ホイッスルバード あいざわぶん

「ミンタロ・ハットで落涙した」の巻

・ ・・人は言葉で出来ている・・・

このことを、私は当ブログで何度も言ってきたが、
ミンタロ・ハットの主・佐藤英夫さんと話をして
いると、その信念を益々強くするのだった。

私は人を観る人である。
言葉によって観る人である。
言葉だけは一朝一夕に変えられるものではない。
よって、人の思索の深さ、教養、精神の在り方の
全てが出てしまう。

その上で、人と話す楽しさを久々に、佐藤さんは
私に感じさせてくれたのだった。
10月に会った大分の友人もその一人だが、彼は
私より二歳年上である。
しかし、ミンタロ・ハットの佐藤さんは、私より
四歳年下である。

年下に畏敬の念を感ずるまでの楽しさと嬉しさを、
遭って二日目で私に与えてくれたのである。

私は確かにトラベルハイの精神状態だったと思う。
しかし、それを差し引いても佐藤さんとの会話は
楽しかった。
何が楽しいかって、音楽から広がる話である。
佐藤さんの音楽、中でもコーラスの話、師の話に
私は深く共感したのである。

音楽や文学、あらゆる芸術というものは、自然に
精神を善の方向へと導くものである。
佐藤さんは音楽から、私は短歌という文芸により、
同じ方向に精神が向ったようである。
このような出会いはなかなか無くて、例えば大分
の友人もそれを嘆いていた。
こればっかりは世間からの本当の意味での理解は
得られようがなく、孤独に耐えるほかはない。
長い人生で、このような親近感に出遭う機会は
滅多にあるものではない。
だから喜びもひとしおなのである。

その喜びの最たるものが、コーラス仲間からも
私は受け取ることになる。

ミンタロ・ハットに宿泊して七日目。
土曜日の夜は、コーラス仲間が佐藤さんの自宅
で練習をする日である。
「もし練習がうまく行ったら、ここに来て歌い
ますから、聴いて下さい」と彼は言った。

夕食後、ダイニングRで寛いでいると、別室で
練習を終えたコーラス仲間が譜面を携えて顔を
揃えた。
佐藤さん夫婦と他4名である。
観客は私一人だけだから変な緊張が走り、正直、
その雰囲気に笑いそうにもなった。
だって、照れるじゃないか。

一曲目「浜千鳥」。

青い月夜の 浜辺には
親を探して 鳴く鳥が
波の国から 生まれでる
濡れたつばさの 銀の色
 
不覚にも私は、一番を歌い終える前に落涙した。
母が今際に居たからではない。
純粋にコーラスの美しさに感動したのである。
数日前に聞いていた、佐藤さんが信ずるコーラス
の在り方、師の教えを目の当たりにしたからだ。
「個を静め、一つの音にする」
それを私の前で完成させているのである。
聞かせてくれた4曲全てがそうなのである。
私は嗚咽しそうになるのを必死で押さえ、隣の
浴室で気を鎮めようとしたが、涙はとめどなく
流れ、その美しさに酔いしれたのである。

拍手ではなく、感謝の礼で気持ちを表すのが
精一杯だった。

10分後、気を鎮めて玄関先で煙草を呑んだ。
すると70歳以上の年齢と思しきメンバーが
「いや~、今日のは録音すればよかったな~」
と私に声を掛けて帰って行かれた。
歌っていても心地良かったのであろう。
ビデオを撮れば良かったと、その時になって
私も残念に思ったのである。
一人ダイニングルームに戻ってきた佐藤さんは、
「妻も感極まって歌いながら泣きそうだった」
と話していると、私に告げた。
演者と聴者の心が一つになった証である。
こんなに嬉しいこと、美しいこと、滅多にあり
はしないのではなかろうか。

ミンタロ・ハットには沢山の人が訪れる。
開業5年前にして早も高い評価を受け、ネット
上でも誉め言葉で溢れていることだろう。
恐らく、オーナー佐藤さんの人柄を挙げている
コメントも多かろうが、本当の佐藤さんは畏い
人なのである。
気遣いの人とか、優しい人などという評価は、
佐藤さんのホンの一面である。
本当は畏い人なのである。
さて、どれだけの人がそれを理解しているか、
ちょっと怪しいと思う私なのだ。

もう少しミンタロ・ハットに就いては書きたい
ことがあるので、今回はここまで。
次回で完結することにしよう。

明日(月曜)からは選挙に就いて書きたいので、
ミンタロ・ハット完結編は日曜中に連続アップ
したい。

写真1。
19歳のチビタ君。
なかなかの貴公子で、主に似ている気がする。
写真2。
野良上がりのホル君は私に似ている。



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