大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年09月30日 | 植物

<2462> 大和の花 (621) オオキヌタソウ (大砧草)                                    アカネ科 アカネ属

                                                  

 湿気の多い山地の林床や林縁などに生える多年草で、匍匐する根茎を有する。4稜がある地上茎は直立し、高さが30センチから60センチほどになる。葉は長さが数センチから10センチの卵形または広披針形で、先が尖り、3脈がはっきりしている。また、葉は短い柄を有し、4個輪生してつく。ただ、アカネ属の特徴で、真の葉は対生する大きい2個のみ、残りの1対は葉状に発達した托葉である。

 花期は5月から7月ごろで、上部の葉腋に集散花序を伸ばし、多数の花をまばらにつける。花冠は黄白色から緑白色で直径3ミリから4ミリの大きさで、4裂から5裂する。北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島から中国東北部に見られるという。大和(奈良県)では生育地も個体数も極めて少なく、レッドリストに絶滅危惧種としてあげられている。その名は実の形によるという説があるが、不詳。 写真はオオキヌタソウ(上北山村の山中。この一箇所でしか見ていない)。  雨の音秋しんみりとやって来ぬ

<2463> 大和の花 (622) ヤマトグサ (大和草)                                         アカネ科 ヤマトグサ属

                              

 山地の林内や林縁に生える多年草で、茎は直立し、下部は分枝、毛があり、高さが15センチから30センチほどになる。葉は長さが1センチから3センチの卵形で、先はやや尖り、縁には鋸歯が見られ、対生する。葉柄は短く、葉柄の基部には膜質の托葉がある。

 花期は4月から5月ごろ。雌雄同株で、花は葉腋に1、2個の雄花または雌花をつける。雄花は緑白色の雄しべが葯とともに多数垂れ下がり、微かな風にも震えるように揺れる。3個の萼片は反り返って巻く。雌花は淡緑色で、U字状の花柱が顔を覗かせる。

 本種は世界に1属4種の中の1種で、本州の秋田県以南、四国、九州に分布する日本の固有種として知られる。大和(奈良県)では生育地、個体数ともに少なく絶滅危惧種にあげられている。主要な産地は金剛山であるが、減少が著しいとの報告がある。

 なお、ヤマトグサは明治20年(1887年)に発見され、日本人が初めて学名をつけた記念すべき植物として、大和(日本)草、即ち、ヤマトグサと命名された。学名は命名者の大久保三郎と牧野富太郎に因み、「Theligonum japonicum (Okubo et Makino)」とつけられ、二人の名が見える。 写真はヤマトグサ(金剛山)。   透き通る秋透き通る水の色

<2464> 大和の花 (623) イナモリソウ (稲森草)                                  アカネ科 イナモリソウ属

           

 山地の林内や林縁に生え、地面がむき出しになったような登山道の傍などで見かける多年草で、地中に細い地下茎を伸ばして増える。地上茎は直立し、高さが3センチから5センチ、大きいものでも10センチほどと小さく、小群落をつくることがある。葉は長さが3センチから6センチほどの卵形で、全面に毛が生え、先はやや尖り、対生して2、3対つくが、茎が短いので輪生状に見える。

 花期は5月から6月ごろで、葉腋や茎頂に1、2個の花をつける。花冠は長さ2.5センチほどの筒状鐘形で、先が5深裂する。裂片は長さ7ミリほどの広披針形で、縁が波打つ特徴がある。花冠は中心部が白く、周辺部が淡紅紫色で美しく、小さい花ではあるが印象に残る。先が5裂する雌しべが1個見える。花にも毛が生える。実は蒴果。

 イナモリソウのほかシロバナイナモリソウが見られるが、ともに日本の固有種で、イナモリソウは本州の関東地方以西、四国、九州に分布し、大和(奈良県)でも見られるが、個体数が少ないためレッドリストの希少種にあげられている。なお、イナモリソウ(稲森草)の名は、三重県菰野町の稲森山で初めて見つかったことによるという。 写真はイナモリソウ(熊野古道小辺路の伯母子峠越え)。 秋来たる運動会あり祭りあり

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