湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

段の詩パート4

2016-08-21 00:00:10 | オリジナル
共通テーマ「段」でTが書いた詩を投稿します。

階段

私が海につながっていた時
皆 私を使った
今 私の下は埋め立てられて繁華な街になり
そばに乗降客を呑み込み吐き出している巨大な駅もある
海は遠くへ押しやられ
私からは船の出入りも見られない
住民は年老いて ゆるやかな坂を利用し
私はすっかり手持ち無沙汰だ
たまにスマホを見ながら
子供が上り下りしているだけ

夏 ビルの陰で涼しい私の上には
猫が寝ている 一匹 二匹 三匹
冬 陽が届かない私は凍りつく
私は
通り過ぎて行った人たちのささやきや
私の足元を洗っていた波の音の夢を見る

街の喧騒だけが私の上を過ぎて行く
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終わりの始まり

2016-08-20 00:00:21 | 
 昨日の「じゅん散歩」より
7月31日に投稿したSの音の詩に抜けている箇所がありました。正しくは下記の通りです。

 いやな音

尻を
字典でみると
 腰のうしろ
 終わり
 結末
とある ナルホド!
昨夜 きみもわたしもたしかに聴いた
尻の肉が削げ落ちた音……

言葉では説明できぬ音
人格のあるような音
耳鳴りに近い 音
終わりの始まりの 音

この詩について昨日の合評会で話し合った内容を投稿します。
:作者の弁 :評者の弁
「尻」と「終わり」をうまく結びつけたユニークな詩。ラストに希望が感じられます。
「始まり」という単語があるから? でも「終わり」が始まるのだから、軽やかに書いているけれど悲観的なラストなんじゃないかな。
そう。これはエレジーです。誤解を招くようだったら最終行は無い方がいいかな。
「終わりが始まる音」に変えればいいのでは?
うーん、それだと正確だけど面白くないのよね。やっぱりこのままで。
それより「言葉では説明できぬ音」と言葉で説明するのが矛盾しているから、この行を外します。「耳鳴りに近い音」も、書いている時耳鳴りがしていたから書いてしまったので外そうかな。力点は第1連に置いているから。
第1連最後の行に共感。年取ると張りを失って肉が落ちるもの。
それだけではなく、共に寝ることで恋が終わることを表現しているのよ。
それを男女が同時に感知したわけね。
だから「昨夜」なんだけど「昨夜」が必要か迷ってるのよね。
そこに具体性があるから外さなくていいと思います。
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小坪じゅん散歩&段の詩パート3

2016-08-19 00:00:19 | オリジナル
昨日オンエアの「じゅん散歩」は主に小坪散歩でした。今日放送するのは東逗子編だそうですよ。

そういえば小坪の漁村には階段路地がたくさんありますよね。

ということで、Sが共通テーマ「段」で書いた詩を投稿します。

階段

わたくしの
かげろうをみる
マンションのアパートの下宿の
階段
自力でクリアし
かならず
玄関で倒れた
階段

こんなわたくしに
生き返られると困るから
菊など
投げるのですか

階段は
段々畑の血の川
睡(ねむ)らねば
夢の中ではきれいな川
独りぼっちのオフェリアごっこだが

玄関のドアをやぶり
わたくしをつまみあげ
つるし ひらき
踊りだすかもしれぬわたくしに
あなたたちのぺダンチックな
レクイエムなんて
流さないで
声上げて笑ってよ

生き埋めの いまは
死者の気楽さ
夜がながくなるばかり
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段の詩パート2

2016-08-18 08:31:50 | オリジナル
明日19日14時から逗子市民交流センターで、今月の合評会パート2があります。
8月5日の月例会に出られなかった人も参加できます。下記の作品を書き写したものを持ってきてください。
 Sの音の詩「風の音など」「天使の気配」 Sの形の詩「独りは」「落ちついた形」「子供の形」
 Aの音の詩「拡声器」 Aの形の詩「まえとうしろ」「不可視の形」「惰星からの脱出」
では、共通テーマ「段」でSが書いた詩を投稿します。

階段

行進曲に涙したことのない私は
ひたすらのぼる階段ずき
生き別れの男をさがして
ひたすらのぼった
階段の踊り場で
前かがみで死んでいる
一羽のカラスに出会う

すごい夕焼けが
私とカラスを掴んでいる
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洗うの詩パート4

2016-08-17 20:34:51 | オリジナル
毎年8月16日に逗子海岸中央で行われている逗子仏教会の精霊おくり。今年は1日遅れ。台風7号の影響があるので、お焚き上げも灯籠組み立てと灯籠流しもありませんでした。

