蔵書目録

明治・大正・昭和:楽器・音譜目録、来日音楽家、音楽教育家、来日舞踊家、軍内対立、医学教育、清国留学生、林彪、北京之春 

「梅蘭芳吹込 ニッポノホンワシ印レコード」 日本蓄音器商会 (1924.11)

2014年07月01日 | 梅蘭芳 2
 梅蘭芳吹込 ニッポノホン ワシ印レコード 株式会社 日本蓄音器商会

 曲種
  支那劇 西施       一枚
  同   紅線盗盒 御碑亭 一枚
  同   天女散花 廉錦楓 一枚
  同   貴妃酔酒     一枚
  同   六月雪      一枚  
  支那楽 太湖船(小開門接 夜深沉 一枚 梅蘭芳随伴 民国一流楽
 
   ワシ印レコード正価一枚 金壱円五拾銭

 この梅蘭芳のレコード広告は、『アサヒグラフ』 三巻二十二号 大正十三年〔一九二四年〕十一月二六日 にあるもの。

 ○ レコード

         

 15474-A 支那劇 西施 (梅本)(上)梅蘭芳  
 15474-B 支那劇 西施 (梅本)(下)梅蘭芳    

    歌詞カード
    
      二黄慢板  水殿風来秋気緊。月照宮門第幾層。十二欄干倶凴盡。  
      続     独歩虚廊夜沈沈。紅顔空有亡国恨。何年再会眼中人。

 15475-A 支那劇 紅線盗盒 (梅本) 梅蘭芳  
 15475-B 支那劇 御碑亭  (古本) 梅蘭芳

 15476-A 支那劇 天女散花(梅本) 梅蘭芳   
 15476-B 支那劇 廉錦楓 (梅本) 梅蘭芳    

    歌詞カード

    ・天女散花(梅本) 一五四七六 A
         天女  梅蘭芳

      西皮慢板   祥雲、冉冉、婆羅天。離却了、衆香國、遍歴大千。諸世界、好一似、青雲過眼。一霎時、又来到、畢鉢巌前。

    ・廉錦楓(梅本)  一五四七六 B 
         廉錦風  梅蘭芳

      西皮原板   遭不幸、老巌親、窮辺喪命。高堂上、只剰下、年萬娘親、嘆老親。又得了、陰虚之症。用海參、療此症。貨賣無人。無奈何、纔学得、暗通水性。長日裏、取海參、帰奉萱庭。

   

      支那楽 太湖船(小開門接 夜深沉 一枚 梅蘭芳随伴 民国一流楽

 15479-A 支那楽 太湖船 (蕩湖船) 徐蘭元 何斌奎 孫惠亭 霍文元 李善卿 羅文田 唐錫光
 15479-B 支那楽 小開門接 夜深沉
 

 ○ レコードの吹き込み  :次の二つの文などで紹介されており、十三年の十月下旬におこなわれたとのことのである。

 1.「或る日の梅蘭芳 日本女流音楽家連対面のこと YH生」 :『劇と映画』 第二巻第十二号 〔大正十三年十二月号〕 

 或る日の梅蘭芳 
  日本女流音楽家連対面のこと
      YH生

 一

  それは薄ら寒い十月下旬の或る日の午後であつた。その頃まだ梅蘭芳は彼の嬋娟たる容姿を毎日、初開場の帝劇にあらはして観衆を陶然たらしめてゐたのであつた。
  その東洋第一の人気俳優と云ふても恐らくは過言であるまいと思はる名女形が、赤阪は霊南坂上の日蓄に来るといふ電話があつたので、余は彼の素顔と音吐を親しく見もし聞きもしたいと思つて、早速自働車を傭つて駆け附けて行つた訳である。
  「梅さんは恐ろしい朝寝坊ださうですね?」
  日蓄の応接間の一室で、やがて先触れにやつて来た通弁兼マネーヂヤーを捕へて斯う訊ねると、彼は頭から黙首いて見せた。
  「寝坊々々!午前の日を見たことのない寝坊!」
  通弁子の語調も可笑しかつたが、支那の俳優も日本の俳優も、由来午前十二時までの時間はないことになつてゐるのも妙な芸術家生活の一致であり、日支親善であると思ふと自然に微笑を浮めずにはゐられなかつた。

