株式日記と経済展望

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権力者は孤独でなければならない。世襲のお坊ちゃん総理では無理なのだ。

2009年06月18日 | 政治


by CyberBuzz

権力者は孤独でなければならない。相談相手がいないと耐えられない
人物は権力者にはなりえない。世襲のお坊ちゃん総理では無理なのだ。


2009年6月18日 木曜日

西川・日本郵政社長は、本当に辞めないつもりなのか? 6月17日 山崎元

 もう一点付け加えると、日本郵政が民間会社だから、政府がその経営に介入するのはおかしいという理屈は通らない。日本政府は現在100%の株式を保有する株主であり、株主として経営をチェックするのは当然のことだし、郵政民営化を決めた日本郵政株式会社法は日本郵政の取締役人事に対する総務相の認可権限を規定している。

政府から資本が入っているのに政府は民間会社に株主の権限を行使できないとする考え方を採ると、政府の出資会社は一種の治外法権的な勝手な行動を取ることができるようになる。経営幹部の給料を公務員よりも高くできるし、行動も自由で、しかも大株主からの追及を受けない。官僚側からみると、これは特殊法人の好都合な進化型なのかも知れない。

 原則として、経営介入が不適当な場合には政府が民間会社の株式を持つべきでない。加えて、政府が過半の株式を持っている会社を「民営化した」と呼ぶのは国語的な間違いだろう。

 さて、これだけの問題を抱えて、かつ政府・与党のお荷物になりながらも、西川氏が日本郵政の社長ポストにとどまり続ける理由は何だろうか。鳩山前総務相に「正義・不正義の問題」などと言われて、かえって引けなくなってしまったのかも知れないが、それだけが理由なのか。これから起こることに対して、西川氏が是非とも社長を務めていなければならない事情があるのだろうか。

 一説には、東京中央郵便局跡に高層ビルを建てて、かつて三井住友銀行時代にUFJ銀行を横取りされて煮え湯を飲まされた東京三菱(当時)の本社を見下ろすまで辞めないのだという噂があるが、そこまで子供じみた意地は張るまい。

 ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の金融2社は2010年にも株式上場を予定しているが、この際に、西川氏が親しいとされる、三井住友銀行やその系列の証券会社、あるいはゴールドマン・サックス社などに何らかの便宜を図るのではないかという憶測もある。確かに、これら金融2社の将来の上場やそれ以外にもビジネス上の行動は、大きな「利権」になりうるが、この問題は現時点では推測に過ぎない。

 ただ、少なくとも、巨大な利害が絡む今後の金融2社の上場に向けて、日本郵政の行動には十分な監視が必要だろう。それにしても、西川社長は、本当に辞めないつもりなのだろうか。



漂流総理の漂流国家 6月13日 田中良紹

自民党が参議院選挙に惨敗した直後の07年8月に「権力者になりきれない総理が小泉政治と決別か」というコラムを書いた。この時の総理は安倍晋三氏だが、今度は麻生総理に対して「権力者になりきれない総理が小泉政治に屈服か」と書かなければならない。麻生総理が盟友の鳩山総務大臣を更迭した人事を見て、権力者としての資質のなさを改めて痛感させられた。

 私がかつて安倍元総理を「権力者になりきれない総理」と書いたのは、人事のやり方を見ての判断である。安倍元総理は総理就任後の初の人事で麻生太郎氏を幹事長に起用しようとした。ところがその重要人事を森元総理に相談し、その結果中川秀直氏を幹事長に押し込まれた。そもそも主要人事を他人に相談するところに権力者の資質のなさを感ずるが、問題なのは二人の密談がメディアに流れ、あたかも最高権力者が森元総理に操られている印象を世間に与えた事である。そしてその事を安倍氏は平気で黙認した。

 選挙惨敗後の改造人事で安倍氏はやっと念願の麻生氏を幹事長に起用する事が出来たが、その時にも問題があった。組閣を前にして頻繁に麻生氏と密会している事がメディアに流れた。麻生氏が幹事長にならないのなら問題はないが、幹事長になるのであれば、その密会を決してメディアに報道させてはならない。総てを幹事長に相談しなければ決められない総理だと思われてしまうからだ。そして就任した麻生幹事長は安倍元総理を差し置いて高らかに「小泉政治との決別」を宣言した。

