大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2019年09月05日 | 写詩・写歌・写俳

<2799> 余聞、余話 「 抜 歯 」

      新しきガーゼの褥に横たはる抜歯奥歯の惨の亡骸

 このほど抜歯した。左下側の一番奥の歯一本。二年ほど前から歯周ポケットが大きくなり、歯間ブラシも用いていたのであるが、歯磨きが行き届かなかったのだろう。徐々に悪化し、ぐらつきがわかるまでに進み、硬いものを噛むと痛みが走るようになった。歯科医に歯石を除いても手遅れで、抜くより治療の方法はないと言われ、抜くことにした。

抜歯は初めてでなく、その方法や以後のケアについては大体わかっていたが、抜かれるということは、当の歯に対する心持ちもあって、なかなか踏み切れず、我慢していたのであったが、いよいよ痛みが増し、抜いてもらうことにしたという次第である。

 一番奥であるが、親知らずではないので、抜歯後のケアは他の歯と同様、一週間後に抜糸し、そのままでいいと言われ、治療は一週間で終わった。抜いた後の出血が心配だったが、一番奥で、あまり動きのないところなので、以前ほどの出血はなく、治療はスムーズに運んだ。

                                              

  今回を含め、これまで三本抜いているが、今回の歯は歯石の付着が多く、これまでの歯と比較にならないほど酷い状態だった。一番奥の歯ということで、歯磨きが行き届いていないかったのに違いない。百聞は一見に如かずで、抜歯後、真新しいガーゼに載せられた奥歯を見せられ、歯根に厚みをなしてこびりついている歯石に目を奪われる思いがした。この歯石に歯周菌が蔓延っていたようで、「歯周病です。歯磨きを怠らず、ときに歯石を取り除いて、残る歯を大切にして下さい」と言われた。

 ガーゼに横たわる惨めで痛ましい奥歯を一見して、日ごろの不束、不摂生の現われを糾弾される心持ちになった。それで、「こちらで処置しましょうか、持ち帰られますか」と二者択一を問われ、このままの処分では長い年月働いてくれた分身の気分にもあったので、「嫁さんに見てもらい、参考にーー」という姑息な理由をつけて持ち帰ったという次第である。で、レクイエムでもないが、こうして、今、ブログを記しているところである。

 写真は人さまに見せられたものではない自分の恥部を晒すに等しい抜歯奥歯の惨めなものであるが、このブログに触れる読者諸兄には、この奥歯の写真を教訓の見本に美しい歯を保つべく歯のケアと保護に当たってもらいたいとは思う次第である。 写真は抜歯の奥歯(右上には分厚く付着した歯石。左の銀色の部分は三十歳前後のころ虫歯の治療をしたときの痕跡)。