大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年05月17日 | 写詩・写歌・写俳

<258> 大和高原の茶畑

        茶畑や あふるるものの 五月かな

 大和の東北部に当たる大和高原では茶摘みの季節を迎えた。今年は冬に寒さが厳しかったので茶摘みの時期が遅れるとみられていたが、四月が暖かかったので例年通りになったという。早いところではゴールデンウイーク中から始められているが、これからが最盛期で、茶畑は茶摘みを控えた新葉で瑞々しく、今が一番美しい季節である。

 奈良県は静岡、鹿児島、三重、京都、福岡、宮崎に次ぐ日本茶の産地で、高級茶としてお馴染みの宇治茶で知られる宇治から山城に続く大和高原が主な産地で、大和茶の名で美味しい茶を産している。

 大和茶は、平安時代のはじめ、弘法大師(空海)が唐より実を持ち帰えり、播いたことによるという。これについては以前に述べたが、『喫茶養生記』を著した栄西の持ち帰りより古く、宇陀市榛原赤殖の仏隆寺に弘法大師(空海)が持ち帰ったとされる茶碾が遺され、それを物語っている。

                                              

 大和高原は標高五百メートル前後の台地が広がる山間の地で、チャノキの生育に適した冷涼なところで、低い山がそこここに見られ、それらの山を伐り拓いて造られた茶畑が多く見られる。茶畑はチャノキを畝状に刈り込むので、その整然とした畝が模様になり、美しく見えるが、茶摘みのころの新葉の畝は殊に瑞々しく美しい。

 今日は妻が天理市の病院で、年一回の検査に当たる日で、妻を病院へ送った。その後、待ち時間が長いというので、その待ち時間の間、大和高原へ出向いた。畝はみな新葉を出し、摘み採りを待つばかりに見えた。写真は手入れが行き届き、整然とした畝が広がる茶畑(ともに奈良市の田原の里で)。 では、今一句。 端正の 末の喜び 一番茶