 二

  問題の梅蘭芳がまだ姿をあらはしさうな気勢もない時、応接室にはテーブルに美しく熟した果物と洋菓子などが運ばれ、ストーブにはめらゝと火が貼ぜられた。余は晩秋のうす寒きに軽い慄きを覚えながら暖爐の傍(かたわら)に縮こまつてゐた。そこへ驚くほど身丈のスラリとした若い耳隠しの美人があらはれた。それこそは若手の女流声楽家として急出しかけて早川美奈子さんである。つゞいて曾我部静子さんがあらはれる。
  「梅さんは?」
  「まだのやうですわ。」
  今度こそは と思つてゐるところへ、これも驚くほど背の高いジェームス・ダンさんが瀟洒な背広でやつて来た。
  「あら、ダンさん、妾あなたにお目にかゝりたいと思つてたのよ」
  と、斯う云ひながら室に入つて来た愛嬌溢れるやうな美形は、これも声楽家として有名な松平里子さんである。ダンさんと近づいて頻りに伴奏などの注文やら稽固の日取の約束やら、その道の打合せをやつてゐた。
  「時にお客様は?」
  「まだです。大変遅いですね。」
  と 会話はそれからそれへと写声の話などに移る。

   

  ◇日蓄の庭園に於ける梅蘭芳
  ◇松竹座の舞台に於ける河合武雄と梅蘭芳  

  夕日は斜めに窓を漏れて力弱くなつた頃、ドヤゝと練り込んで来たのは黒ビロードの支那服を着けた優男の梅蘭芳を眞先に、赤い花の一輪を髪に芳した梅夫人、あとは胡弓だの銅羅(どら)だの太鼓だのと銘々に携へた楽師の面々。室に入り来るや否や、チイチイパアゝ、さすがに梅は悠揚と落着きもあり、気品もあつて奥床しい。

 三

  やゝ暫くテーブルを圍んで日本の女流声楽家達と談笑の末、別項写真〔文中最初の写真〕にあらはれてゐる如く幽遂な庭園で記念撮影をして、さて梅氏一行は日常の吹込室へと姿を消した。
  名優梅蘭芳が舞台の呼吸とはまた違ふと見えて、どうしても吹込みのラツパに眞向きの姿勢にならないと行つて一同が心配する。通弁先生は「由来支那の芸術や音楽は一種独特だから、先生のいふ通りにさせて見なさい。」と気焔をあげる。
  日蓄吹込技師のギリンガム氏が 「技術を命ずるのではないが方法は駄目だ。」と焦立つ。従つて竹中技師も「それでは入らぬ。斯うして呉れ。」と頼むやうにいふ。会社の関係者は皆々大心配。
  「いや、支那の音楽は独特だ。」
  またしても夫一点張りで押通さうとする通弁先生、それに続いて楽師連中、只に雀の囀(さえ)づる如くチイゝパアゝ此の処暫く混線の有様であつた。
  梅はさすがに微笑を含みつゝ、供のさゝげる筒茶碗の白湯をすゝりながら、時々手真似で一同に命令を下す。立派な指揮者である此の間遥か後ろで悠々と椅子に凭つて時々舞台監督の如き調子で口を挟むのは梅夫人であつた。
  斯くて日の暮れる迄の間に支那劇の名曲「西施」や「天女散華」や「貴妃酔酒」や梅が特意として世界に誇る名曲が次から次へと写声されて、やがては、それが全国の家庭に聞かれるであらうし、支那の家庭に聞かれるであらうし、支那の名優が日本を去つても、永久に彼の豊かに潤ひに満ちた肉声は記念に残されて、いつまでも聴く者の魂ひに響くのである。余は此日、梅の音楽に接すべく熊々(わざわざ)出て行つたことを幸福だつたと思はずには居られない。 

   2.「梅蘭芳の吹込みを見る (霊南坂日蓄会社にて T.T生 〔辻聴花?〕)」:『音楽と蓄音機』 十二巻一号 〔大正十四年一月〕 〔下は、その抜粋〕

    黒ビロードの支那服を着けた、美男の梅蘭芳を真先に、赤い花の一輪を髪に挿した梅夫人、それに続いて胡弓だの銅鑼だの太鼓だのを銘々に携へた楽師の一行が、此一屋に雪崩れ込んで来た。

