<964> 童 話 「小鳥たちの歌声」 (1)
春の鳥 夏の鳥 また 秋の鳥 冬の鳥 みな仲良く見ゆる
年老いたきこりがいた。毎日山に出かけては木を伐っていたが、ある日のこと、一本の大きなけやきの木を伐ろうとしたとき、一羽の小鳥がやって来て「どうかこの木を伐らないで下さい。私の住む家があるのです。家には生まれたばかりの子がいます」としきりに訴えた。年老いたきこりは長い年月山に入ってひとりで仕事をしていたので、一日中人と話をしない日が多かったけれど、そのかわり山に住む生きものたちと心を通わせ、小鳥たちの話も多少はわかった。
この日も、小鳥の訴えることが理解出来たので、年老いたきこりは、打ちかけた斧を止めて、小鳥がとまっている小枝を仰ぎ見ながら「大丈夫。お前さんの言うことはよくわかった。この木は伐らずにおくよ」と言って微笑んで見せた。小鳥は年老いたきこりの微笑みを見て嬉しくなったのか、辺りを飛び回って喜んだ。
それから季節が過ぎ、雛たちはみんな大きくなり、一人前に飛べるようになった。小鳥の父親は何かにつけ子供たちに年老いたきこりの話をして聞かせた。私たちの願いを聞いてくれたおじいさんに何かお返しをしなければならないといつもみんなで話し合った。しかし、小鳥たちの力で年老いたきこりにしてあげることは何もないように思われた。「みんなで考えればきっと何かあるはずよ」と母親の小鳥が言って、またみんなで考えた。すると子供の一羽が「こんなのはどうかしら」と言って、澄んだとても綺麗な声でうたい始めた。
おじいさん
おじいさん
私の好きなおじいさん
輝いているのはお日さまで
うたっているのは私たち
とっておきのしあわせは
今日のお空のようですね
みんなと一緒に遊びましょう
するとみんなもそれに合わせてうたい出した。「おじいさんはいつもひとりぼっちで仕事に精を出しているので、ときには私たちが行って歌をうたってあげたら喜ぶに違いない。これはいい考えだ」と言って、みんなで練習した。みんなはもともと歌が上手だったので、一時間もしないうちにうまくうたえるようになった。
そこで、小鳥たちは年老いたきこりの仕事場に出かけて行き、みんなでうたい始めた。年老いたきこりは頭上から聞こえてくる小鳥たちの歌声を聞きながら快く斧を振った。しかし、天気のいい季節が過ぎ、年老いたきこりにも小鳥たちにもいやな長雨の季節になり、雨の日が何日も続くようになった。年老いたきこりは山へ入ることが出来なくなり、小鳥たちも遠くへは行けなくなった。雨は一ヶ月も降ったり止んだりのありさまで、みんなを困らせた。
そうして、その雨もやっとあがり、お日さまの顔を見ることが出来るようになったが、年老いたきこりは山に姿を見せなかった。小鳥たちは年老いたきこりに何かあったのではないかと心配になって、みんなで麓のきこりの家まで様子を見に行くことにした。行ってみると、案の定、年老いたきこりは病気のため寝込んでいた。小鳥たちは窓のそばに寄って、みんなであの歌をうたい始めた。 写真はイメージ。 次回に続く。
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