本日は『大』です。
この『大』、派手ですねぇ〰(^○^)
三画しかない『大』は、画数の多いほかの文字と比べると、存在感という点で負けてしまいます。
風通しが良すぎて、逆に目立ってしまうのです。
その点では一文字目の『月』も四画しかないので、『背勢』という技を使って緊張感を出し、存在感を増幅させています。
『背勢』とは、並ぶ縦画を左側は左カーブ、右側は右カーブにして緊張感を出す書体のことです。
もっとも、『月』の一画目は左払いですから、『背勢』にしたわけではなく、それを利用して二画目の縦画をほんの少しだけ、跳ねる手前で反らせただけです。
それでも、緊張感が出るのですから『背勢』の威力は絶大ですね。
『門』は背勢で書くことの多い文字ですが、逆にどっしりとさせたい場合は『向勢』という書体にする事もあります。
『向勢』は『背勢』は真逆の線になります。
どちらも自在に操れるようになると良いでしょう。
さて『大』では、月の『背勢』のような、何か特別な技を使っているのでしょうか?
起筆は滑空させず、たっぷりと墨を含んだ筆先を、紙の真上からポタリと落としてゆっくりと右下方に下がり、急角度で右上方にそこそこのスピードをつけて線を軽くしならせながら上り、急ブレーキをかけ、極端にデフォルメした形でゆっくりとトメを作っています。
二画目は軽く右上方から入り、頭を作りながら『中鋒』で少し反り加減でゆっくりと下げていき、左に曲げながら自動的に『中鋒』解除して、筆先を真横にして残していきます。
一画目の起筆と二画目の払いの距離の方が、一画目の起筆と二画目の起筆より短い点に留意しましょう。
つまり、二画目の終筆はかなり早く曲げないと間に合わないのです。
三画目は二画目の線中から始まりますが、起筆から二画目より太い線で入りましょう。
この右払いは角度をつける意識より、次第にたっぷりと太くしていく意識を強く持ち、下に下げながら二画目を越えたあたりで、筆先を右斜め上方に抜いていきましょう。
形だけ追ってしまうと線に生命が宿らず、死んでしまいます。
一画目の右上りはほんの少しだけスピードつけて生命力を出しますが、基本的にはじっくりと書くのがポイントです。
お手本でかすれているところは、かすれていないところよりスピード出ていますが、思ったほど速くはありません。
原本ご覧になればお分かりになると思いますが、テカテカです(^○^)
ものすごく濃い墨で書いているので、少し速く動かしただけでかすれてしまうのです。
あまり速く筆を動かしてしまうと、コントロールが効かなくなってしまいます。
今回の課題で気をつけたいポイントですね。
さて、私の感情を込めて書いた『大』です。
一画目は少しだけ滑空させました。
二画目と三画目をほぼほぼ同じ太さにして、『大江』の力強さを表現してみました。
背臨で大切なのは、原本をリスペクトしながら、オリジナリティを求めて書く事です。
昨日解説した『湧』を載せるの忘れていたのでアップします。
右肩上がりの角度を、少し緩やかにして書いてみました。
湧いているのは月の影ですから、少し穏やかにしてみたかったのです。
しかし、五文字並べた時、この『湧』の穏やかさが、作品に醸し出したい、月夜の大江の辺りにある緊張感を無くしてしまう可能性があります。
これはダメかなぁ〰(^○^)
文字には意味があり、その文字が複数になって文章を作り、無限の表現が成立するように、文字は楷書であっても、文章の解釈によってその都度変化させて書き、表現するものと考えます。
高橋鵞翠の作品の素晴らしさの一つはそこにあると私は思うのです。
次回は四文字目です。
お楽しみに〰