    日の暮れるまでに先づ支那の名曲「西施」が吹き込まれた。美しい梅蘭芳の唱と原始的な而も繊細な味のある音楽と共に得意の「天女散花」や「貴妃酔酒」や「紅線伝」や其他数種が次から次へと写声されていつた。やがて是れ等の世界に誇る名曲が全国の家庭にて聞かれる事と思ふと、支那の此名優が日本を去つても、永久に彼の豊かな霑ひに満ちた肉声はいつでも聴かれる喜びを私は知つて会社を出て坂を下つた。

 ○ レコードの発売

  :『ニッポノホン』 十二月々報 株式会社 日本蓄音器商会 の見返しには、支那服の梅蘭芳の写真があり、その下に「梅蘭芳氏がワシ印に吹込みましたレコードは近日発売いたします」とあり、掲載の「ワシ印レコード十二月新譜」でも一五四七三までなので、大正十四年〔一九二五年〕一月と推測される。

   なお、宮沢賢治も支那劇の『天女散花・廉錦楓』(15476)など4枚を所蔵〔『宮沢賢治の音楽』(佐藤泰平・筑摩書房)掲載の宮沢賢治の「レコード交換用紙」参照〕。

 ○ 現在

  支那楽を除く、上のレコードは、すべてCDでも聞くことができる。少し古いが、例えば、

 『梅蘭芳 老唱片全集』 梅蘭芳一百一十周年誕辰記念 中国唱片上海公司出版発行

  その解説書には、演者・演奏時間・歌詞なども記載されてる。
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『梅蘭芳』 (1926.12)

2012年09月03日 | 梅蘭芳 2
 綴言

 

 梅畹華及其家属攝影

      

 ・〔前略〕此為佩章攝影之一 〔上左〕
 ・畹華及其閨人 〔上中〕
 ・畹華夏日之影
 ・畹華侍其祖母八十壽時攝影
 ・畹華中服之攝影

 ・畹華東渡時攝影(一) 畹華東渡時攝影(二)〔上右〕 畹華東渡時攝影(三)
 ・畹華最近攝影(一) 畹華最近攝影(二) 畹華最近攝影(三)
 ・響屧廊 陳蒙庵

 梅畹華化装攝影

           

 ・太真外伝 The Life of Yang Kuei-Fei (一) 太真外伝(二) 太真外伝(三) 太真外伝(四)〔上左から1枚目の写真〕 太真外伝(五) 太真外伝(六) 太真外伝(七) 太真外伝(八) ・太真外伝(九)
 ・天河配 The Spining Girl at the Annual Meeting with a Cowboy on the “Milky Way” (一) 天河配(二)
 ・西施(一) Shih Shih-the most patriotie beauty of China 西施(二)
 ・洛神(一) The Godess of the River Lo 洛神(二) 洛神(三) 洛神(四)
 ・廉錦風 Beauty in the Fisherman’s Net (一) 廉錦風(二) 廉錦風(三) 廉錦風(四) 廉錦風(五) 廉錦風(六)
 ・霸王別姫 Pa-Wang Parting with his Favourite (一)〔同2枚目〕 霸王別姫(二)
 ・黛玉葬花 Tai-Yu Buryig the Blossoms (一) 黛玉葬花(二) 黛玉葬花(三) 黛玉葬花(四)
 ・嫦娥奔月 Chang-o’s Flight to the moon(一)
 ・穆柯寨 The Camp of Mu-Ko
 ・木蘭従軍 Mu-Lan in the Army.
 ・睛雯撕扇 即千金一笑 Ching-Wen Tearing the Fan (also Eurg Lou Meng)
 ・上元夫人(一) Madam Shang-Yuan 上元夫人(二)〔同3枚目〕
 ・樊江関 Fan-Kiang Pass 〔同4枚目〕
 ・麻姑献壽 Ma-Ku’s Presenting and The peach of Eternal Life

 ・(攝玉軒歓迎瑞西太子攝影)
 ・日本名伶在東京招待梅氏夫婦之盛況
 ・日伶致謝詞

  

 〔以下、梅蘭芳自筆絵画3枚・書1枚の写真〕

 ・綴玉軒主人画佛(一) 綴玉軒主人画佛(二) 綴玉軒主人画菊 綴玉軒主人之書法
 ・〔梅蘭芳など6人の写真〕

 綴玉軒劇本

 ・太真外伝 麻姑献壽 〔下の写真〕 黛玉葬花 天女散花 西施劇詞 霸王別姫 洛神唱詞 廉錦風劇詞 嫦娥奔月 千金一笑 木蘭従軍 上元夫人雑劇

  
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「梅蘭芳 支那劇」 帝国劇場 (1924.10)

