大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2017年09月27日 | 写詩・写歌・写俳

<2099> 余聞、余話 「衆院解散に思う」

           政治は遍く照らす日の光のようでなくてはならない

        政治が個の利益に偏って為されることは許されない

 安倍首相は二十五日、記者会見し、二十八日に召集される臨時国会の冒頭において衆院を解散すると表明した。会見では概ね二つの解散理由をあげた。一つは平成三十一年年十月に消費税率を10パーセントに引き上げる際、増収分の使途を1000兆円超に及ぶ国の借金返済から幼児教育の無償化などに変えること。これによって少子高齢化の問題に対するという。このため借金返済は予定通りにならなくなり、なお借金が増えることになるという。今一つは米国に対する対抗行動に激しさを増している北朝鮮問題に触れ、「国難突破解散だ」と述べてアピールしたことである。

 この二点の解散理由を思うに、この理由は取ってつけたような実に矛盾を思わせるところがあり、有権者を納得させるに少々欺瞞的な臭いがする。というのは、解散して国民の信を問うほどの政策転換ならば、現国会で打ち出し、政策を進めた方が過半数を有している点、実現可能なはずである。それなのになぜそれを避け、わざわざ膨大な費用がかかる選挙を行なう必要があるのか。野党も教育無償化には熱心であることを考えれば、解散などしないで、国会において提案した方がよほどましである。それをしないで、解散はまさしく言っていることとやっていることが違い、矛盾していることになる。矛盾でないとするならば、欺瞞ということになる。

 今一つの北朝鮮の状況に対する「国難突破解散」発言の意味もよくわからない。解散すれば北朝鮮情勢に何がどう影響して国難突破に繋がるのか、少しもわからない。解散して自民圧勝ならば、北朝鮮は大人しくなって弾道ミサイルも核爆弾の実験も中止して平穏になるというのだろうか。どのような今後を想定してこの言葉は発せられたのか。米国との蜜月をもって一強政権を築き上げて来た安倍首相のその姿がいよいよ見透かされているように感じられる。

                                                      

  森友、加計問題でピンチに陥り、支持率が落ちて政権維持が怪しくなって来たとき、急に北朝鮮の問題が浮上して来た。この問題は北朝鮮が仕掛けたというよりは、米国が仕掛けたという方が当たっていよう。言わば、安倍首相のピンチに対応するために北朝鮮に意識が向くように仕向けた。つまり、米政権は蜜月関係にある安倍首相に助け船を出したという趣が、緊張を募らせる北朝鮮の動向には感じられる次第である。

  つまり、話題のすり替えによって安倍政権のピンチを救った。こうしたやり方は政治の世界ではよくある話で、安倍首相の支持率は持ち直した感がある。しかし、北朝鮮の抵抗は思ったよりも強く、巧みで、現在に至り、予定通りとは行かず、緊張が続く状態に陥ってしまった。今度はこちらを何とかしなければならないということになり、これが解散の理由になったと想像される。

  もとをただせば、権力者が陥りやすい権力の私有化が安倍一強の体制に表面化し、追及されるところにことは始まったと言える。安倍首相にはこの森友、加計騒動の窮地をかわさなければ、先はない。如何に蜜月にあっても、もっともこの種のスキャンダルを嫌う大義名分の国米国がこの権力の私有化を許すはずはない。米国にはこれ以上この問題を大きくするわけにはいかない。韓国の前大統領が弾劾で葬られたのも権力の私有化であった。だが、日本と韓国では事情が異なる。それは蜜月度の差である。言わば、そこには米国の忖度が外交の裏で働いていると見て取れるのであるが、穿った見方だろうか。

  このように想像してみると、安倍首相の今回の衆院解散の表明意図が透けて見え、納得されて来る。つまり、森友、加計隠し解散だとする野党の政治絡みの言い分も説得力を得て来ることになる。しかし、北朝鮮への対抗措置による緊張関係は遠い距離にある同盟国米国よりも隣接国である韓国や日本がまともに影響を受ける。この緊張状況における日本国民の心理状況はほぼ一つであり、その緊張の状況が長く続けば続くほど北朝鮮はもとより、隣接国の韓国も日本も意味のない深刻さへと陥ることになる。

  米国のトランプ政権は、何を思って緊張を煽っているのか。想像するにこれは日本向けのメッセージにも思えるが、果して、これで米国はいいのかということが思われる。というのは、ここに中国の存在が見られるからである。中国は世界を中国に取り込む一帯一路という経済圏構想を進め、シナ海を視野に置いて南沙諸島や西沙諸島に着々とその体制を築いている。北朝鮮の緊張に意識が向いている間に、近隣諸国をも取り込んで、一大経済圏構想を順次進めている。

  北朝鮮の挑発があってからは尖閣諸島の「せ」の字も忘れられたように言われなくなった。この仕儀はどういうことを示しているのか。それは、米政権が話題を逸らして、北朝鮮に振り向けたのと同時に、シナ海の問題からも意識を逸らせたことになるのである。言わば、これは中国にとって実に好都合なことで、南沙も西沙も思い通りにことを進めることが出来る。言ってみれば、トランプ大統領の緊張を高める北朝鮮へのツイッタ―による発信は、中国にとって極めてよろこばしいことになるわけである。

  日本は核とミサイルの開発を急ぐ北朝鮮との緊張関係によって、いよいよ日本列島を要塞化し、防衛の楯化を進めざるを得ない心理状況に陥り、強いては憲法改革に歩を進め、被爆国のタブーとされている核爆弾の保有に関しても議論されるようになり、軍事にいよいよのめり込んで戦争の出来る国にする勢いに弾みをつけることになる。しかし、それは反面、外交の発展を阻害することに繋がり、危機状況を生むことになる。

  例えば、軍事による要塞化によって未来に希望が持てずにいる立地や風土の将来性に富む沖縄が思われるところである。日米同盟の足かせによってその豊かな可能性にともなう発展が殺がれている損失が思われる歯痒さにある間に中国の一帯一路の経済圏構想は進み、沖縄、強いては日本の将来への夢を失墜させるという事態に至っていることが想起されるのである。TPPを反故にしてしまったアメリカファーストの内向きのトランプ政権にこのような視点はないのかも知れない。日本という国は何か弄ばれている観が透けて見えるところがある。

  所謂、この解散は権力者の陥りやすい権力の私有化による森友、加計問題が端緒になっていると言えるが、それのみではなく、以上のような広がりにも影響していると見るのがよいように思われる。プライマリーバランスの問題にも言えることであるが、ビジョンがあまりにも希薄に思えてならない。これは政治の貧困、即ち、森友、加計問題にも通じることである。ころころと変わる政策内容については、現実に向き合う政治には必要な面もあるが、ビジョンが見えない朝三暮四のやり方が見え見えではどうしようもない。このようなことも今回の解散宣言には考えられる次第である。 写真はイメージで、朝日。暗雲が覆えども、日は昇り来て遍く照らす働きをなす。 政治も日の光的であってもらいたいと思う。