大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2017年10月17日 | 植物

<2119> 大和の花 (347) エノコログサ (狗尾草)                                                  イネ科 エノコログサ属

                  

 日当たりのよい草地や荒地に生え、道端などでも普通に見られる1年草で、群生することが多い。葉は長さが10センチから20センチほどの線形で、鞘になって茎につく。花期は8月から10月ごろで、茎の基部で分枝する長い枝の先に出来る円柱状の花穂に緑色の小穂を多数密につける。小穂の基部には淡緑色の数個の剛毛が生え出し、花穂全体に及ぶ。その花穂は直立乃至は先端がやや垂れ気味になり、子犬の尾のように見えるのでこの名がある。英名は剛毛に被われた花穂をキツネの尾に見立て、Foxtail grassという。また、この花穂で猫の気を引き遊ぶことからネコジャラシの異名もある。

  花期が過ぎても花穂の剛毛は残り、日に輝いたり、露に濡れたり、霜に被われたりして美しい姿を見せる。群生することもあって、取り柄のない雑草ながら、秋の訪れを告げる野の風情として目にとまる。分布は日本全土に及び、大和(奈良県)でも普通に見られる。エノコログサ属の仲間にはほかにも何点か見られるので、このページで順次紹介したいと思う。 写真はエノコログサ。露にしっぽりと濡れ銀白色に輝く群落の花穂(左)、花穂のアップ(中)、築地塀の屋根に咲き出した花穂(右)。   露の朝狗尾草の大団円

<2120> 大和の花 (348) ムラサキエノコログサ (紫狗尾草)                                    イネ科 エノコログサ属

                                                                       

  道端、あるいは荒地、または河原などに生えるエノコログサ(狗尾草)の変種と言われる1年草。エノコログサとは小穂の基部より伸びる剛毛に違いが見られ、エノコログサでは緑色を帯びるのに対し、ムラサキエノコログサでは紫褐色に現われ、花穂全体が濃い紫色に見えるのでこの名がある。また、葉の基部に当たる葉舌の部分と葉の中脈が赤紫色になる特徴も見られるが、ほかはエノコログサと変わらないと言われる。

  花期は8月から10月ごろで、舗装道路の繋ぎ目の隙間などから生え出し、紫の花穂を立てているのを見かけることがある。分布は日本全土に及び、大和(奈良県)では、南部の一帯でよく見かける。 写真はムラサキエノコログサ。写真の個体は赤みの強いタイプ(いずれの写真も野迫川村での撮影)。    野を歩く秋が来てゐるそこここに

<2121> 大和の花 (349) アキノエノコログサ (秋の狗尾草)                                    イネ科 エノコログサ属

                

 日当たりのよい道端の草叢や荒地、畑などの雑草として生える1年草で、群生することが多く、最近では一番多く見られるエノコログサ属の仲間である。草丈は50センチから80センチで、エノコログサよりもやや大きい。花期は8月から11月ごろで、エノコログサよりも穂をつけるのが遅いのでこの名がある。花穂は長さが5センチから12センチで、エノコログサよりも一回り大きく、穂先は垂れる。小穂の基部に生える剛毛は緑色が普通であるが、紫色を帯びる個体も見られる。 写真はアキノエノコログサ。左2枚は花穂の剛毛が紫色を帯びるタイプ。右は夕日に染まる花穂群。 いずれも斑鳩町。塔は法起寺三重塔。  雑草も風情にありて秋の塔

<2122> 大和の花 (350) キンエノコロ (金狗尾草)とコツブキンエノコロ (小粒金狗尾草)          イネ科 エノコログサ属

      

 キンエノコロ(金狗尾草)もコツブキンエノコロ(小粒金狗尾草)もともに日当たりのよい草地や畦などに生える1年草で、キンエノコロは茎が叢生し、あまり枝を分けず、高さが30センチから80センチほどになる。茎がしっかりしているので直立して見え、群生する。花期は8月から10月ごろで、枝先に長さが3センチから10センチの円柱状の花穂を立てる。花穂には黄金色の剛毛を有する小穂が密につく。この剛毛が花穂全体に及び、日に輝いて黄金色に見えるのでこの名がある。

  コツブキンエノコロはキンエノコロより全体に小さく、花穂も長さが2.5センチから4センチほどとキンエノコロの半分以下で、この名があるが、中間の大きさでは見た目の判別は難しい。自生の分布はともに北海道から本州、四国、九州で、大和(奈良県)でもそこここに見られる。 写真は左2枚がキンエノコロ。夕陽の逆光に映える黄金色の花穂群と花穂のアップ。右はコツブキンエノコロ。    陽に映ゆる金狗尾の野の舞台