日本の心・さいき

日本の文化を通じて、世界平和を実現させましょう。

原爆の悲劇を繰り返すことなかれ(9)!

2006-12-14 00:22:09 | Weblog
 翌9日、頭の負傷をものともせず、朝6時に兵60名を引率して再び市内に突入する。担当の場所は、寺町である。物凄い死臭の中を通って紙屋町に行き、西練兵傷右に見ながら産業奨励館を左に見る。行軍途中で見る左右の惨状、何たる悲惨さか。あの爆弾一発でこの様な惨事に、唖然としてものも言えない。 木造の家は1軒もない。焼け爛れて夢遊病者の様に、茫然と立っている人、座り込んでいる人、横になっている人、そして、死んでいる人。
 「兵隊さん、助けて下さい!」 行軍中に何回も聞く。直ぐにでも助けてあげたい気は山々であるが、軍の命令で、寺町に一刻も早く到達せねばならない。「後で直ぐに参りますから、待っていて下さい。」それしか言えない。やっと寺町に到着。
 まだ生きている被爆者の殆どの方は、真っ先に水を求めるけれども、水を飲ませたら直ぐに死んでしまうから、絶対に飲ませてはいけないとの軍令であった。私の水筒には水が入っている。しかし、心を鬼とせねばならない。「私の気持ちを察して下さい。」
 大きなお寺の焼け跡があちこちにあり、お墓が沢山有る。だが、殆どの石塔は横倒しになっており、その間には、被爆者の死体で一杯である。何たる有様か!生存者が運んでくるのであろうか、自分の死に場所をこのお墓に求めに来たのであろうか、この多勢の被爆者の死体には、驚いてしまった。
 この死体の中を、口鼻にタオルを当てて、自分の身内を、親戚を、又、知人を探し回っている人達があちこちに見える。死体の中には、目・口・鼻から白い虫が見えているものが多い。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする