<38> キ ク
菊の香や 仏とともに 父と母
小さいながら我が家にも仏壇がある。私は次男なので仏壇は兄が引き取って祀っているが、 長男が臨月を待たず亡くなった関係で、 仏壇をつくり、今は亡き私の父母並びに系累と妻の亡き父母にも思いを寄せて毎日手を合わせている。
この仏壇に供える花を欠かさないように妻が庭にいろんな季節の草花を植えているが、 その草花の一つである白菊が今花盛りを迎えている。妻が怪我で思うように動けなくなってしまい、庭の白菊も私が摘んで供えることになった。
この白菊を見ていて、松尾芭蕉の代表作の一つである「菊の香や奈良には古き仏達」の句が思い出された。元禄七年 (一六九四年)九月九日、重陽の節句の作とされ、杉山杉風に宛てた書簡に認めた句であると言われるが、古都奈良の雰囲気をよく捉えているのが感じられる。
冒頭の句はこの芭蕉の句を本句取りにして生まれたもので、私にとっては、否、誰にとっても仏は亡くなった人であって、 生きている私たちには、その仏が逆縁であっても、人生を先に終えたところの先人先達であってみれば、祖(おや)と言ってもよい存在で、 これを突き詰めれば、父と母に繋がるわけで、何処の仏も、仏は父と母を思わせる存在であるということが言える。
歴史を誇る奈良・大和には「古き仏達」も多いわけで、芭蕉の句が改めて思われるのであるが、私にとって菊の香は玲瓏としてあり、そして、心に沁み入るところがある。
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