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「ユングの東洋思想論を読む」第8回 チベット死者の書の心理学(2)
< オンライン参加・会場参加 併用開催 >
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2023年度のユングスタディ企画は「ユングの東洋思想論を読む」です。ユングが東洋思想について論じた様々な文章を取り上げて読んでいきます。
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前回からは、「チベットの死者の書の心理学」を読み始めました。
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■ C.G.ユング「チベットの死者の書の心理学」(1935)
邦訳:『東洋的瞑想の心理学』所収 湯浅泰雄・黒木幹雄訳、創元社
1983.11(第一版)、2019.1(新装版)
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「チベットの死者の書(バルド・テドル)」は、チベット仏教ニンマ派の埋蔵教典で、臨終の時から49日間のバルド(中陰)期間にわたって死者の耳元で読み上げられる書物です。死者の経る体験を三段階に分け、それぞれの段階において輪廻からの解脱やより良い生まれ変わりの方策を説いています。ユングは、この書のドイツ語訳出版(1935)の際、今回のテキストとなる心理学的注解を寄せ、以降の「チベット死者の書」の受容に大きな役割を果たします。
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バルド・テドルにおいて、死者のたましいの経る過程は、真理から意識が離れて肉体的再生へと近づいてゆく過程、カルマ(業)によって再び輪廻の迷いの中に入っていく過程を示します。この経典は、バルドの各段階に残されている救いの可能性に気付かせ、死者のたましいを輪廻から解脱させようとするものです。ユングはこのバルド・テドルの内容について、「すぐれて経験心理学的である」と捉えていきます。
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ユングは、「形而上的な主張というものは、元来その人間の魂の申し立て」であり「当然、それは心理的」なものだとします。死後の世界にしても、神々にしても、合理的な立場からは根拠のない事柄と思えようと、それらのイメージは人間の魂の表現であり、重要な心理的事実を反映しています。私たち自身の内にあるたましいこそが、すべての「所与の事実」なるものを与えている。バルド・テドルはこのことを前提に、死者の見るもの全て、現れる神々も何もかもが、当人の心の投影であると繰り返し述べ、その認識こそが解脱につながると説いていきます。
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一方でユングは、この認識には一種の意志の転回〔回心〕が必要になる、とも言います。無意識の意識化によって、自我から自己へと心の中心が移行すること、自我が(象徴的にでも)いったん死んで、自我中心の態勢が変化することが伴わないと、なかなかこうした認識は得られません。
ゆえに、世界中に存在する、いわゆる通過儀礼においては、回心を象徴的にあらわす死の比喩が広く見られます。バルド・テドルは、中陰の生におもむく死者の通過儀礼にほかならず、死とは「所与の事実」の世界から解放されて自由になることなのです。
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※ 前回までのスタディのより詳しいダイジェストは、
以下の当会HP、および当会フェイスブックに掲載しております。
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今回スタディでは、引き続き「チベットの死者の書の心理学」を読み進めます。
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「バルド・テドルは死者の通過儀礼」と述べた後、ユングは、西洋文明圏で現在なお生きている唯一の通過儀礼的方法は、精神科医が用いる「無意識の分析」であるとし、分析における体験とバルド・テドルの内容との比較を論じていきます。
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バルド・テドルでは、バルド(中陰)の期間を、死の瞬間に魂が経験する「チカイ・バルド」、続いて起きる幻覚の状態「チェニイド・バルド」、再び現世に生まれるまでの「シドパ・バルド」の三段階に分けますが、ユングは、このうちのシドパ・バルドをフロイト的な性的ファンタジーの領域、チェニイド・バルドをユング的な集合的無意識の領域として読み解いていきます。その上で、西洋人が理解する上で「この書は終わりから逆に読むべき」という提案をしていきます。
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注目すべきところとしては、ユングはここで、いわゆる「オカルト」的領域について触れています。人間が「死」について考える際には、良くも悪くも、そうした領域を考慮に入れざるを得ないのではないか。そんな問題提起についても考えていければと思います。
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案内役:白田信重、岩田明子(ユング心理学研究会)
司会進行:海野裕美子(同) 資料協力:山口正男(同)
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第8回:10月5日(木)20:00 〜 22:00
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■ テキスト: C.G.ユング「チベットの死者の書の心理学」(1935)
『東洋的瞑想の心理学』所収 湯浅泰雄・黒木幹雄訳、創元社
1983.11(第一版)、2019.1(新装版)
・ 適宜、英語原文、ドイツ語訳文も参照します。
・ テキストを読んでいない方でも、資料を見ながらの進行なので参加可能です。
・ シリーズ途中からでの参加でも全く問題ありません。お気軽にご参加ください。
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■ 参加費:1,000円
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・当会では、お申し込みいただいた後での参加者都合による返金は致しません。
・参加申込者には会の終了後、録画アーカイブを期間限定で配信する予定です。
(諸事情により配信できない場合もありますので、あらかじめご了承ください)
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■ 参加方法
オンライン参加と、配信会場での現地参加の、二種類の参加ができます。
参加費はどちらでも変わりません。(現地参加の資料代のみ別途)
また、どちらの参加方法でも、終了後にアーカイブ配信を視聴できます。
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(1)オンライン開催(zoomミーティングルーム形式)
開始時間にオンラインのミーティングルームに参加します。
配信会場とは、チャットでのやり取りや、対面での議論が可能です。
・開場は開始15分前の19:45です。
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(2)配信会場での現地参加
配信会場にお集まりいただいて現地参加できます。定員15人。
配信会場:shez alterna(シェ・オルタナ)
東京都中野区松が丘1丁目 17-12
西武鉄道新宿線・新井薬師前駅より徒歩3分
・当日は紙資料を配布しますので、資料代500円を別途いただきます。
(資料代は現金でご用意ください)
・開場は、開始一時間前の19:00です。
(開始前までは参加者間の交流の時間となります)
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※ 申し込み後に参加方法を変更したい場合には、事務局までご一報ください。
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■ 参加申し込みページ https://jungstudy20231005.peatix.com
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■ 主催:ユング心理学研究会 http://jung2012.jimdo.com/
■ 問い合わせ:研究会事務局 jungtokyo_info@yahoo.co.jp