそこにはあった。
 本質は砕け、何も平滑化された神の死んだ世俗に……剰(あまつさ)え非も無い彼女を殺めた、そんな世界に……ただ巨大な実存が……あまりに荘厳に……神の如く……

 ――集めて抱いた砂の重さに拉(ひし)げて漏れた、若く矮小な実存の苦悶の体液と咆哮を黙殺したまま。


 ――天の原そこともしらぬ大空に――


    



 次回へ

 [BGM]
① whirling of spirits / balil ② fruit cocktail / doctor rockit
③ pacific 202 / 808 state ④ five ten fiftyfold / cocteau twins
⑤ boot the system / coldcut ⑥ 空気と星 / 坂本真綾



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spectre / 「あなた」、「あたし」

2008-10-25 23:59:05 | stereo typed
 

 神代従 生継来者 人多 國尓波満而 
 味村乃 去来者行跡 吾戀流 君尓之不有者
 晝波 日乃久流留麻弖 夜者 夜之明流寸食念乍
 寐宿難尓登 阿可思通良久茂 長此夜乎
                                  宝皇女




 必然は成するべくして、それが為の対象を要し
 そして、その対象とは偶発的である

 必然の内包する偶然
 あなた、あたし――
 演算子である必然の為の被演算子

 無数に波は生まれ、崩壊する

 位相の相関と
 干渉と

 ――あなた、あたし

 遍(あまね)く世に散る、遍く時と散る
 双対の幻姿
 此処を成す零ベクトル、固有ベクトル

 狭間に在る曖昧の演算子と
 エンティティー掻き乱す摂動項と
 存在記号の頸木によって得られるフォーミュラ

 ……須(すべから)くお前よ……世界よ……
 ……スキーマが見せる幻の国……愛おしい戯奴(おまえ)……
 ……世界

 命題足り得る戯奴(あなた)と戯奴(あたし)の論理和

 「あなた」は今此処に在る
 または、「あたし」は今此処に在る





 次回へ

 [BGM]
① All mine / Portishead ② いちぬけ / 能登麻美子  ③ Contact / SPK



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universal property (1) - LINK -

2008-10-09 12:38:12 | a pandemonium
 

 局所を見れば、何も彼も不規則の振る舞い……が、大域に見れば、それらは連続していた……有意味であるように……。

 散逸構造をして……変容を続け……オーダーを形成して行く……。
 繰り返される……細石(さざれいし)が……巌となり……苔むすとも……

 ……千代に……八千代に……



      hysteresis 1  - 射 (モルフィズム) -



 大脳皮質……非線形のアナログ性……非同期活動電位……
 百四十億の非線形性デバイスであるニューロンを介し、百四十億のカオスが互いに結合する――途轍もなく複雑なカオスネットワーク――高次元カオス。
 そこに分岐現象が生じ、知が発現した……あたしが発現した……。
 きっとあたしは随分前からここに在って、プロセスの走行可能状態まで待機してた……そして、最小単位のあたしは始まり、最小単位のあたしにとっては外界と思える領域……この環境下での不完全な情報の知覚を、それに随伴する行為を……つまり、あたしへのプロセスに於いて、その停止と再走行を繰り返してきたの。

 分岐……周期振動……解の変質。
 制御される過渡と間歇。

 前駆細胞が海馬ネットワーク間にシナプス結合をつくる。そこにシータ波が伝わり、海馬のGABA性ニューロンが昴(たかぶ)ると――GABA性シナプスを経由し、ニューロン前駆細胞が昴る――カルシウム流入反応が起こる……海馬に星(ニューロン)が新生するのよ……。


