大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年02月13日 | 祭り

<164> おんだ祭り (御田植祭) (5)
         福の種 播くはよきかな 春が来る
 十一日の建国記念の日の夜に行なわれた磯城郡川西町の六縣(むつがた)神社のおんだ祭り(御田植祭)に少し触れてみたいと思う。このおんだ祭り(御田植祭)は「子出来おんだ」と呼ばれ、妊婦が登場し、子供が生まれる所作の見られるのが特徴としてあり、奈良県の無形民俗文化財に指定されている。
 この日はすぐ西隣りの生駒郡河合町の廣瀬神社で名高いおんだ祭り(御田植祭)の砂かけ祭りが行われる関係もあるからだろう、ここでは時間帯をずらし、夜に行なわれる。六縣神社はいたって小さな神社で、 祭りも地域住民のみが参集するささやかなものであって、他府県からも見物に訪れ賑わう砂かけ祭りの比ではないが、 こちらの「子出来おんだ」も昔から庶民の間で行なわれて来た土俗的祭りの感じがあって、私には見ていて楽しものがあった。
 祭りを執り行っている敬神講の資料によると、 祭りは今から千年ほど前の平家が台頭していた藤原時代に遡るという。定かなことはわからないが、ひっそりとした集落の中の神社に今も絶えることなく継承され続けている祭りには目を瞠らされるものがあった。
                
 諸式は狭い拝殿上の板の間で行なわれ、 厄年の男子が中心になって所作役を務め、 祭りは、祝詞と御祓いの後、水見回りの所作に始まり、牛使い、施肥、土こなげ(土をこなしてならすこと)、田植え、田螺拾い、妊婦の弁当運びと安産の所作が順次行なわれ、最後に福の種の種蒔きの所作をもってお開きになった。
                                              
 所作の行なわれた拝殿には子供たちが周りを囲もように座り、所作が行われる度に所作役を囃したて、一つの所作が終わる度に子供たちが一斉に所作役に躍りかかって、所作役が蹲ってしまう光景が見られた。これは厄を封じ込めるという意味合いがあるのではないかと思われるが、大人と子供が心を一つにする遊び心があるようにも思われた。これも地域の絆というか、祭りの継承に関係していることが感じられた。
 写真は上段左から、水見回りをする農夫役、田を耕す牛役と牛使い役、ツバキの葉を肥料に見立て施肥の所作をする農夫役、 木の鍬で土こなげをする農夫役、 ツバキの枝葉を早苗に見立てて田植えの所作をする農夫役、 見物の子供たちに叩かれる田植えの農夫役。 下段は左から、 田螺拾いをする農夫役、 見物の子供たちからヘビがいると囃される弁当運びに登場の妊婦役、陣痛を講の長に訴える妊婦役、太鼓を無事に生まれた子供に見立て、取り上げたその太鼓を抱いて喜ぶ講の長、大きな掛け声とともに福の種を撒く種蒔き役。 種を撒くと見物衆から「よんなか(世の中)よけれども福の種蒔こうよ」という声が一斉に掛けられた。祭りが終り、拝殿を後にする人々。