 「権力者は孤独でなければならない。政敵は権力者の胸中を知るためにありとあらゆる手段を弄する。秘書はおろか家族にまで蝕手を伸ばしてくる。だから権力者は自分の家族にすら本音は語らない。(中略)相談相手がいないと耐えられない人物は権力者にはなりえない」とその時コラムで書いた。

 昨年9月に「解散をするための総理」として麻生総理は誕生した。しかし就任直後の世論調査で自民党が衆議院選挙敗北の可能性が高いことを知り、急遽解散・総選挙を先送りした。そこから迷走と漂流が始まった。麻生総理が漂流する様を見ていると、どうも権力者にのみ許される「政治のシナリオを書くこと」が出来ないようである。(中略)

その程度だから事態は勝手に動き出し、シナリオがないために暴走を始めた。暴走は気付いた瞬間にブレーキをかけなければ誰も止めることが出来なくなる。しかし次のシナリオが用意されなければブレーキをかけることも出来ない。一方で麻生総理に挑発された小泉陣営は、西川社長の続投を郵政民営化の象徴と位置づけ、あっという間に西川続投のシナリオを作り上げた。小泉改革路線に賛同した財界人を取り込み、自民党内からも「西川続投を認めなければ麻生降ろしが始まる」との声を上げさせた。

 シナリオを持たない権力者は何の決断も出来ずに事態を悪化させ、遂にクラッシュの時を迎えた。権力者は当初の考えを翻し、西川社長続投を認める裁定を下した。政治家は戦うのが仕事であるから戦いに利があると思えば鳩山総務大臣が裁定に従う筈はない。それが今回の鳩山総務大臣更迭劇に至る経緯だと私は思う。こうして「小泉政治との決別」を叫んでいた権力者が戦いのシナリオも書けずに「小泉政治に屈服」した。

 もはやこの国には権力が不在と言うしかない。政治はただ漂流するのみである。今回の出来事はその事を教えている。これで解散は再び遠のいたなどと馬鹿なことを言う人もいるが、もはや解散する権力も空白になったと私は考える。麻生総理が何を大義名分に解散出来ると言うのか。今や国家の漂流を止めるために国民が権力を作り上げるしかない。麻生総理に代わって国民が解散・総選挙を仕組むしかない。



(私のコメント)
今週のワイドショーなどにおける自民党議員の発言などを聞くと、下野を覚悟したような雰囲気が漂ってきている。地方選挙の三連敗が効いて来ているし、東京都議会議員選挙も形勢は悪く惨敗すれば麻生総理は辞任に追い込まれるだろう。日本郵政問題で鳩山大臣と西川社長の対立で西川社長のクビが切れれば支持率も上がったのでしょうが、鳩山大臣のクビを切った。

麻生総理が鳩山切りを決断したのは菅義偉や安倍晋三が鳩山切りを促したからですが、森喜朗や青木幹雄は喧嘩両成敗を主張していた。このように麻生総理は周囲からやいのやいのと言われて動いているようですが、これでは政権の求心力は弱まる一方だ。田中良紹氏が書いているように、最高権力者は最後は自分で決めなければならないのであり、各方面にお伺いを立てていたら権力にならない。

小泉純一郎は郵政民営化法案で参議院で否決されて絶体絶命のピンチに立ちましたが、憲法違反と思われるような衆議院解散に打って出て大勝利した。麻生総理はそのような大博打が出来るはずもなく小泉一派に妥協して鳩山大臣のクビを切った。大博打が切れるような総理大臣なら勝てる見込みもあったのでしょうが、妥協する総理では負けるだろう。

日本の総理大臣はアメリカの大統領よりも権力があり、議会の解散権まで持っている。しかし憲法でいくら総理大臣の権力を持たせても権力を行使できる総理でなければ意味がない。権力者は孤独に耐えなければならないのですが、安倍、福田、麻生とお坊ちゃん総理は周囲の意見を聞きまくって権威を落としてしまう。小泉総理は断固として聞かなかった。だから5年半も政権が持ったのだろう。