2012年01月28日 | 梅蘭芳 2
 この『改築記念興行 絵本筋書 大正十三年 〔一九二四年〕 十月 帝国劇場』には、「梅蘭芳 支那劇」が掲載されている。

   帝劇の改造

 耐震耐火を以つて誇つて居りましたが我が帝国劇場も、大正十二年九月の劫火には遂に其紅舌 ぐぜつ の舐めるところとなりました、顧みて聊 いさゝ か其高言に愧ぢる次第でもありますが、火災に対しては数段に防御の手段が講じてありましたが、その最も多く依頼して居つた消火栓が効を為さなかつたのですから、あの様な全都市を破壊する災害に対しては、先づ人力の抗し難きものとして、御寛容を願ふより外はないと存じます。尤も此点も大 おほい に鑑みる所あり、萬一水道破損等の場合にも防火上毫も差支へないやうに、今回は構内数ヶ所に窄井 さくせい し、現に清冽玉の如き清水が滾滾 こんゝ として湧出でて居りますから、今後は最早やこの災害を復 ふたゝ びすることはありますまい。たゞし地震の破壊力に対しては、完全に其建造物を保持し得たのは、窃 ひそか に我徒の満足を禁じ得ないところであります。
 要するに、その受けました災禍は、内部の可燃性物体にのみ止まつたのでありますから、従つてその復興も斯 か く之を速 すみや かにすることを得た譯であります。しかも今回の我が帝国劇場の復興たるや、単に旧状態の復活と云ふに止まらず、全然新時代に適応した新劇場として新たに復興したのであります。
 帝国劇場が創建されましたのは、明治の末年で、当時時勢の趨向を察し、時代の要求よりも既に数歩先に出てゐたのでありますが、其後欧洲に大戦を見、我邦 くに の国情にも大なる変化を来し、世態の怱忙たる推移の為めには、未だ決して全然時勢後 おく れに堕してはゐませんでしたが、しかも早晩改造の必要あることは我徒の疾 とく に自覚してゐた所であつたのです。それが測 はか らず、この大震災を奇縁として、改造の機会を早からしめたのは、大に大方の御満足を購ふに足る所以と信じ、創建の時には渝 かは らず、今後も尚ほ最も進歩した劇場として、幾久しく御眷顧 けんこ を受くるに適するものと深く期待いたすのであります。

 大正十三年十月 改築記念興行 毎夕四時開場 四時半御挨拶 五時開演

      幸田露伴博士加筆、平山晋吉新作、鳥居清忠舞台装置
 第一 史劇 神風 三幕
 第二 浄瑠璃 源氏十二段 一幕
      (此浄瑠璃は大倉男爵米壽賀讌の時のみ上演す)
 第二 浄瑠璃 紅葉宴衛士白張 一幕
      (本興行にのみ上演)
      林和作 鳥居清忠舞台装置
 第三 世話劇 おつま 八郎兵衛 両国巷談 三幕
      (本興行にのみ上演)
      井上弘範舞台装置
 第四 梅蘭芳 支那劇
       外題毎夜変更 

 芸員 梅蘭芳(青衣)姜妙香(小生)姚玉芙(青衣)陳喜星(老生)朱湘泉(武生)朱桂芳(武旦)李春林(老生)札金奎(老生)陳少之(老生)喬玉林(崑曲老生)孫輔庭(老旦)張蕊香(花旦)羅文奎(丑)霍仲三(浄)韓金福(小生)賈多山(老生)孫少山(老生)朱斌仙(旦)董玉林(旦)他数名
 楽員 徐蘭元、何斌奎、孫惠亭
 (以上次第不同)

 十月廿日【麻姑献寿】(西皮、二黄、崑曲)
   麻姑(仙女)        梅蘭芳
   王母(天界の支配者)    姚玉芙

      

