<2840> 余聞、余話 「ペアの光景」
秋日和番ふものらの天下かな
秋のこの時期、ペアになって、交尾に勤しむ昆虫たちが見られる。秋に番って卵を産み、冬の間、卵で越冬し、春に幼虫、或いは幼虫からサナギになって、羽化し、成虫になるのであろう。まずはオンブバッタ。
オンブバッタおんぶして秋迎へけり
オンブバッタはオスがメスの上に乗っかりおんぶされているように見えるのでこの名がある。そのオスを乗せたメスのオンブバッタがブロッコリーの葉にいるのが見られる。この間からずっと、交尾の雰囲気づくりをしているのであろうか。その名のとおり、おんぶしてペアを組んでいる。おんぶされている小さい方がオスであるから、少々不思議に思える。
アキアカネ茜の色に燃えにけり
湿地になった池の水辺に交尾を終えて連結したアキアカネのオスとメスが湿地の水辺でしきりに飛び、ときに浅瀬に近づいて連結した後ろのメスがしっぽの先を水面に打ちつけている。連結打水産卵というらしく、その行為を繰り返している。つまり、交尾してオスの精子によって整った卵をメスが尻の先にある産卵管から水中にその卵を放出し、産みつけている図である。オスは交尾が終わってもメスを離さず、産卵場所へ導いているように見える。オスの体が燃えるように赤いのが印象的な光景ではある。
シジミチョウ雌雄もつれて草に落つ
実を沢山生らせ、野鳥の飛来が見られる落葉高木のエノキの繁った梢の間を縫うように激しくもつれ合うように飛んでいたシジミチョウが、そのまま林縁の草叢に舞い落ちて消えた。その消えた辺りに穂が出し始めたススキがあった。そのススキの長い弓なりに垂れた葉の上に大胆に番うシジミチョウがいた。カメラのレンズを近づけても逃げる気配がない。完璧に連結している。大仕事のときか、幸せのときか、大きい方がオスと思われる。夢中の状況にある感。
写真は左からオンブバッタの番、連結して飛ぶアキアカネ、交尾中のシジミチョウ(馬見丘陵公園ほか)。