大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年02月01日 | 祭り

<152> 粥占い (筒粥祭り)
        豊凶を 占ふ 筒粥祭りかな
  二月一日の未明、奈良市石木町の登彌(とみ)神社で作物の豊凶を筒粥で占う筒粥祭りがあった。登彌神社は奈良市の南西部、富雄川の近くに鎮座する高祖霊神(たかみむすびのかみ)を祭神とする式内社で、 毎年二月一日に奈良県の無形民俗文化財に指定されている筒粥による「粥占い」の神事(筒粥祭り)が行われ、七月七日、九月七日、 十月八日には豊作祈願と収穫の感謝を込めて「湯立て」の神事も行われる。
      
  今日は冷え込みの厳しい中、氏子や神官、地元の自治会関係者らが未明から神社に参集し、大釜に米と小豆と水を入れ、これに長さを二十センチほどに切り揃え、凧糸でスダレのように連ねた節のない親指の太さほどの竹筒を丸めて入れ、マメの木で焚きつけた火で二時間ほど炊いて、小豆粥を作った。
  神事は午前六時ごろから始められ、まず、炊き上げられた小豆粥の中から竹筒を取り出し、 神前に供えた後、神官や年番の氏子総代らによって竹筒が割られ、中に入っている米粒と小豆の多少を見分け、占った。多く入っていれば上で豊作、少ないのは下とされ不作ということで、上上・上・中ノ上・中・中ノ下・下・下下の七階級に分けて豊凶を占うもので、コメの品種から占われた。

  今年は竹筒三十八本が入れられ、三十七品目について占った。一本は予備という。 占いの結果は拝殿に貼り出され、地元の農家の人たちがメモしていた。今年の上、つまり、豊作と出たのはコメのあすかみのり、秋津穂、たかさご餅、野菜類の小豆、キュウリ、超促成イチゴ、ヤマノイモ、ナスだった。 
占いが終わるころにはすっかり夜も明け、 参拝者は炊き上がった小豆粥を相伴にあずかり、祭りは午前八時過ぎに終了した。 この粥占いは全国的に行なわれているが、いつごろ始められたかははっきりしないようである。 だが、 登彌神社では粥を炊く大釜に元禄八年の銘があることから、江戸時代には既に行われていたのではないかという。