 ・左:『国際写真情報』十二月号 第三巻 第十四号 に掲載のもの。

  梅蘭芳氏の『麻姑献寿』

  中華民国当代の第一人者梅蘭芳氏は帝国劇場の復興劇大倉男米寿の賀莚に出演の為来朝して十月二十日帝劇に其妙技を揮つたが、写真は得意の『麻姑献寿』と云ふ御目出度い芝居で、仙人「麻姑」が延命の露を集めて西王母に献ずると云ふ筋、左方が梅蘭芳氏の麻姑である。

  MEI-LANG-FANG IN “MAKO-KENJU”

  Mr. Mei-Lan-Fang the famous Chinese actor, appeared on the stage of the reconstraucted Imperial Theater on October 20th, and played his most favorite “Mako-Kenju”. Mako, the nymph(Mei-Lan-Fang, seen at the left) seeking for the exixir of life, and offers it to Sei-O-Bo.

 ・右:『写真通信』 大正十三年 十二月号 第百三十号 に掲載されたもの。

  梅蘭芳の舞台面 

  MEI-LAN FANG ON THE STAGE

 同廿一日【廉錦楓】(西皮、二黄)
   廉錦楓(君子国の孝行娘)  梅蘭芳
   林之洋(嶺南の商人)    李春林
   多九公(林の親友)     札金奎
   唐以亭(林の妹婿)     姜妙香
   良氏 (錦楓の母)     孫輔庭    
 同廿二日【紅線伝】(西皮、二黄)
   薛嵩 (節度使)      未定
   紅線 (薛の小間使実は仙女)梅蘭芳
   田承嗣(他の節度使)    霍仲三
   趙通 (承嗣の部下)    未定
   李固 (同前)       未定    
 同廿三日【酔貴妃】(平調)
   楊貴妃(玄宗の寵姫)    梅蘭芳
   裴力士(同寵臣)      姜妙香
   高力士(同前)       羅文奎

  

  ※「梅蘭芳の『貴妃酔酒』 帝劇記念興行」 〔『映画と演芸』第一巻第四号 十二月 より〕

 梅蘭芳は寵妃楊貴妃に扮して『貴妃酔酒』を演ずる 金銀の刺繍ある背景幕一掛に紅殻ぞめの四柱があるばかりの簡単な舞台も 梅の貴妃が現れると華麗な支那玉宮の春夜のさまが髣髴とする 春夜に怨む寵妃 哀音切々糸のやうに長く低く続く 梅の歌声は例へやうる無いほど美しく可憐だ

 同廿五日【麻姑献寿】(西皮、二黄、崑曲)
   麻姑(仙女)        梅蘭芳
   王母(天界の支配者)    姚玉芙
 同廿六日【奇双会】 (吹腔)
   李桂枝(李奇の娘)     梅蘭芳
   李奇 (馬商人)      喬玉林
   趙冲 (褒城県令)     未定
   保童 (巡按察使李奇の子) 姚玉芙
 同廿七日【審頭刺湯】(二黄)
   雪雁 (莫懐古の愛妾)   梅蘭芳
   陸炳 (近衛の武官)    未定
   湯勤 (懐古の門下生)   羅文奎
   戚継光(薊州総兵)     札金奎
 同廿八日【酔貴妃】 (平調)
   楊貴妃(玄宗の寵姫)    梅蘭芳
   裴力士(同寵臣)      姜妙香
   高力士(同前)       羅文奎   
 同廿九日【虹霓関】
   辛文禮(虹霓関を守る隋の将)霍仲三
   東方氏(辛の夫人)     梅蘭芳
   玉伯党(賊将の一人)    姜妙香
   侍女 (東方氏の腰元)   姚玉芙
   秦瓊 (賊徒の首領)    札金奎
   家将            羅文奎
 同三十日【紅線伝】
   廿二日と同じ
 同卅一日【廉錦楓】 (西皮、二黄)
   廿一日と同じ

    

  ※「梅蘭芳の廉錦楓 -帝劇にて- 」 〔『アサヒグラフ』(三巻二十号:十一月十二日)の表紙〕

十一月一日【審頭刺湯】(二黄)
   廿七日と同じ
 同  二日【御碑亭】(西皮)
   王有道(浙江の読書人)   未定
   孟月華(有道の妻)     梅蘭芳
   王淑英(有道の妹)     姚玉芙
   柳生春(浙江の読書人)   姜妙香
   孟徳祿(ボーイ)      羅文奎
   孟父 (月華の父)     札金奎
   孟母 (月華の母)     孫輔庭
   申嵩 (試験官)      陳少五    
 同  三日【虹霓関】
   廿九日と同じ
 同  四日【黛玉葬花】
   賈寶玉(賈家の若様)    姜妙香
   林黛玉(寶玉の従妹)    梅蘭芳
   茗煙 (ボーイ)      羅文奎
   襲人 (腰元)       姚玉芙

