コヨイノサンブン

日記のような、私信のようなもの。あるいは、記憶の記録。

「トニー滝谷」

2005-02-03 16:17:31 | movie

観ました、「トニー滝谷」

芸人の名前のようにユーモラスなタイトル、知ってる人も多いんじゃないかな。同名の村上春樹の短編が原作です。
内容は原作の通り、トニー滝谷というイラストレーターの物語。


感想。
とにかく、あらゆるものが、美しい。

場面ひとつひとつが、まるで写真のように洗練されています。だけど、決して無機質ではなくて、質感や空気を感じる余白をたっぷりと持たせ、観る人が自分の記憶を知らず手繰ってしまいそうな。
静かに流れていく主人公の時間を、断片的に、そして思い切り淡々と切り取っています。

始まった途端、引き込まれるのは、映像もさることながら「声」。
ナレーションも登場人物たちのセリフも、映像と同じく静謐だけど肉迫した録り方で、
聞いているとどきどきします。
音楽が坂本龍一なんですけど、決してそれが突出せず他にとけ込んでいて好印象でした。


主演はイッセー尾形。一人芝居が有名ですよね。一度見に行きたいと思っている俳優です。
決してハンサムではなくて。
でも、すごく個人的な感想になりますけど、わたしイッセー尾形演じるトニーのようなタイプの男性が好みです。
他との迎合を嫌い、不器用に自分の道を進んでいくような人。
一見するとありふれた「おじさん」という印象の外見ですらありますが、彼の顔に刻まれた皺、髪、肉体、眼差し……どれもそういう生き方をしてきた証だと思うと、愛しくて、セクシーにも見えます。

トニーの妻役は、宮沢りえ。
わたしがこの世で一番綺麗だと思う女優さんです。華奢で、どこか壊れそうな儚さがあって、でも無垢で。
ちなみにイッセー尾形も宮沢りえも、この映画では二役を演じます。(イッセー尾形の二役は、最後まで分からなかった。わたしが鈍なのかもしれないけど、うまいなあと思いました)


前に観た「ヴィタール」と同じく愛しい人を亡くす物語なんですが、ヴィタールで与えられたような悲壮感はまったくありません。
スピーディーでもエキサイティングでもなく、娯楽性に富むかと言われれば疑問なのですが……心に残るものはたくさんあって、とっても好きなタイプの作品でした。自分の中のベストランキングに入ります。

メイキングで「晴れた家」という作品も別の劇場でやっているので、そのうち見たいと思います。



*うう、ログが長いですね、ごめんなさい。でも好きな俳優の出ている好きなタイプの映画に出あえると嬉しくなるというか興奮するというか。でもこれは、たぶんかなり好き嫌い別れる作品だとも思いました。

最新の画像もっと見る