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研究開発費を回収するため、アジア企業に技術を売却し、自らの首を絞めるような状況を招いた

2015年08月31日 | 経済

低収益下で投資や研究開発費を回収するため、アジア企業
に技術を売却し、自らの首を絞めるような状況を招いた。


2015年8月31日 月曜日

もうかるかどうかは「産業構造」をみよ 8月27日 佐藤文昭 日経新聞

■電機メーカーの競争力低下に「分散」と「技術流出」

 産業構造をお話しする前に、日本の電機メーカーがなぜ競争力を低下させたかを考えてみます。非常に優秀な人が大手メーカーに入社し、みな一生懸命働いているにもかかわらず、1990年代半ばから国際的な競争力がどんどん落ちました。よく日本の電機メーカーの経営者が為替の影響だとか、人件費が高いだとか、税金が高いだとか言い訳していましたが、自動車など国内の他の製造業と比較しても収益性が悪く、業界固有の問題があることは明白でした。

 わたしは日本ビクター(現JVCケンウッド <script type="text/javascript"></script> )の技術者から始まり、証券アナリストとして電機業界に長く関わってきましたが、収益悪化の要因は以下に集約されます。1つは参入企業が多いために人材や資金といった、いわゆるリソースが分散してしまったこと。もう1つは低収益下で投資や研究開発費を回収するため、アジア企業に技術を売却し、自らの首を絞めるような状況を招いたことです。

 日本企業には勝てるパターンというのがあります。それがもうかる産業構造です。それは欧米企業が市場に残っていて、日本の会社が割と少なく、かつアジアがあまり参入してきていないという産業です。このケースでは、価格の決定権を持つプライスリーダーが欧米企業になるので、日本企業は得意とする技術でコストダウンを進め、シェアをアップすることができます。決して欧米企業を潰したり、買収したりしてはなりません。

個人として「もうかる産業」に投資

 だから自動車や建設機械、複写機がもうかるんです。たとえば建機は米キャタピラーがいて、日本はコマツ <script type="text/javascript"></script> と日立建機 <script type="text/javascript"></script> 。複写機も米ゼロックスがいて、日本はキヤノン <script type="text/javascript"></script> やリコー <script type="text/javascript"></script> です。両業界ともアジアで有力企業は見当たりません。こうした産業はもうかるので海外に技術流出させる必要がありません。地道な研究開発はアジア企業は不得手なので簡単にはキャッチアップされない。もうかる産業であれば極端な話、経営がどうであれ、うまくいく可能性が高い。

 逆にもうからない産業とは、電機のように日本の企業の数が多く、アジア勢が多く参入している場合です。日本勢はアジア勢との消耗戦になります。特に技術が海外に流出してコモディティー化した製品は競争がさらに激しくなります。

 わたしは個人投資家としてもうかる産業を投資対象にしています。ちょうどアベノミクスが始まる2、3年前から投資を始め、機械とか、電子材料とか、自動車部品とか10銘柄ぐらい保有しています。株価に変動は付きものですが投資のタイミングが良かったせいか、かなり利益が出ていますよ(笑)。

 有望銘柄の条件である国際競争力の高さをみるうえで参考にしているのが売上高営業利益 <script type="text/javascript"></script> 率。もうかる産業に属する企業は営業利益率も高いといった相関性が認められます。この指標が高い企業を選んでいます。

■アナリスト時代は電機株を買い推奨せず

 ただし、電機株は持っていません。電機業界に深く関わっているので襟をただす意味もありますが、実はアナリスト時代も01年以降は大手電機メーカーの株を一度もバイ(買い)で推奨したことはありません。事業の絞り込みがある程度見えていた三菱電機 <script type="text/javascript"></script> と日立製作所 <script type="text/javascript"></script> だけがニュートラル(中立)で、それ以外はすべてセル(売り)でした。実際、三菱電と日立は他社に比べ株価のパフォーマンスが良かったはずです。

当時から改革の多少の進展はありますが、いまも電機業界全体としては状況は大きく変わっていません。ソニーの改革も半ばという印象です。事業をどういう方向にしたいのかがわかりにくい。米ゼネラル・エレクトリック(GE)ですら金融事業を売り、あらゆるモノをインターネットにつなぐIoT(インターネット・オブ・シングス)事業にシフトしようとしている。

