<3582> 奈良県のレッドデータブックの花たち(133) サギスゲ(鷺菅) カヤツリグサ科
[学名] Eriophorum gracile
[奈良県のカテゴリー] 絶滅寸前種、注目種
[特徴] 湿地に生えるワタスゲ(綿菅)の仲間の多年草で、地下茎が匐枝を伸ばし群生するのでワタスゲのように株にならない特徴がある。葉は細長く、基部は鞘になる。花期は普通6~7月で、高さが20~50センチの細い花茎を立て、その先に2~5個の小穂をつけ、小穂は倒卵形の白い綿毛の束になる。この小穂をシラサギに見立てたことによりこの名がある。
[分布] 本州の近畿地方以北、北海道。国外では朝鮮半島、中国、ロシアなどユーラシア、北アメリカの周極帯に広く見られる。なお、奈良県のレッドデータブックは奈良県が日本の南限に当たるとして注目種にあげている。
[県内分布] 曽爾村
[記事] 寒冷地ではワタスゲとともに生え、よく似るが、ワタスゲでは小穂が1個。サギスゲは複数個の違いがある。近畿地方ではサギスゲしか分布せず、ワタスゲより温暖地に適応すると言われる。曽爾高原のお亀池湿地に見られる個体群は地球寒冷期の遺存種とする見解があり、学術的に貴重な植物として保護対象になって久しい。温暖化の影響か、年々少なくなる傾向が見られ、絶滅が危惧されている。
写真は白い小穂を見せるサギスゲの群落(左・2008年の撮影で、今はこのような群生状況にはなく、点在している)と小穂のアップ(右)。言わば、減少の要因は地球温暖化と思われる。
動植物に限らず 地球生命は
地球環境に 影響されながら
あるは依存し あるは抵抗し
太古から 現在に至るまで
その変化変貌に与しつつ
種を引き継ぎ 守り続けて
生の展開を こなしている