森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

花粉症の経済効果

2006-03-10 18:28:19 | 時事ネタ

花粉症の季節だ。

そこで花粉症の人相手に、スギがない地域が観光客として呼び込むツアーが広がっているそうだ。北海道の上士幌町や鹿児島県奄美大島などである。これはアイデアかもしれない。花粉症のおかげで新しいビジネスチャンスが発生したのである。

花粉症によってどれほどの利益が失われたか、という試算をたまに見かける。しかし、あえて花粉症による経済効果というのも考えてみてもよいのではないか。

花粉症患者を扱う医療関係者薬品、マスクなどのグッズ類は、収益が減るだろう。漢方やお茶、ヨーグルトなど花粉症に効くことを売り物にしているものもある。民間療法的な、商品も見かけるから、案外大きい。それに上記のツアー主催者も困る。マスコミも風物詩としての話題に困るかもしれない。花粉症関係のHPも結構たくさんある。
さらに花粉症対策という名の元に行われている緊急間伐・枝打ちなどもなくなると、森林組合などは仕事が減るかもしれない。

いきなり花粉症が消えたら、結構経済的にはマイナスが起きるのではないか。

こんな意地悪なことを考えたのは、花粉症も生態系の一部であり、人間社会の一部になっているのではないか、と思ったからだ。同じことは、ほかにもある。

たとえばダムを作れば、その河川の生態系は破壊される。ダム湖に沈む上流だけでなく、流量が減る下流も何らかの影響があるだろう。そこに住んでいた生物の中には絶滅するものもいるかもしれない。
しかし、10年20年とたつと、ダム湖の止水域に適応した生物が住み着くだろう。少ない水の下流にあった魚類も増えるかもしれない。
そこで、ダムを撤去したら、そうした生態系を再び破壊することになる。ついでに言えば、仮にダムが発電していたら、その発電量を補う別の施設がいることになる。それら全体の影響も考えないとなるまい。

こんな例もある。北海道の川は、蛇行する部分を工事で短絡させるところが多く、そこには蛇行部分が三日月湖になる。すると三日月湖内に取り残された回遊性の魚が、海に下れず陸封性に変化して珍しい形態種が生まれたのだ。
ところが約50年後に、やっぱり川を蛇行させて自然を取り戻しましょう、という工事が始まった。しかし三日月湖を河川とつなぐと、陸封性の珍しい魚類は滅んでしまうという問題にぶつかった。さあ、どちらを選択すべきか。

一つの事象を気に食わないと取り除くと、新たな事態を生み出すことがある。それを元にもどすと、新たな破壊を引き起こす。そこまで考えて実行するか否かを選ばないといけない。

このように物事を考えるのを、私は「生態系思考」と呼んででいる。もちろん自然界の話だけでなく、経済などにも適合するはずだ。