■ソニーも改革は道半ば、シャープや東芝に課題

 ソニー <script type="text/javascript"></script> こそ、IoTを目指してほしい。ところが金融、不動産、半導体と、とりあえずもうかるものは残すといったまさにシナジーがない戦略です。そういう意味ではソニーもまだ総合電機メーカーです。

 シャープ <script type="text/javascript"></script> も総合メーカーに近い。シャープは何が強みかというと、やっぱり液晶 <script type="text/javascript"></script> であったわけです。わたしがビクターにいるころから地道に開発していて、液晶の育ての親といえる。だから液晶を残すんだったら他のものは売らなくてはいけない。たとえば、複写機を売るとかです。

 不適切会計に揺れる東芝 <script type="text/javascript"></script> もどういう会社にするのかが、まだ見えていません。変動が激しい半導体や、10年、20年のスパンの原子力とか、社会インフラがあるという。利益が出ないところを、出そう出そうとするからああいう問題が起こってくるんだと思います。根っこはそこです。

 およそ20年間のアナリスト時代は、いっこうに再編が起こらない状況に危機感を持ちました。いっそのこと自分の力で動かしたいと思い、まず07年にメリルリンチ日本証券の投資銀行部門に移籍し、2年後に知り合いの著名バンカー2人とともに産業創成アドバイザリーを設立しました。

■自ら再編を主導、M&Aの助言会社を設立

 アナリスト時代には大手電機メーカーの経営者や技術者、マーケティング <script type="text/javascript"></script> 関連といった方々とコミュニケーションする機会に恵まれ、貴重なネットワークを築けました。もともとビクターの技術者から証券アナリストに転身したのも、父親が大手電機メーカーから脱サラし電子部品の製造装置の会社を経営していた関係で、電機メーカーの経営に興味があったからです。産業創成アドバイザリーで日立、東芝、ソニーの中小型液晶事業を集約したジャパンディスプレイ <script type="text/javascript"></script> の設立にこぎ着けられたのも、アナリスト時代のネットワークが生きました。

 この案件では大手電機から事業を分離・独立させることが重要でした。なぜなら大手電機は経営者も従業員もリスクを取らない「大企業病」に陥っていたからです。これはリソースの分散と技術流出という問題に次ぐ第3の問題で、より大きな問題でもあります。

 いわゆる「大企業に入ったんだから安定」みたいな風潮です。起業家精神がなくなってしまったので、だったらもう一度ベンチャー企業に戻すためには、外に出そうと。その答えがジャパンディスプレイでした。

■日立、東芝、ソニーの中小型液晶事業を統合

 統合は実際は簡単ではなく、常に破談のリスクがつきまといました。やっぱり3社いるといろんな誘惑があり、1社が台湾企業から誘われて、抜けそうになったり。それは結構大変でした。統合が2社だけだと、離脱した1社がアジア企業に技術供与すると想像できました。説得が実を結んだ産業革新機構(09年7月設立)の資本参加も含めて2年以上かかりましたが、最終的になんとかまとめることができました。

 ジャパンディスプレイは課題もあります。昨年3月に東京証券取引所第1部に上場しましたが、業績を3度下方修正しました。液晶パネル市況の悪化だけでなく、大きな要因はシナジー効果 <script type="text/javascript"></script> が発揮できていないことがあります。東芝は製造技術に、日立は財務・経理に、ソニーはマーケティングとか開発にそれぞれ強みがあります。この3つが全部いいとこ取りすれば、すごい会社になるはずです。

■統合のシナジー効果発揮には時間

 6月には新しい最高経営責任者(CEO)が就任しましたが、社内の融合に向け強いリーダーシップを期待しています。三菱電や日立から独立したルネサスエレクトロニクスが試行錯誤の末、設立から10年以上を経て業績が安定しつつあるのは偶然ではないでしょう。ジャパンディスプレイも時間がたてばシナジー効果が出てくると信じています。

 GEはちょうど80年代後半から90年代に、欧州のシーメンスやフィリップスもそれから10年遅れて90年代後半から00年代に事業ポートフォリオ <script type="text/javascript"></script> の組み替えを始めました。そういうふうにだんだん日本の会社もなってくるんじゃないですか。



