湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

珈琲とエクレアと詩人

2016-11-29 18:17:37 | 文学
昨日、逗子ゼロウェイストニュースのデザイン出しをしました。@材木座のミルコーヒー&スタンド

そしてコーヒーとエクレアが好きだった詩人、北村太郎に関するエッセイ集を読了。
鎌倉の出版社、港の人から2011年に出版され、なかなか好評で現在4刷まで版を重ねているそうです。
北村太郎から「ゆきちゃん」と呼ばれていた著者は、1980年から1992年に彼が亡くなるまで、12年間交流がありました。その間のエピソードが順を追って綴られています。彼女にはこの本の中で「大家」として登場する田村和子さんとのスケッチ「いちべついらい」という著書もあります。
珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎の冒頭に収められている北村太郎の詩を引用します。

天気図

きのうは
太平洋沿岸を急速にこすっていった低気圧のせいで
午後一時半
ヨコハマを出ていったときは雪
スカ線でながめた鶴見操車場は晴れ
午後三時の飯田橋はみぞれ
五時の白山上は曇りで風つよし
十一時半のヨコハマ・ザキは人影なく
水銀灯
氷の疑問符のごとし
午前一時帰宅

さっき白いネギを一本
薄皮を剥いで丁寧に洗った
そのあまりの白さに
だれもいないうしろを振り返って
アアとことばを発した
しばらくして
包丁が光り
ネギがざくざく切られてゆく
おれの希望
吸いこまれる心ぼそいキャッシュ・カードのように
彼方の闇へ
どこまでもひらべったく――か
等圧線
きょうはきれいに上下に立っていて
まる四十八時間
睡眠と覚醒が天気図どおりに冷えていて
ステンレス・スチールの流しに
包丁が水に打たれたままでいる

北村太郎がよくコーヒーとエクレアを注文していたのは、鎌倉駅前のイワタコーヒーだそうです。
コメント
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