 なお、支那劇所感に、観客の書き込みがあるが、「こんなものか。」などと記している。
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『支那劇解説並ニ筋書』 帝国劇場 (1924.10)

2011年05月03日 | 梅蘭芳 2
 表紙には、「支那劇解説並ニ筋書」とあり、奥付には、「大正十三年〔一九二四年〕十月十八日発行 編輯兼発行者 宇野四郎」などとある。22.5センチ、写真8頁・目次1頁・本文48頁ほかである。
 本書は、「解説は福地信世氏を煩はし、小伝及び筋書は波多野乾一氏より送られたのを省略して掲げた。」ものである。「今度の来演は実に五年振で、やはり帝国劇場の招聘により同劇場の招聘により同劇場の復興の祝、大倉翁の米寿の祝に『麻姑献寿』と題する仙女が不老長寿の仙酒を献ずる目出度い劇を上演し、」などとの記述もある。
 内容は、「写真」のほか、「支那劇解説」8頁と「梅蘭芳一行」に分かれる。「写真」は、梅蘭芳肖像1枚と扮装写真21枚である。下は、扮装写真の演目・役名である。

     

 ・麻姑献寿 麻姑(旦) 
 ・天女散花 花奴(旦)天女(花旦)
 ・貴妃酔酒 楊貴妃(花旦)〔上左の写真〕
 ・紅線伝 紅線(旦) 2枚
 ・奇雙会 李桂枝(青衣)〔上右の写真〕
 ・虹霓関 東方氏(武花旦)
 ・御碑亭 孟月華(青衣) 
 ・思凡  趙色空(花旦)
 ・琴挑  陳妙常(花旦)
 ・春香閙学 春香(花旦)
 ・西廂記 紅娘
 ・遊龍戯鳳 李鳳姐(花旦)
 ・千金一笑 晴雯(旦)
 ・廉錦楓 廉錦楓(青衣) 2枚
 ・黛玉葬花 林黛玉(青衣) 2枚
 ・銀寶山 
 ・蘇三起解 蘇三(青衣) 2枚 

 「支那劇解説」は、舞台・劇の仕組・音楽・俳優・道具・衣裳についてである。「梅蘭芳一行」は、梅蘭芳一行の紹介6頁のほか、天女散花はじめ御碑亭・貴妃酔酒など計14演目の紹介で、それぞれ人・処・場が紹介されている。
 また、宝塚での公演については、『梅蘭芳一行支那劇解説及筋書』がある。

※ ブログ掲載の上の2枚の扮装写真は、いずれも絵葉書より。

   

 上左の写真:  『写真通信』 大正十三年拾弐月号 第百卅号 に掲載のもので、九月十四日午前九時東京駅に到着した梅蘭芳一行の出迎えの様子である。

 支那劇界大立物梅蘭芳一行来

 大行社員との間に妙な葛藤まで生んだ大倉〔喜八郎〕男爵米寿の宴に招かれた支那劇界の大立者梅蘭芳夫妻の一行四十九名の一座は天津まで出迎えた大倉男の令孫銀三郎氏等と十三日神戸入港の南米丸〔南嶺丸の誤り〕で来朝した梅蘭芳の姿は卅才と思はれない程の艶麗さである。写真は東京駅頭帝劇関係の出迎へで右より嘉久子、梅幸、日出子、梅蘭芳、延子、律子、〔松本〕幸四郎、山本専務の順。

 Mei Lan-fang and his party numbering 49 arrived at Tokyo Station at 9 a.m. on October 14,being vociferously welcome by many personages of eminence. The picture shows (from right) Miss. Kakuko,Baiko,Mei Lan-fang,and Miss Ritsuko Mori. 