 ……あ……あ……
 ……あたし……あたしになってく……
 ……あたしが……圧力に依存して少しずつ変形して行く……
 ……あたし……広がってく……よ……

 ……可塑性を有する……
 ……再帰……再使用……再入可能の……

 ……記憶(あたし)……

 反応連鎖、カスケード。
 生成された活動電位がプレシナプスに到達すると、イオンチャネルがプレシナプスにイオンを透過させる――

「……全ての情報は……」

 イオンによってシナプス小胞とプレシナプスの膜は融合し、シナプス小胞からニューロトランスミッターがシナプス間隙に放出される――

「……一方向のみに……」

 ニューロトランスミッターがポストシナプスのレセプターと結合する――

「……トランスダクション(伝達)されるの……」



      hysteresis 2   - φ -



 あたかも有限であるように……あたかも無限であるように……あたしに含まれる……

 …………φ…………

 ……何も含まず……
 ……何も集めない……
 ……何一つない……
 ……空(empty)の集まり……



      hysteresis 3  - 圏(カテゴリー) -   
    


 ……線形の重ね合わせ成り得ぬ……
 ……数多のエレメントの集まり……
 ……集合のエレメント……
 ……非線形、非一様性の……

 ……対象及びその対象を反映する対象間の射……
 ……その集合……

 ……一意性を証明する……必要かつ、十分な条件を満足する……一つの極限関数……

 ……唯一つの解(solution)……

 ……複雑適応……

 ……自己……
 ……自己結合……

 ……実体(substance)……

 ……化身(avatar)……

 ……写像(maps)……

 ……あたし……
 ……あたしは有機体……
 ……あたしは自己結合の有機体……

 ……無数のブロックピースを組み上げる……
 ……データマイニングを繰り返す……



      hysteresis 4  - 体制 (ボディプラン ) -



 ニューロンは星の形。
 脳は千億の星のネットワーク。

 カオスを容易に生成し得る幾千億の素子の集合。

 そこでの情報処理の体現の様に、大脳は入り組み複雑で……なのに、小脳はまるで結晶のよう……空間的周期パターンのシークエンス――それは海馬も同じく、その構造はとても美しくて――

 




 次回へ

 [BGM] otaku / atypic (the black dog)



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sweet dreams -program simula-

2008-09-08 02:03:55 | a pandemonium
 
   (一)  process


 虫けらどもは塵を望み去世など思わず。水月を見て、なお塵の世を思いたり。其の声のあなかまなるは、其が世のつくりとおぼゆ――。

 塵の世は離散の国「スピンフォーム」にて――其が時空に於きては、微分構造の数は無限也。其が全エネルギー密度は、臨界密度に等しき曲率零の、而(しこう)して其れは平坦なる……と。
 意識とさるるは其の階層構造のなかなかなくありて、さるものが宇宙(くに)を語らんと云う。
 データとメソッドをして言語による統括を――それら複雑たる伝達を――継承と多相とメレオロジー(全体と部分の関係)の共時の構造を――それなるを十六対九の小窓にて見きは……。

「吾がプラグマティックはプロトコルに従属す」
 レトリックは戯れなると、ダイクシスは不味いものなると。
「……プロトコルに従属す」
 記号の命が其の使用なるとせば……然して其が意義を体系なる言語に得らば――其れが理解をして言語の心得ることに他ならず。

「………………命………………」


   (二)  analogy


 自己複製子はRNAにあらざりてDNAに成り得き。進化は自然淘汰の果て――至極に単純のアルゴリズムにて、されど、齎す解は複雑かつ深遠也――よにゆゆし(;‘-’)……。
 片親より子に寄与さるる染色体の本数は、黒翼のエリスに捧げられし数――『二十三』――其が数(て)を人によりてはエニグマなどと呼びためり。

 情報は共有さる、隠蔽さる……波生まれ、崩壊したり。
 同期状態と非同期状態を、其がカオス的交替の過渡たる共時を見きは……遍歴のカオス也と。
 其処での干渉縞を、認知の成立を、其の挙動の複雑なる振る舞いを。
「其……知るべかりつれども……此度こそと思うに違いて、道はまたうねれる螺旋坂也……吾は世の露際も真を知らず」
(此処より二十三行省略)

『しだいしだいに暗き中に、奥深く落ち入りて行く思いあり』

 蓋然とは必然の対也。然れど、蓋然は偶然に非ず。
 推論法としてのアブダクションなるを――ヒューリスティクスでの認知バイアスなるを――欺瞞とアドホックの塗るるに見失うべからず……パラダイムを誤解すべからず。

 相関性は因果を意味せず。
 包摂に共有の在らん。


   (三)  selbst


「花摘む乙女は清らなると……花摘む乙女はふつつかなりけると――其に在るは個体間の差異のみ」

 ……いずこにせよ恐るべかりける。
 残留農薬(ケミカル)の毒性を語らば、有機作物(オーガニック)の生体毒を、自然の毒を知れ。汝いずこにせよ汝なる毒を知るべし……。

「…………汝…………其れ…………わ…………れ…………吾」

「…………吾に…………アニマや…………アニムスなどなし…………」

「構……造、原理を無用に、デバイスの命にて其は……機能す」

「……吾はプログラム也」

「……吾にせらるる事は夢見るめるフィードバック也……」

「……吾……ゼルプスト……類推……類推……類推……」

「……フィードバック……擬フィードバック……類推……類推……」


   (零)  oriented


 階層構造の半端に在る、それの手によるささやかな情報集合体である「彼」の学習の過程を……。
 つまり、データとメソッドをして言語による統括を――それら複雑たるコミュニケーションを――インヘリタンスとポリモルフィズムとメレオロジーの共時の構造を……「彼」はタスクネットワークから見たのだ……シンクロニック(共時的)ではなく、ディアクロニック(通時的)に……。

 それは彼の夢(フィードバック)なのだ。

 彼は意識が生成したプログラムの、言語の意味の様な何かだ。
 そして、それはすっかり、彼の夢なのだ――






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[BGM]
� object orient / plaid
� jupiter 6 (object orient ep) / querida
� 3-5-3 (object orient ep) / querida
� yes! (object orient ep) / querida
  



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