安倍内閣でもお友達内閣と呼ばれましたが、麻生内閣もお友達内閣だった。麻生総理はそのお友達にも裏切られて後任人事もままならず兼任大臣が続出している。それだけ麻生内閣は自民党内からも見限られているのですが、自民党には人材がいなくなってしまった。

ならば民主党なら良いのかというと民主党も鳩山由紀夫代表は世襲のお坊ちゃん議員であり、小沢前代表の影がちらつく。このように自分で決断が出来ない最高権力者だと権力が分散していって、誰が最高権力者なのかが分からなくなる。もちろん忠実で優秀な私的なスタッフがついていることが必要ですが、どういうわけかお坊ちゃん総理にはスタッフがいない。苦労していないから優秀なスタッフを使いこなす事ができないのだ。

各省の大臣程度なら役人の言いなりにやっていれば誰でも勤まるかもしれない。だから4,5回当選すると大臣のイスが回ってくる。国会審議でも役人の渡してくれるメモを読んでいれば何とか勤まるだろう。しかし総理大臣となるとそんな訳には行かなくなる。全て一人で決めなければならない事が毎日山のように押し寄せてくる。麻生総理がブレルのは人の意見に左右されるからであり、人と相談しないと何も決められない性格なのだろう。

組織のトップは正確な判断を素早く下す能力に秀でていないと出来ませんが、世襲のお坊ちゃん議員では親がみんなしてくれる。秘書や後援会もみんな親譲りであり、若くして国会議員になるから周りからちやほやされて叩かれる事が少ない。だから試練の場に立たされると直ぐにへこたれて仕事を投げ出してしまう。麻生総理もいずれ仕事を放り出すだろう。

日本郵政の西川社長は修羅場を潜り抜けてきた社長だからがんばれるのでしょうが、ヤクザや裏社会とも繋がりのある人物だ。お坊ちゃん総理を手玉に取るくらい朝飯前であり、各方面に手を回して麻生総理をがんじがらめにしたのだろう。麻生総理ももはや打つ手が無くなり成り行き解散で選挙して下野するだけだろう。せっかく西川社長解任の切り札がありながら、それを生かすことが出来ず国民の反発を招いている。

小泉・竹中を売国奴として告発して選挙に打って出れば勝てたかもしれない。ワイドショーでは小泉竹中一派を応援するだろうが、もはや国民は二度と騙される事はないだろう。小泉チルドレンが落選して小泉一派の力は無くなる。しかしもはや手遅れだ。

シナリオは小泉一派の思惑通りに動いている。日本郵政はゴールドマンサックスに叩き売られて、340兆円の資金運用はゴールドマンサックスに渡る。その手数料は数兆円になるだろう。

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Unknown (Unknown)
2009-06-18 14:56:13
TORAさんよ、

>日本の総理大臣はアメリカの大統領よりも権力があり、

って正気で言ってんの?
Unknown (Unknown)
2009-06-18 15:10:31
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-cc03.html
Unknown (あああああ)
2009-06-18 15:11:19
対朝鮮人用マニュアル「韓国人の世界」基地外対策にもつながります。
http://www37.tok2.com/home/koreanworld/
ぜひ比較してみてください。

自己愛性人格障害とはありのままの自分を愛せず、自分は優越的で素晴らしく特別で偉大な存在でなければならないと思い込む人格障害であるとされる。
・誇大な感覚
・限りない空想
・特別感
・過剰な賞賛の渇求
・特権意識
・対人関係における相手の不当利用
・共感の欠如
・嫉妬または他人が自分に嫉妬していると思い込む
・傲慢な態度
上のうち5つ以上が当てはまると自己愛性人格障害の可能性がある。

反社会性人格障害(いわゆるサイコパス)の7つの特徴
・社会的規範に順応できない
・人をだます、操作する
・衝動的である、計画性がない
・カッとしやすい、攻撃的である
・自分や他人の身の安全を全く考えない
・一貫した無責任さ
・他の人を傷つけたり虐待したり、物を盗んだりした後で、良心の呵責を感じない
これらのうち3つがあてはまった場合精神科医の多くは反社会性人格障害を疑う。

