『STAY』
リリース:2006年7月26日
作詞:佐原けいこ
作曲:日比野元気
収録アルバム:『SMAP 018/Pop Up! SMAP』
調性:B♭
『Pop Up! SMAP』には、バラードの佳作が多い。
『STAY』も良いけど、『星空の下で』、『Simple』もかなりの名曲として残りそうだ。
という程度の認識しかなかった。
ところが私の予想以上に『STAY』の評価は高く、アルバム『SMAP AID』に収録され、2014年夏に放送された『武器はテレビ。SMAP×FNS 27時間テレビ』(フジテレビ系)のノンストップライブにも選曲されたことからも、それが窺える。
『世界に一つだけの花』の時と同じく、どうも私は、SMAP史に名を残すであろう名曲を探知する“嗅覚”が弱いのか。
単に好みが偏っているのかもしれないのだが。
そして、2015年暮れから2016年明けにかけて放送された『CDTV年越しプレミアライブ2015-2016』(TBS)において、メドレーの形でもこの曲が歌われた。
つまり、2016年のほぼ最初に、SMAP5人で歌われた曲と言える。
その時は、よもや2016年がこんな一年になることをいったい誰が想像しながら聴いただろうか。
『STAY』に始まり、『STAY』に終わる2016年だった。
いや、2016年どころか、発売時の2006年ですら、この先『STAY』がこれほどまでの求心力を持ち、SMAPとファンの間を結ぶ宿命を担うとは。
ちなみにこのプレミアライブの構成は、香取慎吾がドラマ撮影で多忙のため、中居正広が担当したとのことだった。
2015年の終わりを迎えようとする頃、中居は、この曲をどんな心境で選んだのであろう。
ファンを喜ばせることに、常に真摯な彼のことである。
何のメッセージも込めないということは、まず考えられない。
楽曲に対して淡々としている中居のようだが、『STAY』に関してはエピソードがある。
歌い出しの木村拓哉の歌うソロ部分が長いのは、当初、中居正広と数フレーズずつ交互に歌う予定だったところ、レコーディング前に中居から、
「木村が全部歌う方がいい」
と提案したからだという。
リリース当時はウェディングソングとして人気のあった曲だが、時が経つうちに、曲の持つ意味合いが変化していき、2011年の震災を経て、今年の騒動。
具体的な理由を何も語らないメンバーの心中を慮りつつも、真実を知るよすがとしてファンはSMAPの楽曲に答えを求めた。
とりわけ、騒動直前に歌われた年初の『STAY』には注目が集まった。
♪この先どうしようもなくすれ違ったり
言い争いがあったとしても
どうか道の途中で手を離そうとしないでよ
ちゃんと繋いでてよ
歌詞は徹頭徹尾、“共にいること”“共に歩むこと”を相手に求める内容である。
SMAPを愛するファンが、解散騒動後、ブログやSNSなどで何度も何度もこの曲の歌詞を引用し、必死にメッセージを読み取ろうと命懸けだった。
そして先日発売された『SMAP 25 YEARS』の投票結果では、1位となる。
12月21日にNHK-FMで放送された『ゆうがたパラダイス』ではSMAP特集が組まれ、パーソナリティの津野米咲は、
「50曲のうち、2006年に発売された、しかもアルバムの曲が1位に選ばれたんですよ。これがどれほどすごいことか。世の中のみんなサラッとしすぎだと思う、この件について」
と語った。
SMAPとファンを取り巻く状況をこの歌詞に重ね合わせることで、逆にファンからSMAPへ宛てた入魂のメッセージともなった。
このようなやり取り(が成立していると仮定して)を交わすたび、たとえ今年一年のような騒動に翻弄されようとも、SMAPのファンでよかったと心から誇りに思う。
メンバーは自分の口から何も語らないことをもどかしく思う向きもあるが、彼らはラジオで、タイミングに適った選曲をすることで、確かに我々に言葉にできない思いを伝えてきたのである。
ファンではない一般の人々にとっては、「1位は『世界に一つだけの花』じゃないのか」、「知らない曲だ」という感想を持つ人が多いかもしれない。
しかしファンにとっては、必然的な結果だった。
この曲でなくてはならなかったのだ。
SMAPへ、全身全霊で想いを発信するためには。
さて、それでは。
行こうか。
賽を振ろう。
手を離してはならない。
決して手を離してはならない。
ずっと隣にいよう。
我々はまだ、まだ道の途中でしかない。
SMAPが私たちにそう語っているじゃないか。
SMAPには、まだまだ私たちと一緒にSTAYしてもらおう。
5,60年まで、まだたっぷりある。
これ以上の願いはないんだ。
♪I’ll be … Won’t you stay?
SMAPさん『STAY』の歌詞