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ホイッスルバード あいざわぶん

社会のあらゆる事象にホイッスルを吹く

小旅島旅独り旅 伊吹島編(その4)

2016-07-23 18:10:00 | ノンジャンル
伊吹島の古い歴史に、「京都から移り住んだ人ら」の
存在がある。
言語学者であり、国語学者の金田一春彦が伊吹島
に旅したのは、この島独特のアクセントを調査する為
だった(昭和58年)。
独特とは、「平安時代から続く京言葉のアクセントが
1300年間遺っている」ということである。

なぬっ、あ~た、金田一春彦を知らんとな。

その父は金田一京助。
文字を持たないアイヌ民族の言葉を研究し、辞書を
遺した言語学者。
歌人・石川啄木の大親友。啄木は死ぬまで金銭を
無心し続けたが、それに応えた日本一のお人好し。
決して探偵ではありません。
金田一京助の長男が春彦である。

伊吹島の方言には、二文字言葉に5通りのアクセント
がある、というのである。
はっ?5通り、なんじゃ、それ!
それで意味が通るなんて、信じられん。

松山市民のアクセントも酷いが、東北人である私のも
負けず劣らず、酷い(笑)。
だからアクセントの事は棚上げすることにし、資料館で
方言だけ書かれた本の一部を写真に撮ることにした。





古い資料館に、ずっと私独り。
時間を忘れて、島の生活と言葉の世界に浸っていた。
今なら船で25分の伊吹島だが、昭和30年代までは
島の小・中学校に赴任した教師は島の言葉が理解
できないことがしばしばだったと云う。
ということは島民は、島以外では大変苦労することに
なる。そして、言葉によって差別を受けることになる。
想像しただけで辛い気分になってしまったのである。

坂を下って港に下りて、違う道をまた上った。
港が見下ろせる場所に春彦の歌碑が建っているのを、
この目で見たかったのだ。

歌碑の周りは草刈りを終えたばかりで、ドラム管の中で
燃やされていた。
その熱気を右頬で感じながら、春彦短歌を声に出して
鑑賞した。

緑濃き豊かな島やかゝる地を故郷に持たば幸せならん 春彦





文語体で詠んでいるのだから「豊かなる島や」とすべき
だが、春彦は歌読みではないからしょうがない。
そんなことより、伊吹の人は類(たぐい)なき言葉を今も
遺していることに誇りを持っているのを、この碑の美しさ
と、真っ白な旗が私に教えてくれている。

歌碑から見える港では、高校生が岸壁からダイブして
夏を楽しんでいる。
その歓声が私の耳にも届いて、もう一度春彦の短歌を
声に出して読んでみたのだった。



小旅島旅独り旅 伊吹島編は次回の「番外編」で最終と
しよう。

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