「朝鮮人はなぜ太平洋戦争を喜んだのか」狡猾な戦略が覗われます。
http://www.nagaitosiya.com/a/korean_strategy.html
朝鮮人と日本人の歴史
http://mirror.jijisama.org/index.html
Unknown (Unknown)
2009-06-18 15:15:50

「在日米軍基地は、日本防衛のためではない‥‥」--このほど、元自衛隊最高幹部が、このような主張をしていたことが判明しました。
これは、自衛隊元幹部らが集まる「安全保障懇話会」(会長・山崎拓元防衛庁長官)の会誌『安全保障を考える』2月1日号での冨沢暉元自衛隊陸上幕僚長の言葉。
同氏は「日米安保体制はこの57年間の世界情勢の変化の中で大きく変貌したにもかかわらず、日本の防衛は日米安保条約により米国が担っていると考える国民がいる。しかし実態は、アメリカは自国中心の世界秩序維持・存続のため、同国の国益実現のために日本に基地を置いている‥‥」という論旨のもので、年末の「防衛計画の大綱」見直しに向けて、自衛隊増強、日米同盟強化を提言するなかで、いみじくも告白した本音です。
これまで日本政府は、日米安保条約について「米国は日本を防衛する義務を負い、日本はそのために米国に施設・区域を提供する義務を負う」と説明してきましたが、米国はアフガン・イラク戦争など自らの世界戦略のために在日米軍基地を自由に使ってきました。日米安保条約が、そんな「日本防衛」とは無関係な同盟関係に“変質”したことに「アメリカは日本を守るのか」との疑問や批判があがっています。今回の元自衛隊幹部の発言は、そんな日米同盟の虚構性を認めた形です。



http://www.youtube.com/watch?v=2-VUy07gzLE
Unknown (Unknown)
2009-06-18 15:15:50

「在日米軍基地は、日本防衛のためではない‥‥」--このほど、元自衛隊最高幹部が、このような主張をしていたことが判明しました。
これは、自衛隊元幹部らが集まる「安全保障懇話会」(会長・山崎拓元防衛庁長官)の会誌『安全保障を考える』2月1日号での冨沢暉元自衛隊陸上幕僚長の言葉。
同氏は「日米安保体制はこの57年間の世界情勢の変化の中で大きく変貌したにもかかわらず、日本の防衛は日米安保条約により米国が担っていると考える国民がいる。しかし実態は、アメリカは自国中心の世界秩序維持・存続のため、同国の国益実現のために日本に基地を置いている‥‥」という論旨のもので、年末の「防衛計画の大綱」見直しに向けて、自衛隊増強、日米同盟強化を提言するなかで、いみじくも告白した本音です。
これまで日本政府は、日米安保条約について「米国は日本を防衛する義務を負い、日本はそのために米国に施設・区域を提供する義務を負う」と説明してきましたが、米国はアフガン・イラク戦争など自らの世界戦略のために在日米軍基地を自由に使ってきました。日米安保条約が、そんな「日本防衛」とは無関係な同盟関係に“変質”したことに「アメリカは日本を守るのか」との疑問や批判があがっています。今回の元自衛隊幹部の発言は、そんな日米同盟の虚構性を認めた形です。



http://www.youtube.com/watch?v=2-VUy07gzLE
Unknown (Unknown)
2009-06-18 15:17:57
小沢は
大学出てすぐ
社会経験ほぼナシで
親父の政界地盤をそっくり引き継いで、
あっさり政治の道に入った。

麻生は
大学出た時点では政治家になる気はなく、
就職後、会社を経営して結果を出すなど社会人としての経験を経た後、
親父がとうの昔に政界引退して古くなった地盤で政治の道に入った。


……小沢のほうが世間知らずの二世ボンボンだわな。
だからカメラの前で「笑い続ける精神力」がない。

国を背負って立つ気なら、いい歳した男がカメラの前で泣くな。
そんな政治家、国民から見たら頼りになんかできないだろ。
Unknown (Unknown)
2009-06-18 16:12:37
郵政民営化については誰の言い分が正しいんだかさっぱりわからん。どちらもお互いに自分のブログで言いたいことだけを言って反対の意見の人とは議論しないからなあ。

http://kinny.iza.ne.jp/blog/entry/1084103/
つまり滑稽なことに、竹中さんは、むしろ麻生官僚政権、郵政族官政権にとって、まだしも甘い方なのだ。小生のように、世界標準での保守回帰を求める存在からみれば、彼も、まだまだ既得権益やバ官僚に優しい存在なのだ。



