湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

「湿」の詩パート15

2015-06-06 00:22:13 | オリジナル
共通テーマ「湿」の詩最終回はMの作品です。合評会当日手書き原稿での提出だったので、初見で合評しました。
 原稿の佇まいがいい感じ。
「20年ぶりに詩を書いたので、大仕事でした。だから日付なんか入れちゃって、かわいいでしょ?」とおどけるMは、25年前に詩集を上梓しています。原稿に書き込まれた日付は、詩人として復活した記念日ですね

  雨の歌

なにかが降りてくるのを
ひたすら待っている

いくらでも書けると詩をやめた


わたしは死ぬ年頃になり
「独り」と「一人」の違いは
大きいとためいきをつき公園へ
一人になれたと思ったが
独りである

すきでもきらいでもない だから
きらくなブラームスのヴァイオリ
ンソナタ「雨の歌」を聴くために
ベンチから身を剥がし
家へ向かう


:作者の弁 :評者の弁
テーマがこめられた第2連に共感!
第1連で表現したように、男女って両極といってもいいほど違うでしょ? だから夫が生きていた時は一人になりたいと願っていたのに、いざ憧れの未亡人になったら独身になりきれないんです。彼の快い部分に対して感謝を伝えなかった後悔とか、いやらしい寂しさが押し寄せる中にいる感覚です。
それがタイトルにした曲名の寂しさとも重なっているんですね。
ええ。あと「すき」と「ブラームス」の2語で、フランソワーズ・サガンの「ブラームスはお好き」にも掛けてあります。「きらく」は最初片仮名にしようと思ったのですが、すぐ後に片仮名が続くので平仮名にしました。
見た目のデザイン・字姿まで考えているのが流石です。漢字を使い過ぎていないのですっきり見えます。
「すきでもきらいでもない だからきらく」という心持ちにも、とても共感できます。
好きなものばかり毎日抱いているのはいかがなものか、かといって嫌いなものに時間をかけすぎるのもよくない……という人生観なんです。
コメント
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