山歩きをした。
すると、なぜかため池ばかりにぶつかる。まだ現役のものから、ほとんど堆積物で埋もれ、水も涸れているものまで。
いうまでもないが、ため池は、人が作ったものだ。それも山の中のものは、谷をせき止めたものが多い。おそらく作った時は、自然破壊だったのだろうな、と思う。谷の生態系を激変させたのだ。しかも貯まった水は、濁ってしまった。流れ出る水も堆積した泥と腐食した落葉などの有機物が溶け込み、清流とは言えなくなっただろう。
その結果、命を断たれた生物も少なくないはずだ。
それがいつのまにか、周囲の生態系になじみ、今や貴重な水辺になっている。ため池なしでは生きられない動植物も多いはずだ。止水域だから産卵できる昆虫類とか水棲昆虫もいるだろうし、最初は人が放したのかもしれない淡水魚も増えてくる。もちろん、貝類や水草もある。
大型動物だって、水場に欠かせないかもしれない。鳥類の餌場になる可能性もある。つまり、里山の生態系の中にため池は組み込まれている。
…とまあ、そんなことを考えながら山の中を彷徨していた。自然破壊と生態系の創成は紙一重の差かも。
さて、今では農業が廃れ、ため池も管理されずに消えつつある。それは自然破壊か、それとも自然の復元か。