575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

暗闇の陰翳刻む初蛍    大道寺将司

2012-06-14 08:26:19 | Weblog
ETV特集『失われた言葉をもとめて・辺見庸 ある死刑囚との対話』の
なかで紹介された一句。

作家の辺見さんは、宮城県石巻出身。
東日本大震災と原発事故のあと、ものを書くことができなくなった、という。

言葉は、世の中に溢れている「がんばろう」「絆」・・・
血や肉のない言葉ばかり。お互いに分かったような気分になっているだけ、
ということなのだろうか?言葉が力を失っている。

そんな辺見さんが惹かれたのが、死刑囚・大道寺将司の俳句。

大道寺将司は、1974年の三菱重工爆破事件の犯人のひとり。
この事件で、8人が死亡、300人が重軽傷。
死刑が確定した大道寺は、3畳の狭い独房生活を送っている。
大道寺が俳句を作り始めたのは、事件から30年近く経ってから。

番組は、辺見さんが、大道寺の句集を出版するまでを追ったもの。
そのなかで、震災に関連して、この句が紹介されていました。

  暗闇の陰翳刻む初蛍    大道寺将司

辺見さんは、この句の蛍は、原発事故による放射能だと読みます。
眼にみえないものを、蛍に託して詠んでいると。

大道寺は、なぜ、こうした句を詠むに至ったのでしょう?

  まなうらの虹崩るるや鳥曇(とりぐもり)  大道寺将司

三菱重工爆破事件の直前、大道寺たちは、天皇特別列車爆破を計画。
未遂に終わったが、この計画は「虹計画」と呼ばれていたという。
この句は、空にかかる虹であるとともに、未遂に終わった虹計画を
詠んだものでもあると。

  ででむしやまなうら過(よぎ)る死者の影

時が過ぎても、亡くなった人々への思いは消えることはない。
自分を深く見つめていく。言葉によって体験を記憶にしていく。
俳句は、大道寺に、自照を極めてゆく手段となった。

大道寺は、震災で亡くなった人、被災した人たちの声を、
自分が殺した人たちの声と重ねて聞くことによって、
初蛍の句を生み出したのでは・・・
とすれば、蛍は放射能であり、鎮魂の光かも知れない・・・

大道寺は、死刑囚としての自分とはなにか?という疑問に対して、
俳句をつくるとことによって、答えを見つけようとしている。
と、辺見さん。

大道寺将司・全句集「棺一基」は4月に出版されています。


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