湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

「こぼれる」の詩パート6

2016-11-27 00:43:52 | オリジナル
レリーフ「さ迷えるオランダ人」石原慎太郎作@逗子文化プラザなぎさホールホワイエ

では、共通テーマ「こぼれる」でSが書いた詩を投稿します。

ワーグナー
   (あるいはハプニング)


姿勢の非常にわるい亡霊(生前女であったがいまは男である)が
カーネギーホールの入口の壁に
張りつくようにねころんでいる浮浪者の
私生活にカメラをむけている

ホールから亡霊の耳に
ワーグナーの曲が聴こえる
ワーグナーは亡霊の王たちの一人だ
戦争のBGMに使われたり
ときにはデリケートな耳を
萎えさせる
シュールでないシュール的オブジェ!!

音楽は通行人の耳にはとどかない
一人ずつ通行する孤独な人びと
立派な身なりの浮浪者はしずかにねむっている

なるほど 芸術かもしれない
あまりにも執拗なメロディ
奴だ

とつぜん亡霊は発想が目に浮かぶように
思われた
姿勢もしゃんとした
死んだ今 自分が
遅い者か
速い者か わからなかった

詩が創れると感じた が
目から零れ落ちるはずの発想が
消え去っていた

ワーグナーのせいだ
コメント
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