大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年04月21日 | 植物

<2304> 余聞、余話 「野菜の花たち」

        麗しき花の季節が来ぬ花の季節は恋の窓辺の季節

 四月は野菜の花がよく見られる時期である。野菜の中で根菜や葉野菜は花が咲く前に収穫するので、花が見られることはまずない。なので、野菜がどんな花を咲かせるのか、案外知る人は少ない。しかし、収穫せずそのまま放置しているものがときに見られるので、関心のある人には、探せば見ることが出来る。ということで、少しではあるが、野菜の花を見てみたいと思う。

 ダイコン―――大根。アブラナ科ダイコン属の越年草で、肥大する根によりこの名がある。主にこの根を食べるが、葉も食べられる。花は白色四弁花で、青紫色を帯びる花も見られる。

 ハクサイ―――白菜。アブラナ科アブラナ属の二年草で、日本では主に結球する大きい葉をもっぱら食用とする冬野菜の代表である。花は黄色の四弁花で、菜の花に似るところがある。

 ミズナ――――水菜。アブラナ科アブラナ属の越年草で、細い多数の根生葉をつけ、葉は細かく裂ける。ミブナやキョウナと同類で、花は黄色を帯びた四弁花である。

 ブロッコリ――アブラナ科アブラナ属のキャベツの一種の多年草で、イタリアで品種改良された。花の部分を食用にする緑黄色野菜。花は黄色乃至クリーム色の四弁花で、花序にいっぱい咲く。日本名はメハナヤサイ(芽花野菜)、ミドリハナヤサイ(緑花野菜)という。

 シュンギク――春菊。キク科キク属の一年草で、葉野菜の一つ。地中海沿岸原産のハナゾノシュンギクを中国で改良したもの。花はキク科特有の頭花で、舌状花と管状花とからなり、黄色、淡黄色、または白色と黄色の二色も見られる。花が美しいので、切り花にもされる。

                 

 以上であるが、これらの野菜の花は我が家の近辺で見かけたものである。まだ、ほかにも野菜は多く、ホウレンソウの花も見たいところであるが、実現していない。という次第で、よく見ると、野菜にアブラナ科の植物が多いのに気づく。アブラナは油菜で、一般には菜の花で知られる。種子から油を採るので、ナタネ(菜種)とも呼ばれる。

  このアブラナ(油菜)のナ(菜)は食用になる植物につけられ、野生の草木にも多く見られる。その数は百七十を越えるほどに上る。少し例をあげてみると、まず、野菊の仲間で知られるキク科のヨメナ(嫁菜)がある。万葉当時はウハギ(兎芽子)と呼ばれ、この若菜を摘んで食用にしていた。「嫁」については諸説あるが、ムコナ(婿菜)に対する名で、花の姿によったと思われる。

  また、この時期、黄色の頭花を咲かせるキク科の二ガナ(苦菜)があり、これは食べられるけれども、苦味があるということからつけられた名である。キキョウ科にはソバナ(岨菜)があり、これは若芽が食べられ、切り立った崖地の岨(そま・そば)に生えているからと言われる。

  今一つ草本であげれば、キンポウゲ科のサラシナショウマ(晒菜升麻)がある。若芽をゆで、水に晒して食べるのでこの名がある。ショウマ(升麻)は中国のショウマに似ることによる。

  一方、木本で見ると、スイカズラ科のズイナ(髄菜)がある。あまり目立たない落葉低木であるが、五月から六月ごろに咲く総状花序の白い花はよく目につく。若葉を食べるが、髄がいっぱい詰まった茎にこの若葉がついていることによりこの名があると言われる。 写真は左からダイコン、ハクサイ、ミズナ、ブロッコリー、シュンギクの花。