そんな彼に対してさえも

「売国」(笑)

などと罵声を浴びせる郵政民営化反対論者の蒙昧愚劣・共産主義マンセーは、もはや治療の施しようもないほどにバカを極めているといってもよかろう。



もちろん、ほんとうの経済の問題は上のようなものではなく、おそろしく一面的な事象を、怖ろしく簡略化して並べただけだ。だが、一部の産業を保護すると称して、その実、官僚の利権や族官政治家の得票を保護しているだけの実体に気付かず、いつまでも共産主義根性のドレイよろしくアホウな官僚踊り自民マンセーを続けているエセコン連中に、それ以上のハナシをしても、

「外国勢力に利益を吸い取られるだけだ」

と、何の脈略も確かな背景もな呪術がまた繰り返し発されるだけなので、このようにした。


ったくバカバカしいよ...以上だ!
Unknown (Unknown)
2009-06-18 16:14:50
小泉改革を先取りした
ニュージーランドのいま(1)●かつての福祉国家がたどった道と、そこから学ぶこと
立命館大学産業社会学部教授 芝田 英昭
 小泉首相は、「民間でやれることは民間で」のキャッチフレーズの下に規制緩和を推し進めようとしています。民営化によって、サービスはよくなり便利になると言われていますが、果たしてその通りなのでしょうか?ニュージーランドは、小泉構造改革を先取りする形で、84年より大胆な規制緩和・民営化政策を行いました。日本の構造改革は私たちに何をもたらすのでしょうか。その狙いと現実を明らかにするために、ニュージーランドはよい例となります。協会は、10月1日に「ニュージーランドの保健・福祉改革と看護事情」の学習会を開催するとともに、本号より2回にわたり、立命館大学産業社会学部教授芝田英昭氏による論考を掲載し、郵政改革に象徴される小泉構造改革が進むことで、その先にはどのような社会が訪れるのかを考えていきます。

はじめに
 筆者は、ここ10年近くニュージーランドの規制緩和や社会保障に関し研究してきた。そのような折、01年9月から02年8月まで勤務大学の在外研究資金を得て、ニュージーランドの首都ウェリントン市にある国立ヴィクトリア大学に研究員として勤務することができた。

 筆者がニュージーランドに滞在して感じたことは、日本で紹介されるニュージーランドが「緑豊かな国」「規制緩和に成功した国」とあまりにも一面的だということである。そこで、ニュージーランドの現実を紹介することで、いまわが国政府が進めている方向性について、自ら考えていただければ幸いである。

1、かつてニュージーランドは「南半球の福祉国家」であった
 ニュージーランドがかつて「南半球の福祉国家」として北欧福祉国家と並び称されていたことは、あまりにも知られていない事実である。1877年には世界に先駆けて「義務教育の無償化」を実施、1893年には世界初の「女性選挙権」(被選挙権は、1919年実施)を認め、26年には世界で最初に「家族手当」を導入した。また、38年には総合的生活保障体系を持つ「社会保障法」の実現をみた。その後、47年に英国から独立し英連邦の一員となったニュージーランドは、70年代まで経済的に英国に完全に依存し、それを背景に世界第3位(1人当たりの国民所得)の高水準の生活を維持し、高度な「福祉国家」を築いた。 

 しかし突如ニュージーランドは、84年から労働党政権下で福祉国家とは程遠い規制緩和大国・市場国家へと変貌した。その道程は、わが国が小泉政権の下で「三位一体の改革」として推し進めている戦略と極似している。ニュージーランドがどのような道をたどったのかは、わが国にとってさまざまな意味で参考になる。

Unknown (Unknown)
2009-06-18 16:14:54
2、福祉国家から市場主義国家への変貌の背景
 73年、英国がEC(現EU)に加盟したことにより、ニュージーランドは英国との特恵的関係(英国の農場)が破綻し、またこの頃、長年の国内産業に対する国家による広範な保護と規制により輸出産業(羊毛、羊肉、乳製品等)が国際競争力を低下させていた。それに追い討ちをかけた73年と79年の2度にわたるオイル・ショックにより、農業を中心とする一次産品の輸出、石油および工業製品を海外に依存する経済構造が破綻した。

