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侘び助 |
先日焼成した作品の窯出しを行った。
ハラハラ、ドキドキしながら扉を開いた。
工房の薄明かりの中に、希望通りの水色が顔をのぞかせた。
今朝薄日がさしていたが、昼も過ぎた頃から小雨が降りだした。
スニーカーを履いて玄関戸を開けたその時、シトシトと降りだした。
これ位の雨どうってことないと歩き始めたが、次第に強く降りだした。
仕方ない、今日の歩きは中止、そう決めて作品の整理を行うことにした。
でもせっかくカメラを首にかけている、何かの被写体が欲しい、家の庭を回ってみた。
この冬は咲かないだろうと諦めていた 侘び助 が冷たい雨の中、一輪花びらを開いていた。
大きさは大人の親指くらい。 かなりの小ぶりの 侘び助 である。
私の背丈くらいの大きさの木、その小枝には3輪の花。
昨年はたわわと言うくらいに、びっしりと花がついていたが、今年は ひとつ、ふたつ、みっつ。
降りだした冷たい雨に耐えるように、しいの木の横でひっそりと咲いていた。
歩きは中止と決めたし、作品の整理を行うことにした。
今回の作品焼成、色は美しい焼き上がりとなったが、青磁釉薬が剥がれ落ち、
作品の半分がダメになってしまった。 なぜ?原因が分からない。
かなりの注意を払って釉薬がけを行ったのに、このような結果になってしまった。
手の込んだ壷5個も、ダメになってしまった。
今日にたどり着くまでに作品の殆どが完成しているが、今回の結果は心が痛む。
しかしいつまでもガックリしているわけにもいかず、気持ちを切り替えて次の作業に移ることにした。
仙台・藤崎個展用の作品はすべて揃い、焼きあがった作品の中から候補を選び出し、
それぞれを再び検品。
厳選した作品だけを出品作品と決定する、そのようにして壷類の作品選びを行った。
青磁、窯変鉄耀、窯変紅彩(辰砂=しんしゃ) の作品39点が揃った。
次は お茶関係の作品、酒器類、そして食器類の選定を行う。
ギリギリまで制作し、窯焚きを行ってきたが、何とか作品もそろい心からホッ。
窓の外には小粒の雨、やみそうにもない。
昼に撮った 侘び助、やわらかい和紙のような花びらが、雨のしずくの重みに耐えてくれるように。
この雨が上がる頃、家の前の鎮守の杜、桜がほころび始めるかもしれない。