(私のコメント)

日本の電気業界がいろいろ問題を抱えていますが、電機業界は参入がしやすく企業が乱立して過当競争になってしまうからだ。過当競争で低収益だから開発費を回収するために、せっかく獲得した技術を韓国や中国に売却して自分の首を絞めてしまった。

古い生産ラインを韓国や中国に売却すれば、製造ノウハウも丸ごとコピーされてしまう。電気業界がそうしたのは、少しでも利益を得るためですが、韓国や中国は同じものを低価格で出してきた。研究開発費がかかっていないから安く作ることが出来たからだ。

最近では、さらに利益を出すために技術者のリストラをして、人材ごと韓国や中国に技術流出させている。これでは日本の電気業界が自滅するのは目に見えている。大企業の経営者はサラリーマン社長だから長期的な戦略が建てられず、自分の任期の4年で結果を出さなければならない。

その為には、中国や韓国に技術を売る事すらする。もし高収益分野を抱えていればそんな事をする必要はないのですが、サラリーマン社長ではベンチャー精神が乏しく、新分野に打って出ることが出来ない。せいぜいM&Aで外国企業を買収する程度であり、外国市場で失敗する。

新規分野を創出させるには10年から20年のタイムスパンが要りますが、4年任期のサラリーマン社長ではそれが出来ない。ならばベンチャーを立ち上げて新しく創業して、創業社長が軌道に乗るまで担当すべきなのだ。しかし大企業になるとエリート社員ばかりになって、独立起業する人がいなくなる。

最近の電機大手では、正社員を首にして数千人規模でリストラしていますが、それがサラリーマン社長が業績を上げる手段だからだ。もちろん好きでやっている訳ではないのでしょうが、4年で社長が交代していてはトップシェアを維持する事が難しい。人材が分散してしまうからだ。

液晶分野にしても、ソニーが韓国のサムスンと手を組んだことで技術が流出してしまった。シャープにも台湾企業が資本参加を申し出ていますが、シャープも液晶分野を分離してジャパンディスプレイに移すのではないだろうか? 東芝の粉飾決算も低収益分野で頑張っていても意味がない。

4年任期のサラリーマン社長では、選択と集中と言っても軌道に乗るまでは10年近い年月が必要になるだろう。東芝に関しても半導体と原子力に集中しましたが、両方とも上手く行っていない。しかも会長や名誉会長や相談役などの形で会社に残るから、社長の権限は形だけになってしまう。

佐藤文昭氏によれば儲かる業界と言うのは、「それは欧米企業が市場に残っていて、日本の会社が割と少なく、かつアジアがあまり参入してきていないという産業です。このケースでは、価格の決定権を持つプライスリーダーが欧米企業になるので、日本企業は得意とする技術でコストダウンを進め、シェアをアップすることができます。決して欧米企業を潰したり、買収したりしてはなりません。」という事です。

原子力産業にしても、GEやWHと言ったアメリカの原子力産業分野を買収したのですが、軽水炉型の原発では儲からなくなっている。フランスの原発企業も大赤字だ。安全性にカネがかかるのでは意味がない。しかし火力発電ではCO2の問題があり原子力発電も見直される時が来るだろう。

日本の電気産業は企業再編が必要なのですが、大企業ではリスクが取れず分離再編が必要だ。大企業のエリート社員ばかりでは分離してベンチャーになる事に大きな抵抗が起きる。新分野を開拓するには多額の資金と年数が必要ですが、大企業はすぐに利益になる事業にしか投資しない。

そうなると参入しやすい製品が多くなり、競合他社が多くなり低収益化が進む。欧米などではネットに特化した事業集約が進んでいるようですが、ソフト開発には非常に年月がかかりブラックボックス化すれば競合他社が出来にくくなる。ロボット産業などもソフトがカギであり、自動車なども組み込むソフトで性能に差がつく。

日本の電気産業はコンピューターのOSの開発に失敗してアメリカに利益をみんなもって行かれた。自動車もアップルやグーグルが参入しようとしていますが、自動運転が当たり前になり、車だけでは低収益で儲からなくなる時代が来る。


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