湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

場所の詩パート2

2016-12-11 01:54:52 | オリジナル
共通テーマ「場所」でAが書いた詩を投稿します。

薄められた場所

幽霊の父は私に甘く
弟に厳しかった
けれど
影のない存在から現実の棘を
弟が受け取ることはなかった
半世紀以上前の父の愛が
未だ私に届いていないのと同じだ

町を出る――
寂しく単純な理由は
邪魔者という役割だ
夢なんて
どの場所にも見ていなかった

町を出る――
そんなことに夢や希望を
見てしまう馬鹿と
姉を罵って
その場所に根をおろしている

お前の腐った安心感すら
私の羨望の対象だ

私が出て行った場所に
弟は四十年以上居る
その間に三人家族になり
四人と一匹になり
また三人に戻り
母親と二人になり
今は一人

私がいた十年は
弟の四十数年で薄められ
ほとんど消えているから
私は通行人のようだ
私の問いに答えは返らない

可能な限りの早口でさよならと言い
これ以上ない素早さで
弟の車を降りた
被害者の顔はしたくない
三十年前に出た町の駅から
急いで電車で逃げていく
弟もこれ以上ない素早さで
胎内をめざすように
ハンドルを切って
消えていった
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読者の弁を聞くメリット

2016-12-09 12:04:47 | 

合評会で作者が読者の感想や批評を聞ける、その場で質問を受けることもある、すぐに答えることができる――その最大のメリットは、自作を客観できることです。

率直な意見が聞けることの価値
読者あっての作品だから、他の人がどう読み取ったか、読んでどう感じたかを知ることはかなり重要。しかし日常の場面で誰かに自作の詩を読ませたって、せいぜいお世辞っぽい適当な感想を言われておしまいでしょう。だから自作について歯に衣着せぬ意見が聞ける合評会に価値があるのです。
そこで自分で意識していなかった自作の長所や欠点を知ることができます。
複数の人から同じ欠点を指摘されてヘコむこともあるけれど、誰もが欠点だと思う分かりやすい過ちを犯したということだから、次に同じ轍を踏まないようにすればいいだけです。いろいろなことを言われると一瞬混乱するかもしれないけれど、批評にはたったひとつの正解があるわけではないから、とりあえず全部参考にして、ゆっくり咀嚼してから取捨選択してもいい訳です。
自分が選んだ言葉、そしてその組み合わせが人にどんなイメージを与えるか、それが狙い通りかどうかが分かるし、複数の人の感想を聞くことで、受け取り方のバリエーションも分かります。ということは、参加者に年齢・性別・その他属性のバリエーションがあった方がより望ましいということになりますね。
辛口批評になってしまった時、評者が気を使ってフォローし過ぎると、作者にとって結局いいのか悪いのか分からなくなってしまうので、口先だけの褒め言葉や励ましは不要です。

保身的態度をとらないこと

顔を合わせてしゃべるからこそ生まれる信頼感や安心感を基に、俎上に載ったら自分を守ろうとせず、素直に意見を聞きましょう。
傷付けようとしているのではなく、役立ててもらうために評者は意見を言っているのですから、欠点を指摘されてキレたり、聞き入れようとしなかったり、言い訳を並べ立ててはいけません。そんな態度をとったらせっかくの機会が台なしになります。

事前に書き写しながら読む

湘南文芸では、場当たり的な意見を言うのではなく、真剣に批評ができるように、各自が合評対象の全作品を当ブログから書き写して合評会当日持ってくるという原則があります。作者が参加人数分プリントして当日配るのではないのです。
目だけで読むよりも手を動かすことで脳を活性化させながら一字一句を逃さず味わうことができて格段に勉強になり、ただ読んだだけでは気付かない細かい部分にも気付けるからです(自分自身の作もその例外ではありません)。当日その場でさっと読んで意見を言うよりもずっと深い合評会になるので、こう決めているのですが、事前書き写しがなかなかできないんだな~。仕方なく、筆写できなかったらコピペプリントしてきてもいいよ、人に見せてもらったりその場でスマホ画面から作品を読むのは、書き込みができないからダメだよ、ということにしているのですが、守られません。
このルールどうしましょう
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作者の弁を聞くメリット

2016-12-08 00:20:33 | 

↑お手軽な新書で詩作を学べます。「詩が生まれるとき」は、逗子市立図書館から借りて読みました。

さて、湘南文芸は月に1~2回詩の合評会をやっています。
顔を合わせて批評し合う最大のメリットは、作者の弁を直接聞けることではないでしょうか。
作者の弁を直接聞けると、評者にはこんな効果があります。
◯自分にはなかった詩作の動機を知り、発想やモチーフに幅が出ます
◯作者の意図に添ったよりよい書き方を提案でき、それによって自らの詩作の訓練になります
◯事前に読んだ時の自分の解釈が的確だったかどうかを確認できて、鑑賞力が鍛えられます

