一、米トランプ政権は、13日(日本時間14日午前)、シリア政府側が化学兵器を使用したと断定し、英仏とともに、シリアへの軍事攻撃を行った。
化学兵器の使用は誰によるものであれ、人道と国際法に反する残虐行為であり絶対に許されない。シリア現地では14日にも、化学兵器禁止条約の実施機関である化学兵器禁止機関(OPCW)が調査を開始する予定だった。
国際社会による事実の確認もなく、国連の授権もないまま、米英仏が一方的に軍事攻撃を開始したことは、国連憲章と国際法をふみにじる行為であり、厳しく抗議する。
一、米国は、昨年4月にも、化学兵器使用を理由にシリアを攻撃しているが、軍事攻撃では問題解決にならないばかりか、シリアと中東の情勢をいっそう悪化させることにしかならないことは、事実が証明している。
国際社会が協力して、化学兵器使用の真相をつきとめ、化学兵器を全廃させ、シリアに関する国連安保理決議が提起しているように政治対話による内戦解決にむけた外交努力を強めることを求める。
米英仏、シリア攻撃
― 事態の解決に逆行する暴挙
アメリカ、イギリス、フランスの3国は13日(日本時間14日)、シリア政府軍がダマスカス近郊で化学兵器を使用したと断定して、シリアの研究開発施設や軍事施設を対象に軍事攻撃を行いました。
無差別な大量殺りく兵器である化学兵器の使用は誰によるものであれ、人道と国際法に反する許されない行為です。しかし、国際社会による事実の確認もなく、国連安保理の決議もない国際法違反の攻撃は、問題の解決につながらず、複雑化したシリア内戦をさらに悪化させ、中東地域の平和と安定に逆行する暴挙です。
真相究明を困難に
アメリカは昨年4月にも単独でシリアの化学兵器使用を口実に軍事攻撃を行いましたが、緊張を激化させるだけでした。今回の作戦は、巡航ミサイルによる攻撃のほか米空軍B1爆撃機、英・仏の戦闘機の参加も報じられています。
シリアは化学兵器禁止条約の加盟国であり、同条約に基づいて活動する化学兵器禁止機関(OPCW)が、シリアでの化学兵器使用の調査を14日に始める予定でした。シリア政府は昨年10月にも、化学兵器使用を国連とOPCWの合同調査チームに指摘されています。シリア政府は事実を隠すことなく真相究明に全面協力することが求められています。
米英仏が、調査より軍事攻撃を先行させることは、こうした真相究明を難しくするものです。
アメリカとロシアは国連安保理でそれぞれ独立調査機関の設置を提案しながら、互いに実現を阻んできました。国際社会として協力し真相究明と化学兵器の全廃に力を尽くすべきです。
トランプ米大統領が、一方的な軍事力の行使をあたかも当然のようにみなしていることは、同氏の「アメリカ第一」の危険性を改めて浮き彫りにしました。攻撃前に、「ロシアよ、準備しておけ。ミサイルが行くぞ」などと脅しを繰り返したことは、軍事行動が大国を巻き込んだ紛争にまで発展しかねない重大な可能性をもてあそぶものです。軍事力行使へ自制のきかない人物が米大統領の任にあることは、強い懸念を呼んでいます。
7年におよぶ悲惨なシリア内戦は、ロシアとイランがシリア政府、アメリカがクルド人勢力、欧米とトルコやサウジアラビアが反政府武装勢力を支援し、さらにアルカイダ系のテロ組織が流入し入り混じるなど、外部勢力の介入により国際紛争化し、複雑化しています。
「この紛争に軍事的解決はありません」(グテレス国連事務総長、13日)。この間、内戦終結をめざす国連安保理決議2254(2015年12月採択)を基礎に、シリア和平協議のプロセスが断続的に進められてきました。各国は、外部からの軍事介入ではなく、困難はあっても、停戦と政治的解決を追求すべきです。
追随でなく外交努力を
安倍首相は、米英仏による不法な軍事攻撃を「これ以上の事態の悪化を防ぐための措置と理解している」と昨年に続き支持を表明しました。これは、国連決議に基づかない国際法違反の軍事介入を正当化し、内戦悪化をもたらす側に日本を立たせるものです。日本は何があっても米国を支持する追従ではなく、シリア和平に向け米ロをはじめ各国に働きかけるなど、外交努力こそ強めるべきです。
米英仏、シリア攻撃
米英仏3カ国は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとしてシリア時間14日未明、首都ダマスカス近郊などの化学兵器関連施設を攻撃しました。巡航ミサイル「トマホーク」が発射されたもようです。トランプ米大統領は米東部時間13日午後9時ごろ、シリアに軍事攻撃を行うよう、米軍に指示したと発表しました。
今回の攻撃は、国連決議も、米国議会の承認もないもとで強行されました。マティス米国防長官は同日、シリアが化学兵器を使用したことを「確信している」と述べましたが、国際社会が確認したわけではありません。
トランプ氏は13日夜ホワイトハウスで声明を読み上げ、「われわれの行動の目的は化学兵器の生産、拡散、使用に対する強力な抑止の確立だ」と攻撃を正当化。「シリアが化学物質の使用を中止するまでこの対応を維持する」と述べ、今後も軍事攻撃をする可能性を示唆しました。また「犯罪的なアサド政権を支持している」と、ロシア、イランを名指しで批判しました。
米国防総省によると標的となったのは化学兵器研究開発施設や化学兵器貯蔵施設など3カ所。シリア国営テレビは発射されたミサイルを13発、撃ち落としたと発表しました。
シリア内戦をめぐっては、アサド政府軍が7日に、反政府組織が支配している首都ダマスカス近郊の東グータ地区ドゥーマを空爆。この攻撃で、化学兵器が使用された疑惑がもたれ、米国や欧州諸国は一斉に非難していました。シリアはこれを否定し、ロシアは「証拠がない」と反論していました。