大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2013年09月21日 | 写詩・写歌・写俳

<749>  大和寸景  「レンタサイクル」

           Jitennsya de meguru asuka no akibiyori

 これから秋の行楽シーズンで、民間による周遊型レンタサイクルが定着している奈良の明日香村では、自転車で名所旧跡を巡る人たちの姿も多く見られるようになる。3・11の大震災以降客足に陰りが見られ、苦戦を強いられているようであるが、径二キロほどを周遊するサイクリングは気持ちのいいもので、この時期になると、自転車を走らせて行く人たちの姿も増えて来る。

 今は彼岸花の時期で、この連休は彼岸花祭りが開かれ、この花を目的に訪れる人が多いようであるが、レンタサイクルの自転車を借り切って周遊する修学旅行生たちも見られる。この間は東京からやって来たという中学生たちが、レンタサイクルを利用し、地図を片手に、名所旧跡巡りに出かけるのを見かけた。何組かのグループに分かれ、思い思いに声かけ合って出かけて行った(写真)。 

                                                                   

 この光景を見ていてふと思うことがあった。その地の観光を活性化させるには、立地の要件を満たすだけでは十分でない。需給一体でなくてはならない。奈良県などでは滞在型のエコ・ツーリングというような構想も立てているようであるが、このアイディアを如何に発展させるかが大切である。で、以下に私見であるが、述べてみたいと思う。

  受け入れ態勢を整えることはもちろんであるが、情報発信してPRに努め、やって来る人々のニーズ、要望などの調査研究をし、態勢と要望の整合性において観光の方向づけをして盛り上げる。思うに、明日香の場合は受け入れの観光的素材は十分に備わっているので、周辺の自治体などと連携し、一体化をもって、エコ・ツアー型の集客を行ない、日本のみならず、海外からの客層も視野に入れて、要は、「日本の故郷」と呼ばれるその特色を生かして新たな観光開発をして行く。既に観光もこのようなグローバルな時代に来ているということが出来る。

  例えば、宿泊施設は鉄道網の行き届いている橿原市や桜井市に任せ、そうした、隣接市町村とも連帯して世界に発する観光を視野に置いて整備する。エコ・ツアーというのは、日本よりも海外、殊に欧米に見られる発想であるから、受け入れ態勢を整え、世界に発信して行けば、効果は期待出来る。言わば、日本の中の「明日香」だけではなく、世界に誇れる明日香あるいは大和の南部域ということになる。これは琑末なことかも知れないが、レンタサイクルにしても、体の大きい外国人にも合うサイズの自転車を多少は揃えるくらいの心遣いから始めなくてはならないだろう。

 それに、これは明日香だけのことではないが、大和や近畿圏に集中する大和王権に関わる古墳群をユネスコの世界遺産に申請することなども一案として考えられる。天皇の陵墓ということでネックになるかも知れないけれど、他の世界遺産も参考にし、研究する必要はある。大和の古墳群が世界遺産に登録されれば、強力な観光の目玉が一つ増えることになる。

  この古墳群というのは、日本の国家形成期の遺産で、世界にも十分通用し、現在の日本国の存在との歴史的結びつきということも世界の人々に知ってもらえるという利点があり、観光にも役立てられる。とにかく、現状に甘んじて手をこまねいているだけでは発展を見ることは出来ない。言わば、外国人観光客の呼び込みが出来る態勢にもってゆくことが求められている時代に来ているように思われる。日本の象徴富士山が登録されたのであるから、「日本の故郷」明日香をはじめとする大和ならびに近畿圏の古墳群の世界遺産登録は可能であると言える。まずは、「隗より始めよ」である。