新聞記者時代の先輩、Iさんを偲ぶ会が先日、中之島のイタリア料理店でありました。一緒に働いた35人が集まり、特ダネ記者だったIさんを偲んで思い出話に花を咲かせました。Iさんは胆管がんが膵臓、骨まで広がり、5月16日、病院で亡くなりました。79歳でした。自宅に安置されたIさんは安らかな、いい顔をしていたそうです。
その3日前、私は先輩2人とともに病院に見舞いに行きました。車いすで病室から現れたIさんは体調は良く見え、40分以上にわたって病状や病歴、これまでの生き方などを語りました。疲れを残してはいかがと思い、途中でナースセンターに「話を続けて良いでしょうか」を尋ねたところ、「ご本人が話をしたいようなら、話してもらって結構です」と言われました。
それで、とうとうと続くIさんの話を聞いていましたが、40分を越えてから「そろそろ、おいとましよう」となりました。あとから見舞いに来られた80代の先輩記者が「頑張れよ」と励ましました。Iさんは「あと3日の命だよ」と小声ながら、はっきりした声で言いました。私たちは言葉を失いました。
この言葉通り、Iさんは3日後に天国に旅立っていきました。今年1月、あまりに体がだるいので、主治医の診断を受けたら、膵臓の腫瘍マーカーが正常値の10倍以上あり、すぐに入院しました。主治医の先生に「覚悟はできています。隠さないでほしい。あとどれくらい生きられますか」と尋ねたら、「長くて6月いっぱい」と告げられたそうです。
Iさんは、権力側が闇に埋もれたままにしておきたい不祥事を掘り起こす特ダネを次々とスクープした記者でした。私にとっては、記者としての覚悟から取材の仕方まで教えていただいた「先生」でした。先輩、安らかにお眠りください。