では、共通テーマ「洗う」でAが書いた詩を投稿します。

日々

汽水が
河口をたゆたう
洗濯物が掲揚される
陽は山から海へ
影は海から山へ

ベランダで
布が呼吸し
静かに乾いていく
やがて
陽と洗濯物は
向こうとこちらへ
取り込まれる

塩からい海水と
濁った泥水が
胸でせめぎ合っているが
日常の衣服を
洗って干して取り込んで畳んで
いるようにしか
見えていないだろう

取り合わせた日常着を
日々まとって脱いで暮らす
わたしの赤い内部では
渦巻く影が
着膨れ過ぎた想念やエピソードを
日々引き裂いている
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エレナの亡霊

2016-08-16 11:03:51 | 

艶めかしい墓場    萩原朔太郎

風は柳を吹いてゐます
どこにこんな薄暗い墓地の景色があるのだらう。
なめくぢは垣根を這ひあがり
みはらしの方から生あつたかい潮みづがにほつてくる。
どうして貴女はここに来たの
やさしい 青ざめた 草のやうにふしぎな影よ
貴女は貝でもない 雉でもない 猫でもない
さうしてさびしげなる亡霊よ
貴女のさまよふからだの影から
まづしい漁村の裏通りで 魚のくさつた臭ひがする
その腸は碑にとけてどろどろと生臭く
かなしく せつなく ほんとにたへがたい哀傷のにほひである。

ああ この春夜のやうになまぬるく
べにいろのあでやかな着物をきてさまよふひとよ
妹のやうにやさしいひとよ
それは墓場の月でもない 燐でもない 影でもない 真理でもない
さうしてただなんといふ悲しさだらう。
かうして私の生命や肉体はくさつてゆき
「虚無」のおぼろげな景色のかげで
艶めかしくも ねばねばとしなだれて居るのですよ。


この詩の舞台は、海浜の「薄暗い墓地」である。この情景には、かつてエレナが転地し、作者も訪れたことのある湘南地方のそれが投影しているであろう。また、ここでいう「春夜」は、晩春・初夏を思わせるもので、エレナの死んだ五月が意識されていたとも思われる。
柳が風になびく陰湿な海辺の墓地という、格好の舞台に、「貴女」の「亡霊」が登場する。亡霊は「あでやか」で、「なまぬるく」、「妹のやうにやさしい」。そのように妖しい存在でありながら、それはまた、いかにもおぼろげで、とらえにくい。そのことを、多用されている反復法の修辞が、リズミカルに興趣を高めつつ、効果的に強調する。 (鈴木亨「現代詩鑑賞 20人の詩人たち」より)


エレナの実名は、馬場ナカ(仲子)。前橋市の女子の名門校であるミッションスクール共愛学園で妹のワカ(若子)と同級生でした。朔太郎が前橋中学校4年時に落第したのは、文学への傾倒とナカとの恋愛のせいだといわれています。
しかしナカは朔太郎が岡山の第六高等学校(旧制)在学中の明治43年に、20歳で高崎市の医師に嫁いでしまいます。そして結核を病み転地療養。その先に朔太郎は何度か訪ねて行っています。彼女は大正6年5月、転地先の鎌倉市外腰越(七里が浜付近)で病没。享年28歳でした。その後この詩が書かれ、詩集「青猫」に収められました。
それはたしかに非倫理的な、不自然な、暗くアブノーマルな生活だつた。事実上に於て、私は死霊と暮して居たやうなものであつた (萩原朔太郎「青猫を書いた頃」より)
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NIGHT WAVE&雲母集

2016-08-15 09:49:56 | 三浦半島
8月8~14日の夜に逗子湾西浜で行われていたNIGHT WAVE。10月にまたやるそうですよ。

では神奈川近代文学館常設展「文学の森へ 神奈川と作家たち」第1部のワークシートからピックアップした文学クイズを1問。
Q 人妻との恋愛事件で傷ついた北原白秋が、三浦半島の三崎に転地し、その陽光あふれる風土に癒されて生み出した第2歌集の題名は?
A 雲母集(きららしゅう)
日もすがら光り消えたりうねり波思ひ出したりまた忘れたり (北原白秋「雲母集」より)
当ブログで時々地域文学クイズを出してます。その理由のひとつは、逗子文学検定を作りたくて、そのための研究を兼ねて。
クイズを解きながら地元の皆さんが地域の文学に対する、ひいては文学全体への関心を、更に高めてくれるといいな
そんな願いが逗子で一歩前進しそう。11月にスタートするサードエイジ連続講座の中で、文学を含むいくつかのジャンルでずし検定を作ろう!という活動がキックオフ予定です。
楽しく地域クイズ作ってみたい人が集まるといいな~
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洗うの詩パート3