 上右の写真:  『歴史写真』 大正十五年十月号 第百五十九号 の「芸界雑信」に掲載のもの。

 予て満鮮巡業中であった守田勘彌、村田かく子、東日出子、諸氏の一行八月二十日北京に入る。写真は停車場に支那の名優梅蘭芳の出迎へを受けた光景。

 北京の勘彌一行、右より日出子、秀歌、かく子、梅蘭芳、勘彌諸氏

   

 ○ 左の写真は、『国際写真情報』 大正十三年 〔一九二四年〕 七月号 第三巻 第八号 に掲載された。 

 今秋来朝する 梅蘭芳の扮せる『嫦娥』
 
 数年前に来朝して非常な評判をとった支那の名優梅蘭芳は、再び今秋十月新築落成の帝劇に来演する事となった、唱と科と美容との三つを備へた梅蘭芳は『天女散花』や此『嫦娥』などは、最も得意なものと呼ばれてゐるが今回は新作物を上場し、一行三十名で十月中旬には来朝する予定である此写真は支那劇通の福地信世氏が齎したものである。

 なお、同じ写真と思われる絵葉書では、「麻姑献寿」となっている。

 ○ 右の写真は、『劇と映画』 大正十三年 十一月号 第二巻 十一号 に掲載された。 

 帝劇に来演せる 梅蘭芳 黛玉葬花

 社長大倉翁の米寿の祝ひをかねて十月廿一日から芽出度開場の運びになつた、丸の内帝国劇場には豫て前々から記した通り、支那の名優梅蘭芳が戦乱の故国の砲火を潜つて来朝した、大倉翁の祝賀記念劇は廿一日から四日間で其間に上場された、梅得意の出し物中の『黛玉葬花』で『天女散花』や『廉錦楓』や『紅線伝』などと共に有名な出し物である、帝劇の普通興行は此あと引続いて幸田博士の『国難』や『両国巷談』を座附幹部が久し振りで上場した。
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『梅蘭芳一行 支那劇解説及筋書』 宝塚少女歌劇団 (1924.11)

2011年04月27日 | 梅蘭芳 2
 表紙〔洛神での、密妃に扮した梅蘭芳〕には、「宝塚グラフ 梅蘭芳一行支那劇解説及筋書 第五号 宝塚少女歌劇団発行」とある。奥付には、「大正十三年 〔一九二四年〕 十一月七日発行、著作権 宝塚少女歌劇団、発行所 阪神急行電鉄株式会社」などとある。22.3センチ、写真4頁〔8葉:洛神、梅蘭芳、虹霓関、紅線伝、廉錦楓など〕含み56頁である。

 目次

 ・支那劇解説〔省略〕
 
 ・梅蘭芳一座宝塚公演劇目及び役割

 七日。   
   一、戦太平
      花雲    明の太祖の将(老生)    札金奎    陳友諒    当時江西に覇を称へた将(浄)  霍仲三
   二、定計化縁
      道士(丑)               羅文奎    和尚(丑)  賈多方
   三、紅線伝
      薛嵩    潞州節度使(老生)     陳喜星    紅線     薛嵩の小間使実は剣侠仙女(旦) 梅蘭芳
      田承嗣   魏博節度使(浄)      霍仲三    趙通     田承嗣部下の将(武生)     朱桂芳
      李固    同前(武生)        喬玉林          
   四、轅門射戟
      呂布    時に徐州城主(小生)    姜妙香    劉備     時に小沛城主(老生)      喬玉林
      紀靈    袁術の将(浄)       王斌方             
 
 八日。   
   一、風雲会
      宋太祖   時に天下未だ統一せず東征西 李春林    呼延贊    太祖の功臣呼延壽廷の子(生)  札金奎  
            剿の際に在り(紅面生)
    二、岳家荘
      岳夫人   飛の夫人(青衣)      姚玉芙    岳雲     岳飛の長子(小生)       姜妙香
      牛皐    岳飛の将(浄)       王斌方    岳飛の母   (老旦)
      銀瓶小姐  飛の娘(武旦)       朱桂芳
   三、審頭刺湯 〔「貴妃酔酒」に曲目変更〕
      雪雁    莫懐古の愛妾(青衣)    梅蘭芳    湯勤     莫懐古の門下生(丑)      羅文奎
      陸炳近   近衛の武官(老生)     札金奎    戚継光    蘇州総兵(老生)        陳少伍
   四、空城計
      諸葛孔明  蜀の元帥(老生)      陳喜星    司馬懿    魏の元帥(浄)         霍仲三
                       
