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WEB上のニュースや新聞などで扱われたエホバの証人のニュースを取り上げます。シリアスな話題から笑えるニュースまで。

韓国における良心的兵役拒否 2

2011-10-13 08:32:51 | 迫害・反対
韓国国内では、良心的兵役拒否はどのように受け止められているのでしょうか。

ある日本人が韓国の学生に個人的にインタビューしたサイトがあるのですが、(おそらく2003-4年頃の内容)エホバの証人の良心的兵役拒否はよく知られているものの、最近まで人々は事実を知らされていなかったようです。その中でインタビューを受けた学生は、このように述べています。

Q。兵役の仕組みは?

A.お金持ちとか、政治家など既得権を持っている人は徴兵を逃れている。
エホバの証人は50年位前からずっと刑務所に入っていた。
2年前、初めて仏教の人が兵役を拒否して刑務所へ入ったが、拒否する理由は宗教でなく「自分は平和主義」という理由だった。その後平和主義を主張する人が増えた。イラク派兵でも拒否をする人が増えている。一昨年、去年から当然に行かなくてはならないものから拒否をする人が増えて「自分も拒否できる」と考える人が増えている。

Q.韓国軍の全体は何人で、毎年何人入れ替わって、何人くらい兵役拒否?

A.全体で60万人。毎年20~30万人は入れ替わっている。監獄にいる人が600人余り。裁判中の人を足しても1,000人にも行かない。
600人の中でほとんどが宗教的な理由。彼らの拒否も社会で「拒否があった」ということすらあまり知られていなかった。ほとんどが最近知られた。宗教的以外の人は余りいない。10名くらいしかいない。

Q.宗教的な理由以外で拒否はあるのか?

A.イラク戦争に反対をして行かない人も最近は多い。
エホバの人は例外的で、仏教徒の人で「拒否」がはじめて世界に明らかになった。

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また、「現代韓国朝鮮研究」第9号に掲載された、三浦大樹氏による「韓国における良心的兵役拒否」という論文には、特に2000年以降に良心的兵役拒否の問題がどのように社会問題化し議論されてきたのか、詳しく論じられています。非常に興味深い内容です。全57ページと長いのですが、まとめさせて頂きました。

1.社会問題化 : 2001年-2004年

2000年7月に台湾が代替奉仕制度を導入したことと、2001年初頭から雑誌「ハンギョレ21」がエホバの証人の兵役拒否と投獄の問題を告発したことから、社会の注目を集めるようになりました。その後、ある議員たちによって代替奉仕制度の導入が検討されました。それに対して、韓国キリスト教総連合会は「エホバの証人に対する特別優遇」とか「国家の存亡を危うくする」と声明文を発表し、法案を非難しました。少数派であるエホバの証人と、それを排斥しようとする主流派の対立が基本的な軸としてあったようです。

2001年12月には、一人の仏教徒が平和主義を理由として兵役拒否を宣言して裁判を起こし、エホバの証人以外で初めてのケースとして注目されました。やがて、多くの市民団体やキリスト教会グループ、弁護士協会などによって、良心的兵役拒否の議論がされるようになりました。

2004年4月19日、国連人権委員会によって、徴兵制を実施する各国は良心的兵役拒否権を認め、代替奉仕制度を導入すべしとの勧告が採択されました。韓国はその委員国でもあったため、この影響は大きく、同年5月、ソウル地方裁判所は兵役拒否で起訴された3人のエホバの証人に対して無罪を宣告しました。この判決は大きな波紋を呼び、立法サイドで賛成と反対が議論され、保守キリスト教団体は激しくエホバの証人を非難しました。その一週間後には別の地方裁判所で、同様の事件に対し有罪判決が出され、司法的混乱が深まる結果となりました。しかし同年7月には最高裁判所で有罪を確定する最終判決が出され、国家の安全保障が良心的自由に優ることはないという判断が示されました。こうして無罪判決以降の一連の混乱はひとまず収まり、憲法裁判所での最終的な憲法判断に委ねられることとなりました。

2004年8月、憲法裁判所において、良心的兵役拒否者を処罰してきた兵役法3条と88条が憲法に違反しているかどうかの判断が下されました、その結果、合憲7名、違憲2名で、合憲と判断されました。結論の違いはあるものの、両者の趣旨は一致しており、良心の自由と国防の義務との調和を模索するようにと立法者に要求しています。つまり、国家の安全保障のために今すぐ代替奉仕制度の導入は難しいとしても、少数派である良心的兵役拒否者の信念を尊重し、両方の価値を調和させる努力を開始することによって、社会をより成熟させることを求めるようにと結論したのです。

2.議員立法と国会公聴会 : 2004年-2005年

憲法裁判所のこの判決は迅速に受け止められ、国家議員を中心に「良心的兵役拒否権を支持する国会議員の集まり」が結成され、法案が提出されました。そして2005年3月には公聴会が開かれ、賛成派と反対派からの法案に対する意見陳述が行われました。結局この公聴会では大きな進展はなく、法案は保留されることになりました。とはいえ、反対派・賛成派ともに現行の兵役制度に改善が必要な部分があるという点では一致し、政策的に合理性を追求する議論が行われるようになります。