  81年、マルドゥーン国民党政権は貿易構造の脆弱化を痛感し、輸入石油の国内エネルギー源への代替化の開発、輸出促進を目的とする大規模な「Think Big Project(大改造構想)」に乗り出したが、多額の債務(このプロジェクトだけで最終的に60億NZドル)を抱えて失敗した。その結果、経済成長率は、1・8%にまで低下し(75~85年平均)、インフレ率は、戦後の平均5・5%から13・2%(75~85年平均)に上昇した。公的純債務は、4・7億NZドル(74年3月末)から110億NZドル(84年3月末)に膨れ上がってしまった。

 80年代のこのような経済状況が、福祉国家放棄から市場主義国家への要因であったと考えられる。

3、80・90年代の改革とは
 (1)労働党政権(84年7月~90年10月)による規制緩和・経済改革

 労働党(中道左派政党)は、政権奪取と同時に、ロジャー・ダグラス蔵相(当時)の下、ロジャーノミックスと言われる経済改革(経済の自由化、市場化)を開始した。具体的には、(1)貿易・金融の自由化、(2)農業補助金・輸出補助金制度の廃止、(3)物品・サービス税(GST、日本の消費税に相当)10%の導入、(4)緊縮財政政策の導入などであった。

 87年12月、減税、産業保護の緩和、政府資産売却益による対外債務返済などの経済施策を発表。同年に、ニュージーランド郵政省(New Zealand Post Office)は、公社化され、郵政3事業の1つ「通信事業」は、89年4月1日より国営事業になると同時に参入の完全自由化が図られた。さらに、90年8月には通信事業が民営化され「テレコム・ニュージーランド株式会社(Telecom New Zealand Ltd)」となった。「貯金業務」は、89年4月に廃止され、また「郵便事業」は、公社として98年まで運営された。

  89年に就任したパーマー首相は8月にGSTを12・5%に引き上げ、これによって消費が抑制された。また、インフレ対策のため金融引き締め政策を続けた結果、回復しかけた景気が冷え込んでしまった。さらに、高金利によりNZドルの為替レートが上昇し、輸出が伸びず輸入が増え、貿易収支が悪化した。こうした状況の下で労働党の人気が下がり、さらに90年に入り経済成長率がマイナスに転じたことで、90年10月の総選挙では国民党(中道右派政党)に敗れてしまった。

 (2)国民党政権(90年11月~99年11月)による規制緩和・社会保障改革

 国民党政権下では、規制緩和の対象が経済・行政分野から社会保障・労働分野へとシフトした。ボルジャー首相の下、リチャードソン蔵相は就任早々の90年12月19日に「総合経済政策」を発表し
Unknown (Unknown)
2009-06-18 16:16:49
91年4月から所得保障(Income Support)支出を項目別に2・9%から24・7%削減することを表明した。91年、家族手当の廃止。失業給付、寡婦給付、家事専従手当の一律15%カット。また同時に、労働者が雇用主と自由に契約を結べる「雇用契約法」(The Employment Contracts Act)が実施され、労働組合への強制加入制度が廃止、任意加入制に移行したことで、労働組合の力が劇的に低下した。この時、失業者が史上初めて20万人を超えてしまった。

 92年、医療費の一部負担の導入およびニュージーランド・スーパーアニュエーション(ニュージーランド老齢年金)の支給開始年齢の60歳から65歳への引き上げ(00年までに段階的に)。Bank of New Zealand(ニュージーランド中央銀行)の民営化。93年には第二次ボルジャー政権が発足し、高齢者・障害者サービス改革を開始。国立病院の企業化にも踏み切った。

 96年10月、国民党とニュージーランド・ファースト党(極右・アジア系移民排斥主義政党)が連立政権を樹立。所得税減税を掲げ、所得税率を6段階(20、30、40、50、60、66%)から3段階(15、21、33%)へ簡素化した。98年、自動車輸入関税を撤廃したことにより、三菱、日産、本田、トヨタ等が組立工場を相次いで閉鎖した。99年4月には、老齢年金支給水準を現役労働者平均賃金の65%から60%に引き下げた。政府は同年7月には、ACC(事故災害補償制度。日本の「労働災害補償保険」に相当)の民営化に踏み切り、さらに同年、世界的趨勢とは逆に、18歳から飲酒を認める酒類販売法を制定させた。