他にもこんなメリットを感じているよということがあったら、是非知らせてね!
次回は、合評会で読者の声を直接聞けるのが作者にとって具体的にどんなふうにプラスになるか考えてみたいと思います。
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場所の詩パート1

2016-12-07 01:07:09 | オリジナル
新しい共通テーマ「場所」でAが書いた詩を投稿します。

越境者の死

人工の擁壁に守られた理想郷に
うかうかと入り込んだわたしは
家具の埃を払うように
黙ってはたき落とされ
雄弁な静けさを
みっともなく破る

泣き声と涙と洟水で聖域を穢し
更なる侮蔑を冷たく浴びる
石畳に醜く張り付く
迷惑以外の何ものでもない
わたしの臓器から
捨てたはずの羞恥の
滓さえも脱走していく
ほら そこの坂を転がって
消えていく

不便も贅沢になる温暖な地区で
高額の物件管理費を難なく支払い
風光明媚という古びた世辞を
薄皮の表面で受け流す精巧な傲慢は
君たちが死んだって次世代の君たちに
紐のついた血統書に
蛇の心の豚に 
周到に受け継がれる

わたしの心臓は爆発した
物欲しいよそ者の
居たたまれなさを隠すには
それしか途はなかった
まあ そんなものだ
だいぶ前から飽きてもいた
地上で脈打つことに
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新テーマなど

2016-12-05 21:16:22 | 日記

今日は12月の定例合評会でした。新メンバーも含め全員集まれました。12月の割には暖かい日でよかったです。
3時間みっちりやったけれどやり残しが出たので、パート2をやることにしました。
臨時合評会 12月3日(火)14:00~ Aの「失う」「こぼれる」の詩8編を対象に行います。
新しいテーマは場所に決まりました。
提出締切はメール1月3日(火) レターケース12月27日(火)です。
来年1月の合評会は新年会を兼ねて1月6日(金)12:30~松汀園で行います。
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泉鏡花 鎌倉での足跡

2016-12-04 17:53:41 | 文学
逗子ゆかりの文豪泉鏡花は、隣町鎌倉にも足跡を残していました。

この文学案内板があるのは材木座の妙長寺。山門前に日蓮像が建ってます。

上の写真の右下、板塀のところに鏡花のことを記した文学案内板が設置されています。
10代で作家を志して上京し、明治24年7~8月に妙長寺に滞在した後、10月に思い切って尾崎紅葉の門を叩き弟子入り。
で、作家デビュー後20代の時(明治35年)と30代の時(明治38~42年)に逗子に滞在したんですね。
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よく思われようとしていては書けません

2016-12-03 23:02:27 | 
永瀬清子「短章集」を読みました。その中から詩を書く姿勢についてビシっと述べている箇所を引用します。
 
 打ちあけて本性をさらけ出すことの上に詩は成りたっている。
 ボロをみせず、とりつくろい、心の底を絶対にかくしたがっている人には詩は書けない。
 つまり自分の価値判断の浅さの故に、相手によく思われようとだけしている人はだめなのだ。

 (短章集 流れる髪「砥ぎ辰の討たれ」より) 
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プレバト俳句 白息

2016-12-02 21:04:41 | 文学
昨日オンエアされたプレバト!!俳句査定のお題は、冬の足湯でした。

特待生昇格試験でワンランク昇格を果たし3級に進んだミッツ・マングローブの作品  白息の旅湯にぶらりふくらはぎ
下五の「ふくらはぎ」がいいですよね。夏井先生も「ゆったりとした気分が表現できている」と評価。
そこは生かして、調べをなだらかにする方向で添削した句がこちら  白息のぶらり旅湯のふくらはぎ
プレバト俳句見続けている内にやっぱ必要なんじゃないかと思うようになり、歳時記買いましたよ。
「冬・新年」の巻の白息の例句に、こんな素敵な作品が載ってました。
身籠りてより白息の濃くなれり 木内怜子
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失うの詩パート10

2016-12-01 16:02:04 | オリジナル
ボーナスもらっちゃった 10月中にせっせと働いて、もとい、スタンプラリー愉しんでおいてよかった~。

では、共通テーマ「失う」でAが書いた詩を投稿します。

子宮の焼失

蠢いていた闇が停止したのは
わたしが生まれた日付の
二日後のことだった

快哉を叫ぶ
光の温度を眩しがる
開けた景色に放たれる
わたしに
きみは大声で笑いかけた
他者から糾弾される素直さを
わたしたちはいつの間にか極めていた

その二日後
萎びた袋が焼かれ
灰はちりとりから斜めに落ち
壺の蓋が閉められた

存在している間に
米噛みが痛くなるほど
充分に問い尽くした
答えを寄越さない袋だった


「失う」「あふれる」の詩の締切は12月2日(金)です。
次回合評会は、12月5日(月)14:00~逗子市民交流センター1階市民活動スペースで行います。
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