3.国防の方向転換 : 2006-2008年

公共団体からスポーツや芸術分野などでの有望な人材の兵役を免除するべきであるという要求が提出され、同時に、芸能人や一部の金持ちたちの兵役逃れの問題が大きくなったため、国防省はそれを検討するために「代替服務制度委員会」と立ち上げ、そこで良心的兵役拒否の問題が取り上げられました。国防省ではこれまで悪用されてきた特例制度を縮小し、スポーツ・芸術・宗教以外の一切の理由による兵役免除は認めないことで明確に線引きし、兵役制度の不正防止と効率化を目的とした方針を発表しました。この時点で、良心的兵役拒否者に対して代替服務を提供する意図があることが公にされました。

しかし、翌2008年に国防省は同方針の再検討を発表しました。「少数者保護の次元で肯定的に検討してきたが、いまだ国民的合意が得られていない」というのがその理由です。9月と11月に世論調査が行われ、9月の専門家(国会議員、弁護士、大学教授など)への調査では、制度導入に対し賛成が58%、反対が40%となり、賛成優位でした。しかし、一般国民を対象とした11月の調査では、68.1%が反対し、 この結果、2008年12月24日、「国民的合意を前提とする原則に変わりないが、宗教的信念による兵役拒否者に対する代替服務は時期尚早であり、現段階では受け入れられない」と、方針を白紙撤回しました。これには各種市民団体が猛反発し、「2007年以降の世論では賛成論が優勢だったのに、なぜたった一度の世論調査を根拠に政策をひっくり返すのか」とコメントしました。

この方向転換は、国防省の世論調査の恣意的な活用だと批判を浴びました。これに対する国防部の具体的な返答や今後の対応は示されていません。

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以上の論文の内容は、協会のビデオで扱われた内容と一致しています。国防省の、代替サービスを提供する意図があるという発表は、その後方向転換されました。現在でも結論が出ないまま時だけが過ぎている印象があります。少数派とはいえ、かなりの数のエホバの証人が刑務所に送られている現状や、世論の関心などを考えると、韓国政府もいつまでもあいまいな態度をとることは出来ないと思います。早急に解決されることを願います。

協会の広報室のサイトでは、2011年9月2日付で韓国の良心的兵役拒否に関する記事が掲載されました。8月30日の韓国憲法裁判所の判断を受けた内容となっています。
判決内容は以前の見解の踏襲であり、現段階で韓国政府が新しい方向へ進むことを望んでいないことを示しました。以下、日本語訳です

■ 判決は韓国が良心的兵役拒否者を引き続き刑務所に入れることを認めた

良心的兵役拒否者の人権に対する認識が世界中で高まる中、韓国の最高裁判所は、兵役を良心的に拒否する韓国市民が投獄されることを認めるという判決を下すだろう。2011年8月30日に韓国憲法裁判所は、兵役を拒否した者への罰則を規定した法律が、憲法に違反していると宣言する根拠はないと述べた。

韓国の6つの異なった裁判所は、これらの法律が良心的兵役拒否者たちの人としての尊厳や彼らの良心の自由を侵害していると主張していた。またこれらの法律は、武器を手にすることを拒んだ4人のエホバの証人からも訴えられていた。

2004年の憲法裁判所の判決によると、韓国の兵役法では、立法者は良心的兵役拒否者に適用されるであろう代替奉仕を導入する義務があると語られている。それ以来、およそ5,000人の、前科のない若者である良心的兵役拒否者たちが、今まで通りの仕方で有罪とされてきた。これまで国際連合人権理事会は、韓国(これまで20年近くにわたり国連のメンバーである)に対して、良心的兵役拒否者の基本的人権に対する侵害であり、市民的及び政治的権利に関する国際規約の下での公約に違反していると繰り返し述べてきた。加えて、韓国の国際連合人権理事会は、良心的兵役拒否の権利を認めるようにと、数多くの勧告書を出してきた。

韓国のエホバの証人のスポースクマン、ダエイリ・ホンは、「その判決にはがっかりさせられました。なぜなら、裁判所は良心の自由の権利を認め、若者たちが投獄される裁判を終わらせる機会があったからです。我々は、議会が代替市民奉仕の選択肢を提供することによって、韓国が他の国々と並べるように引き上げるられることを望んでいます。良心的兵役拒否者たちは犯罪者ではなく、地域において生産的なメンバーとして働ける機会を与えられるべきなのです」と述べた。

1950年以来、16,000人以上のエホバの証人が、兵役に就くことを拒んだために合計31,256年間もの有罪判決を受けてきた。もし、代替奉仕が施行されないなら、毎年500人から900人の若者たちが、韓国の良心的兵役拒否者のリストに加えられていくでしょう。

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なお協会は、現在収監されているすべての証人たちの刑期と収監場所を公表しています。
有罪判決を受けた韓国の良心的兵役拒否者のリスト
2011年7月時点で 732人が刑務所に収監されています。


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2 コメント

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Unknown (Scorpion)
2011-10-28 05:33:10
国際大会で韓国の人たちからもらう名刺の家族写真は、必ずと言っていいほど、若い男性はハメコミ(学校の集合写真の撮影時に欠席し子たちが右上の隅に合成ではめ込まれているように)になってます。
兵役拒否で収監されているため身近にいないからです。
でも、たとえ離れ離れでも、彼らは家族としてしっかり強い絆で結ばれていますよ。(^^)
彼らと接した兄弟姉妹たちはみな口々にそう語ります。
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Unknown (JWニュース)
2011-10-29 17:25:15
そうなんですか。逆境の中で、家族としての絆やありがたみを一層意識するのかもしれませんね。そういう強さは見習いたいものです。
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