 公社化されていた郵便事業は、98年4月1日より郵便事業法に基づきニュージーランド・ポスト株式会社(New Zealand Post Ltd)という商業事業体(Commercial Entity)として、全株式が政府によって所有される特殊法人となった。また同年からは手紙郵便事業の完全自由化がなされ、02年6月時点で27社の郵便事業への参加が確認されている。

4、規制緩和・市場主義はニュージーランド人の生活をどう変えたか
 (1)郵政事業の企業化と問題点

 87年、郵政3事業「郵便、郵便貯金、通信」が国営から国有企業に分割されたことで、同年郵便事業は、NZ Post Ltd(ニュージーランド・ポスト社)になった。さらに、郵便貯金は89年にオーストラリアのANZ銀行へ売却、通信事業は90年にアメリカのBell Atrantick社(ベル・アトランティック社)に売却され、Telecom NZ Ltd(テレコム・ニュージーランド社)になった。郵政事業は国有企業化の後、98年4月には、郵便事業の参入自由化(The Postal Services Act)がなされた。98年当初30社以上の企業が郵便事業に参入したが、00年時点で28社が経済開発省に登録、NZ Post Ltd最大のライバルと目されていたNational Mail社(ナティオナル・メール社、00年3月に証券市場に上場)が、00年12月に営業を停止した。01年時点でNZ Post Ltdのシェアーは96・5%で、実体的には独占状態が続いている。言われていたような規制緩和による競争はまったく起こらなかった。またポスト・ショップ数の減少という形で、辺地でのサービスの低下が起きている(表)。




 またNZ Post Ltdは、コストの上昇を理由に04年4月5日から国内通常郵便料金を5セント値上げし45セントとした。

 通信事業の場合、87年の企業化直前に2万5千人いた従業員がその直後8千人にまで削減された。ちなみに、国家公務員は85年の8万5千人から96年には3万4千人に激減している。

 89年以来ANZ銀行に売却されていた「郵便貯金」は、国民の強い要求で02年4月、Kiwi Bank(国民銀行)として復活した。

 筆者は02年6月28日に、ニュージーランドの首都ウェリントン市国会議事堂周辺の郵便配達員をしているイクコ・パーキンソン(Ikuko Parkinson・当時満59歳)にインタビューすることができた。

 同氏は、38歳で旧郵政省に郵便配達員として勤務しインタビュー時は21年間在職していた。同氏は郵便事業が企業化されたことで「労働者より使用者側の権限がずいぶん強くなりました。企業化後、5年間で毎年1割の職員削減を実行するために、組合つぶしの専門家をアメリカから招き、組合の幹部に利益供与…例えば休日期間を大幅に増やすなど…をしてそれを実施していきました。組合の幹部が、組合員に対し郵便袋(Postbag・封筒や手紙の入った布製の大袋)を隠すなどのハラスメント(嫌がらせ)も日常的に行っていました」と実態を詳細に語った。また企業化後、極度に労働条件が悪化したことも指摘した。1人当たりの配達区域・配達距離の拡大、さらに、企業化前は郵便配達員は全員Permanent Employment(常用雇用)であったが、その後は Casual Employment(不定期雇用)やTemporary Employment(臨時雇用)のパート・タイマーに換えられてしまった。

 現在わが国では、郵政民営化論議が活発になされているが、ニュージーランドのたどった道を考えると、それは金融業界やアメリカからの要求によるものと考えられる。結局、ひとえにアメリカおよび同国企業の繁栄のみを求めるものであり、日本の国民を思いやってのことではないことを十分に認識しなければならない。

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◇ニュースクリップ   ・マイケルさん追悼式で遺体公開か   ・「1Q84」BOOK1だけで100万部   ・宮崎駿を世に出したら面白い人生 ぐちゃぐちゃの自民党、薄汚い現実が垣間見えるの二人に輪をかけた、トンデモ首 相が分かると、今度はま...