 九日。
   一、御林軍
      馬芳    大同総兵(老生)      陳少伍    楊波     兵部尚書(老生)        喬玉林
   二、瞎子逛燈
      賣卜者   (丑)           羅文奎    和尚     (丑)             賈多方
   三、洛神

          

      〔上の写真は、「宝塚へ来た梅蘭芳劇の三日目に出た「洛神」の舞台面で、梅蘭芳の密妃、洛川仙女〔左〕、その舞台面〔中〕、朱桂芳の仙女〔右〕」:『芝居とキネマ』十二月号 第一年 第四号 より〕  

      曹植    魏の雍邱王(小生)     姜妙香    呉可銘    洛川駅々亟(老生)       陳少伍
      密妃    洛川神女(青衣)      梅蘭芳    漢濱遊女   仙女(旦)           姚玉芙
      湘水神妃  仙女(旦)         朱桂芳
      
   四、撃鼓罵曹
      彌衡    三国有名の処士(老生)   陳喜星    曹操     漢献帝の宰相(浄)       霍仲三
       
 十日。
   一、戦馬超
      馬超    西涼太守馬騰の子、当時蜀の 陳少伍    張飛     劉備の義弟(武浄)       霍仲三
            劉備に属す(老武生)
   二、連陞三級
      王明芳   書生(小生)        韓金福    店主人    (丑)             羅文奎
   三、虹霓関頭本
      辛文禮   紅霓関を守る隋の将(武浄) 霍仲三    東方氏    辛の夫人(武旦)        梅蘭芳
      侍女    (旦)           姚玉芙    秦瓊     瓦崗寨の賊徒の首領(老生)   札金奎
      王伯党   瓦崗寨の賊将の一人(小生) 姜妙香    家将     (老生)            羅文奎
   四、馬鞍山
      兪伯牙   晋の太夫(老生)      陳喜星    鐘元甫    鐘子期の父(外)        喬玉林
 
 十一日。

   一、遇龍封官
      永楽帝   (老生)          喬玉林    宮臣     (小生)            韓金福
   二、定軍山
     黄忠    蜀の将(武老生)      札金奎    張郃     魏の将(浄)          王斌方
   三、廉錦楓
      廉錦楓   君子国の孝行娘(青衣)   梅蘭芳    梁氏     その母(老旦)         孫甫庭
      林之洋   嶺南の商人(老生)     李春林    唐以亭    その妹婿(小生)        姜妙香
      多九公   林の親友(外)       札金奎    呉士公    青邱国の悪漁翁(丑)      羅文奎                    
   四、上天台
     光武帝   (老生)          陳喜星    姚期     帝の功臣(浄)         霍仲三
      姚剛    期の子(浄)        王斌方

 ・演唱曲目筋書〔省略〕

 ・梅蘭芳劇と諸名家 〔本文省略〕

    私の「茨木」と梅蘭芳 ‥ 尾上梅幸
    支那劇と梅蘭芳     ‥ 市川佐團次
    塲代宣伝        ‥ 米田祐太郎
    梅蘭芳の芸  彼は昔の福助の様だ ‥ 池田大伍
    支那劇の性質と構造   ‥ 吉川操
    梅蘭芳と海老  井上正夫と好一対の話

 なお、この宝塚公演では、「支那劇 梅蘭芳 絵端書」が発行された。

 

 宝塚大歌劇場上演 支那劇 梅蘭芳 絵端書 宝塚新温泉発行

      

 ・「紅線伝」 小間使紅線実は剣侠仙女 梅蘭芳
 ・「虹霓関頭本」 東方氏 梅蘭芳
 ・「廉錦楓」 廉錦楓 梅蘭芳 
 ・「廉錦楓」 廉錦楓 梅蘭芳
 ・「洛神」 神女密妃 梅蘭芳

 なお、絵葉書の表面の記載は、「宝塚少女歌劇団発行」である。
 また、袋の裏面には、次の記載がある。

  支那劇には馴染の浅い皆様の手引にと存じまして、支那劇の成立や上演曲目の筋を解り易く書いたもので御座います。

 宝塚グラフ 第五集
  梅蘭芳一行支那劇解説及筋

  是非御一覧の上、梅蘭芳の芸術を、より深く御観賞下さい。
      場内売店に備へてをります。
                    〔特価三十銭〕
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