2016-08-14 02:25:07 | オリジナル
共通テーマ「洗う」でAが書いた詩を投稿します。



三々五々散会
軋まされた世界観
角を曲がり独りになる
国道の向こうに
海が見えてくる

揺らいで進み
こらえてから
大きく崩れる波

周知の事実
世界は私のためにあるのではない
彼らのためにあるのでもない

路上で仰向けになり大声で泣きたい
呼吸が止まるほどの叫び声で抗議したい
彼らの偽の成熟に
不快な悪ふざけに
自覚のない身勝手に

周知の事実
遠い国に死にそうな痩せた子供がいる
私たちにできることは限られている

ひっくり返って泣き叫んでも
なにひとつ変わらない

時間をかけて知ったなら
被害妄想を波に捨て
シンパシーを

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ヤサイクルランチ&超カンタン俳句塾

2016-08-13 17:48:12 | 文学
お昼はヤサイクルで、今月のスペシャルランチをいただきました。
 野菜たっぷり冷やし中華 デザート付きで500円!
店内にはカボチャだけで10種類くらい売られていましたよ。

さて今日の文芸ネタは昨日の続きで、初心者向け俳句の作り方。
 この本のコラムから抜き出してまとめてみました。
取り合わせ
ある季語にそれと一見関係ない言葉を取り合わせる基本的な作り方です。相乗効果が生まれ連想が広がることから「二物衝撃」ともいいます。これに対して季語のことだけで一句を構成する作り方を一物仕立て(いちぶつじたて)といいます。ひとつの対象物に意識を集中させて独自の世界を創造する必要があるので、初心者には難しい作り方です。
取り合わせのコツを覚えよう
 ステップ1 最初に「俳句の種」を作る
   「俳句の種」を十二音に整えるときには季語を入れないようにします。
 ステップ2 「俳句の種」に合うイメージの季語をつけ加える
   俳句では感情をそのまま言葉にはせず、対象(物)を通して表現するのが原則。十二音のフレーズで伝えたい思いを、五音の季語に託します。
「俳句の種」を見つけるには
いままで見ているようで見ていなかった事物、気づかなかった小さな出来事を句帳や手帳に書き留めておきましょう。
ズームイン・ズームアウト・パンで、対象を見る視点を絞り込んだり広げたりして想像を巡らせ、独自の発想を得ます。
新しい視点・発想で対象がとらえられても、十七音しかない俳句では類句になりがち。特に刷り込まれたイメージで対象を表現すると類句に陥ることが多いものです。  落ち葉の絨毯 紅葉のような手 太鼓はドンドン
こういうものだと思い込み、深く考えずに言葉にすると、似たり寄ったりになってしまいます。自分の目(視覚)耳(聴覚)鼻(嗅覚)口(味覚)手(触覚)を総動員し五感をフルに使って、新鮮でオリジナリティのある発想や自分らしい表現を見つけ出してください。
『歳時記』と友だちになろう
見つけた「俳句の種」を育て、季語の力で俳句という花を咲かせましょう。それには『歳時記』と仲よくならなければいけません。
季語の現場に立って体験したり実感したりして自分のものにしていきましょう。

いや~「超カンタン」と書名で謳っていますが才能アリ俳句を作るには相当精進がいるわ~
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五音の季語

2016-08-12 13:31:28 | 文学
お盆ですね~。昨日オンエアのプレバト!!俳句のお題は盆踊りでした。

特待生の三遊亭円楽さんがワンランク昇格を勝ち取ったのは下記の句。  
町会長犬を預かる盆踊り
季語ありの川柳といった印象を受けました。夏井先生が評価した点は「盆踊り」という季語の世界の細部を描いていること、人物から始まりいきものが出てきて動作があってズームアウトすると季語がありなぜ預かっているかという答えが出てくる見事なカメラワーク。
ちょうど「夏井いつきの超カンタン!俳句塾」を読んでいたのですが、その中に十二音のフレーズで伝えたい思いを五音の季語に託すという初心者向けの方法が紹介されていました。で、合計十七音の一句になるってことね。この技法を取り合わせというのだそうです。
五音の季語、探してみようっと
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